第22話
グレンと竜の戦闘は、何度かの衝突を繰り返してなお終わらなかった。
竜の一撃はそれがたとえどのようなものであっても人間を殺すには十分すぎる代物だが、当たらなければ殺せない。
だから、グレンは回避を続けて攻撃を繰り返す。
しかし、竜の頑丈さも他に並ぶものが少ないほどに優れている。
グレンが瞬時に出力できる攻撃力では竜を倒すには至らない。
ゆえに、竜は攻撃を耐えて反撃へと移る。
――畢竟、両者の戦闘はひたすらにそれを繰り返す我慢比べだ。
地上も空中も関係なく上下左右に必要なだけ移動して、激突と離脱を反復する。
ただ、それは決して無限に続くものではなかった。
グレンは回避と攻撃の並行作業に神経と体力を削られていく。
動きの精度を保てる時間は少しずつ減っている。
竜は少しずつ蓄積する損耗を無視できない。
攻撃を当てるよりも先に動けなくなる可能性は大きくなっていく。
終わりはある。
どちらかの命が失われる瞬間はすぐそこまで近づいている。
グレンも竜もそのことはしっかりと理解していた。
それでも両者ともに、この地味で不毛な我慢比べで先に音をあげるつもりはない。
――この戦いは命の賭けどころを誤ったほうの負けだ。
グレンと竜はその時機を見落とすことがないようにと、冷静に思考を回しながら次の一手の準備に入った。
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