第12話 リリィの修行!

 翌日、俺は早速リリィへの魔法の指導を開始した。


「ではランクさん! ご指導よろしくお願いします!」


 そう言うと、リリィは俺に対し綺麗なお辞儀をしてくる。


「な、なんか照れるな。なはは…」


 改まってリリィにこう言われると、なんだか恥ずかしい。


「それで、まずは何をすれば良いのですか?」


 リリィは頭を傾げて質問してくる。


「まずはリリィの適正を見極めるぞ」


「適正ですか?」


「ああ、魔法には属性があるんだが、適正ってのはどの属性が自分に合ってるかってことだ。属性は基本的に炎、風、土、雷、水からなる主要五属性と闇と光からなる特殊二属性があり、これらの属性には有利不利が存在している」


 そして俺は右手から炎、左手から水を魔法で出現させ、説明を続ける。


「こんな感じで炎と水があったとして、これら二つを合わせると、炎は消えて水は残るんだ。そして次に右手は炎のまま左手を風にして合わせると、先程とは異なり大きくなった炎だけが残る。主要五属性はこんなふうに、有利不利の関係が存在している。そして特殊二属性である闇と光は、お互いに有利であり不利という特徴がある。長くなったが、これが属性の基礎だ」


 説明し終えると、リリィは頭からプシューと煙を上げていた。どうやら急いで詰め込みすぎたらしい。


「まぁとりあえずだ。この水晶に手をかざしてくれ」


 ポケットから水晶を取り出し、リリィへと手渡す。


「これは『適正判別水晶』と呼ばれる魔道具で、両手をかざし魔力を込めると、水晶の中に自分の得意な属性が浮かび上がるんだ。さっそくやってみてくれ」


「は、はい!」


 リリィが水晶に手をかざすと、水晶は急に眩しく発光し始める。


「ラ、ランクさん! もしかして壊れちゃったんでしょうか!?」


 リリィは慌てた様子で、俺にそう聞いてきた。


「大丈夫、壊れちゃいない。にしてもすげぇよ、この眩しさは光属性には違いないが、その中でも稀有な回復特化の光属性だ! 世界に数十人しかいないレアな属性だぞ。良かったな!」


 俺の言葉に対し、リリィはなぜか不満そうな顔をしていた。


「どうした、嬉しくないのか?」


「いや、私も戦闘でランクさんを助けたかったので、回復だったことがショックで…」


 なるほど、攻撃系ではなかったから不満だったのか。しかし、リリィは大きな勘違いをしている。


「なにも回復特化だから戦闘で活躍できないわけじゃない。むしろ大活躍だぞ? 仲間のアシストってのはな、実戦において実は一番重要で、回復魔法には体力回復の他にも魔力回復や、薬等での即時の回復が難しい状態異常を回復させる魔法なんてのもある。俺は回復魔法を使えないからさ、リリィが回復特化でめちゃくちゃ心強いぞ!」


「そ、そうですか…」


 リリィは顔を少し赤くし、小さくそう呟く。風邪だろうか。


「まぁ適正も分かったことだし、これから指導を…と言いたいところなんだが、魔法の使い方を教えるのは俺じゃない。先生、よろしくお願いします!」


 大きな声でそう言うと、どこからともなくリリーシャが走って現れる。


「どうもー! 魔法のことならなんでもお任せ、世紀の大魔法使い、リリーシャ大先生ですッ!」


「こほん! まぁリリーシャはこんなんだが、実は超すごい魔法使いなんだ。俺の幼い頃の師匠だし、魔法の先生としては俺より適任なはずだ」


「な、なるほど…」


 さて、紅の魔女の手腕、とくと見させてもらいますか。


「大雑把な属性の基本はランクから教えてもらっただろうけど、ここからは本格的な魔法の使い方だよ。魔法には、大きく分けて『対人魔法』、『対軍魔法』、『防御魔法』、『自己強化魔法』、『回復魔法』、『能力発動魔法』の六つがあり、リリィはこの内の回復魔法だね」


 そう言うと、リリーシャはどさっとたくさんの本をリリィの前に置く。


「リリーシャさん…これはいったい?」


「これは回復魔法の魔法書さ! まずはこれを全部暗記してもらうよ!」


「こ、これを全部ですか!?」


 リリィは大量の魔法書を前に、驚きの声を上げる。

 でたな、リリーシャの鬼暗記指導。俺も昔はやらされたが、二時間睡眠で暗記をさせられたときはさすがに死ぬかと思った。だが実際、これが魔法を習得するための一番の近道なんだよなぁ。


「ちなみに回復魔法は他の魔法と違って、全部詠唱を必要とする魔法だよ。これは教えがいがありそうだね! リリィも楽しく暗記と勉強を頑張ってくれ!」


「は、はい…」


 リリィはその言葉に対し、苦笑いをしながら返事をした。そして少し目を右へと移動させ、俺の方を見つめてくる。どうやら助けを求めているようだ。

 助けてあげたいのはやまやまだが、これを行わずして魔法の習得はあり得ない。リリィには申し訳ないが、少しだけ地獄を見てもらおう。

 リリィに対し、手ですまんとジェスチャーを送る。


「そ、そんなぁ…」


「さあリリィ、一ヶ月で君を最高の回復魔法の使い手に育て上げようじゃないか! 今から楽しみだな! あっはっはっはー!」


 こうして、リリィの修行は本格的に始まった。

 まあなんだ、頑張れリリィ!

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