第21話



 グレンは宙を舞った竜が最初よりも遥かに短い時間で体勢を立て直した事実に舌を巻いた。


 ……対応が早いな!


 しかし、そう思った瞬間には次の一歩を踏み終わり、竜の鼻先まで飛び込んでいた。


 ――拳は既に固めてある。


 拳を振りぬく動きは背後から正面への振りかぶり。

 上から下への打ち下ろしだ。

 

 ……溜めのある遅い動きだが。


 それでも、竜の対応は間に合わない。


 ――当たる。


 薄くて硬い、割れ砕けの音が響き渡った。


 その音に続くのは、破壊の連鎖だ。


 竜の身体が拳の軌道に沿って空から地面へと叩き落される。

 その勢いのまま、地面の上を滑るようにして移動する。

 同一直線上にある障害物は、竜との激突に耐え切れずに壊れていく。


 急激に押しやられた空気が発生した隙間を埋めるように動いた。

 

 そうして生まれた風に押しやられた粉塵の向こう側、街にできた瓦礫の上には健在を示すように声をあげる竜の姿が見えていた。


 ――戦闘はまだ終わっていない。


 だから、


 ……そうだろうとも!


 グレンは宙を蹴り、竜に向かって真っ直ぐに空を落ちていった。

 

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