やはり便利なシェルター

やはり便利なシェルター

 ジャー……。


「ああもう、髪の毛の奥にまで付いちゃってるじゃん」


「急いでたから」


 脱いだ衣服は諦めて捨てることにしてパンツ一丁のままシェルターに入ってシャワーを浴びていた。


「全く、無理するにしてもこういうのはこれからは勘弁してよね」


 あまりにも汚いため、デルが頭を洗ってくれている。


「このシャンプーがあったからよかったけど、水だけだったら臭い残ってたかもしれないじゃん」


「分かった。もうこの手の無茶は二度としない」


「そうしなさい」


 ジャー……。


「雇用主の体を洗うのは仕事です」


 シャワーの外でセレーネとアティウラが未だに何か揉めているようだった。


「いいえ、そこまでする必要はありません。貴女様もここまでの移動と戦いでお疲れでしょう、ですから勇者様のお世話はわたくしがします」


「おかまいなく。この程度で疲れたりしません」


 お互い一歩も譲らないまま口論が続いていた。

 だがとうとうセレーネが少し拗ねた表情になる。


「決してよこしまな感情はありません」


「むぅ……ですが貴女は昨夜、勇者様とお楽しみだったんですよね!」


「そ、そのようなことは決して……」


 セレーネの指摘に一瞬表情が崩れるアティウラだった。


「これだけのプロポーションに整った顔立ち、そして何よりもその胸……もし迫られたらわたくしだってちょっと考えてしまいそうですもの」


 そこへ追及の手を緩めずに攻め込んでいく。


「しちゃったんですか? 勇者様はこういうことにはめっぽう押しが弱いですから、なんだかんだ彼の気持ちも考えず無理に押し切ったのではありませんか」


「そ、そこまではしてない! あ……」


 思わず、しまったと口を塞ぐアティウラ。

 それに対して言質を取ったとばかりに笑顔になるセレーネ。


「そこまではということは、それ以下のことはしてしまったとそういうことですよね」


 あくまでも笑顔を崩さないセレーネ。


「あくまでもメイドとして身の回りのお世話程度を……」


「身の回り、本当にそうでしょうか?」


 聖職者の目は真実を見抜くと言われているだけのことはあるとアティウラは心の中で焦っていた。


「さ、寒さで身体を密着して寝ました……」


「ほら、やっぱりぃ!! そうやってイチャイチャラブラブしていたのではありませんか!」


「い、イチャラブって……、あ、貴女様はそれでも聖職者なの!?」


 少し悶えるかのようにしているセレーネに対して、アティウラは呆れ気味の顔になっていた。


「もちろんです。聖職者が異性とイチャラブしてはいけないという教えも制約もありません! 男を日替わりで変える貴女方アマゾネスに言われたくはありません。勇者様だってその数多の男達の一人なのでしょう」


「むっ……それは子孫を増やす手段です。それに主様を一夜の相手などとは考えていません!」


「そ、そうですか……これは大変申し訳ありません。つい言い過ぎてしまいました」


「え……あ、私も聖職者様だからと……偏見でごめんなさい」


 いきなり素になって謝罪するセレーネにアティウラまで素に戻ってしまう。二人ともあまり怒りが持続しないタイプであった。


「それでは勇者様のことは、今までとは違う相手だと仰るのですね」


 そう指摘されて、驚いた顔をするが直ぐに頬を染めて俯き気味になるアティウラ。


「はい。今までで一番興味を惹かれてる」


「い、一番ですか……、でも貴女からは処女の匂いを感じるのはどうしてでしょう」


「分かるの!?」


 そこまで聖職者は見抜けるのかと驚いたアティウラはとうとう言葉遣いまで素に戻ってしまった。


「正確には匂いというよりも、全体的な雰囲気でそう感じるのですけどね」


「もしかしてカマをかけた?」


「その様なことは決してありません」


 やってしまったと悔しそうな顔をにじませるアティウラ。


「では貴女はどこまで進んでいるの?」


「わ、わたくしですか?」


「ええ」


「そ……それはその……その勇者様とは、さ、先っちょ……までで……」


「先っちょって、どういうプレイ?」


「い、入れる前に……ぼ、暴発を……」


「え、なに?」


「で、ですから……その」


 ガチャ。


「ふう……さっぱりした」


「全くもう手が疲れたわよ」


「入れる前に勇者様が暴発しちゃったんです!」


「はいぃぃ!?」


 ちょうどシャワーを浴び終わってデルと共に出たところでセレーネのとんでもない発言を聞いてしまうのだった。

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