第6話


「しかしまぁ、やっぱりと言うべきか、中央から離れると途端に寂れるよなぁ」


 グレンは目的地であるミスタンテに辿り着くと、周辺の様子を見て感慨深げにそう呟いた。





 あらゆるものが中央部に集中するこの世界では、中央から距離が離れるほどに、あらゆるものの質や量が下がっていくようにできていた。


 中央から繋がる道の上において、ひとつ隣にある街に移るだけでも、目に見えてわかるほどに人の数は減っていくし、建物の背は低くなり、その数も少なくなっていく。


 それが端と言われる位置にあるのであれば、街の活気や華やかさなどにおける落差は、宝石と石ころ並みにまで広がっていると言っても過言ではなかっただろう。


 しかし、それはひとえに中央部が大きすぎるというだけの話であって、ミスタンテという街が人の暮らす場所として小さく寂れているということを意味するわけではない。


 ミスタンテでは万を超える人間が集まって生活をしている。


 それだけの人間がその場で生きていくだけの仕事と金がそこにあるのだ。

 

 そんな街を寂れていると表現できる中央部の発展具合が異常なだけだった。




 ……中央とそれ以外では世界が違うとまで言われるだけはある。


 中央はヒトの夢が集まっていると表現されるほどに、異様な熱意と活気に満ちていた。


 グレンはそんな中央の街で、冒険者として、名を馳せるとは言わないまでも活躍していたと言っていい程度に成果をあげていた人間である。


 冒険者とは成り上がりを夢見る人間が就く生業の通称だ。


 つい先日まで、グレンはその冒険者稼業の最前線に立っていたわけだからして。

 街の違いで生じる雰囲気の差を、大げさに表現してしまうのも道理というものだった。


「生き馬の目を抜くような雰囲気がない、というところか」 


 結局は程度の差でしかないんだろうがな、とグレンは吐息をひとつ吐いて思考を中断した。


 

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