【第二章】王都決戦篇

第11話 プロローグ〜過去〜

 ーー五年前


「へー、あれが最年少で隊長を務めてるって言う男か?」


「ああ、なんでも十二歳らしい。俺らとは住む世界がちげぇな!」


 周囲から笑い声が聞こえる。不愉快極まりないが、雑魚のことを一々気にしていてもしょうがない。ここは無視が一番だ。

 すると後ろから、茶色の短髪に黒色の目をした男に声をかけられる。その男とは、部下のシリウス=アルディゴートだった。


「ランクさん、あいつら黙らせますか?」


「いや良い。確かに十二歳のガキが年上を引き連れて歩いていれば、目立つのは当たり前だ。それに、反論するのは時間の無駄だ」


 部下の一人であるシリウスにそう言うと、後ろから怒った口調で割り込んでくる声があった。


「ランク隊長はなんでいっつもそうなの!? ここにいる誰よりも強いんだから、少しくらい言い返してやれば良いじゃない!」


 割り込んできたのはもう一人の部下、ターニャ=リオートだった。銀色の長髪に整った顔立ち、さらには高身長という彼女の立ち姿は、いつ見ても綺麗だ。まぁ喋らなければだが。

 すると、シリウスはターニャの言葉が気に入らなかったのか文句を言い始める。


「おい、ターニャ! お前またランクさんにタメ口を…!」


「うるさいわね。良いじゃないのシリウス、ランク隊長は私の将来の夫なのだし!」


 シリウスに対しそう言うと、ターニャはぎゅっと俺に抱きついてくる。


「離れてくれ。俺はお前を妻にした覚えはない」


「またまた〜、ランク隊長ったら照れちゃって可愛い!」


「こらターニャ! またランクさんに馴れ馴れしく…! もう我慢できん!」


「我慢って何よ! あんたを黙らせるくらい簡単なんだからね?」


 二人はそう言って睨み合い、魔法を展開する準備を始める。

 やれやれ、いつも通りのことながら本当に世話が焼ける。これが年上とはなんとも悲しいことだ。


「二人とも喧嘩するな。今日はこの後だ。ストレスが溜まってんなら魔族を殺して発散しろ」


「す、すいません! 俺としたことが…!」


「今日こそランク隊長より殺すんだから!」


「さて、今日も期待しているぞ。二人とも」


 俺の言葉に、二人は「はい!」と元気よく答えた。二人とも、本当にだ。

 ターニャとシリウス、この二人は仲間ではなく、俺にとっては単なる駒だ。俺に近い実力を持ち、尚且つ偶然にも俺のことを慕っているから手元に置いているだけ、ただそれだけの存在だ。決して彼らに特別な感情を俺は持っていないし、これからも持つことはないだろう。

 それを非情と呼ぶなら受け入れよう。自分でも性格が悪いということは分かっている。だが俺は、魔族を殺すことだけを運命づけられた軍人の一人。利用できるものはなんでも利用する。


「さあ、行こうか」


 そして俺たちは、今日も戦争へと赴く。

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