第10話

 


 受けるかどうかは内容と報酬次第という返事を聞いて、グレンはビオに好感をもってこう返した。


「冒険者としては満点の回答です。素晴らしい」


 そしてこう続けた。


「ちょうど、地元の方から話を聞きたいと思っていたところでして。

 協力していただきたい部分というのはそこです。

 したいことは、最近変わった出来事はなかったかとか、まぁそういった世間話ですよ」


 グレンの言葉を聞いて、ビオは無言の視線で問いかけていた。

 

 ――本当に?


 だから、グレンはその視線にこう返した。


「この街でおいしい食事と上等な酒を出してくれる店はご存知で?」


 ビオは小さく笑ってから、もちろん、と頷いた。



 


 ビオとグレンが入った酒場はミスタンテという街の中でも高級店として名高い店のひとつだった。


 過度に飾り立てていないものの立派な外装に、華美にならない程度にしっかりと整えられた内装を見れば、初めてやってきたグレンでさえすぐにそれとわかったくらいだ。


 他人の奢りで飲む酒はうまいものだ。

 その値段が高ければ高いほど。


 だから、グレンはつい聞いてしまった。


「生きてるうちに一度は入ってみたかったとか?」


 ビオはグレンの問いかけに、心外だという表情を浮かべながら応じた。


「まさか。奢って貰えるからって使ったこともない店に連れて行くほどクズじゃないわよ。

 ……常連だ、とまでは言わないけどね」


 そして一拍の間を置いて、悪戯な笑みを浮かべながらこう言った。


「財布の中身が心許ないというのなら、多少は出してあげるから安心しなさいな」


 グレンはビオの言葉に、降参だというように両手をあげて見せた。


 ビオはその反応に満足したように頷くと、店員を呼んで席に案内してもらうことにした。


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