第4話・魔王様、勇者の情報を知る。

2人が注目を集めていた理由が容姿の良さという、ちょっとした不注意とわかった。



それはまだ修正が効く範囲で、他国から来たと思わせていれば済む話なのだ。



「あ!それにもう少しすればその視線も別の所に向くはずだよ」



すると、おばさんが何かを思い出したように語る。



「どういうことだ?」



「あなた達知らないのかい?

 もう少しすれば旅に出ていた勇者がこの街に帰ってくるんだよ」



なんと偶然にも、立ち寄った店で2人が知りたかった勇者の情報が手に入った。



それもタイミングよくこの街に勇者が現れるという情報。



「勇者が帰ってくれば、皆そっちに興味が向くだろうから視線も少なくなるだろうね」



「――勇者はいつ頃ここに着く予定なんだ?」



試しにもう少し情報が手に入らないかと話を聞いてみる。



「なんだい、勇者に興味があるのかい?

 そうね――今が昼過ぎだから夕暮れには着くと思うわよ」



時間的にすでにこの街の近くまでは来ているとわかる。



探しに行くのもいいが、目的地が分かっている以上わざわざこの街を離れる必要はないだろう。



それに時間があることで“下準備ができる”。



「ありがとう、感謝する。

 ――ところで、この屋台では何を売っているんだ?」



知りたかった情報も聞けたことで、改めて本題に戻ることにした。



屋台から香ばしい程の肉の香りが漂っており、ずっしりとした分厚い肉が串に刺さって売られている。



「あ、そうだったわね。

 ――うちで売っているのはグリーン・ボアの串焼きだよ」



【グリーン・ボア】というのは、この街一帯に生息している緑色の体毛をした草食系のイノシシの魔物。



草しか食べないこともあり、その肉はイノシシ独特の臭みもなく、さっぱりとした味わいで人気。



「いくらだ?」



「そうね――本来なら500コイン貰うところだけど、カップル割引で300コインでどうだい?」



カップルというだけで、200コインもおまけしてくれるのはかなり安い。



恋人ではないが勘違いで安く買えるなら乗らない手はないだろう。



※単価は、現代でいうところの【1コイン=1円】計算になる。



「では、“10本貰うよ”」



一人一本でも十分なほどの肉を大量に注文する。



「あなた達二人だろう?そんなに食べるのかい?

 ――まぁ、たくさん買ってくれるのは、うちとしてはありがたいがね」



もちろんそんな肉の量を2人で食べるわけもなく、キースに何か考えがあった。



「まぁ、気にしないでくれ。

 代金はちゃんと払う」



「そういうことなら、あいよ!まいどあり」



ここで支払った代金やキースの持つお金は全て、これまで挑んできた勇者達のもの。



勇者を倒した魔族達が魔王の寄贈品として渡してきたのが、500年間貯まっていた。



そのため、有り余るほどあるのだ。

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