再会は激臭

再会は激臭

 相手との距離を十分に確認して、木から下りて埋めたシェルターを掘り出して開けると、心配していた3人が直ぐさま飛び出してきた。


「勇者様! ……ううっ!?」


「主様……臭っ!」


「勇者様……こ、これはさすがに……」


「くっさ! なにこれ!?」


 出てきて早々に口々に臭いという3人。


「入口の近くは特に気付かれないようにウンコ撒いたからね」


「なんてことをしたのよ! だったら無茶せず全員で入ってやり過ごせば良かったじゃない!」


 相当臭いのか涙目のデルは小さめの鼻を押さえながら苦しそうに言った。


「中から外は確認出来ないし、入口を隠せないから怪しまれて見張られたら終わりだろ」


「それはそうですけど……だからといってここまでなさらなくても」


 ウンコまみれの俺を見て、さすがのセレーネもうわぁと少し引き気味だった。


「もしバレたらシェルターは袋小路で逃げ場がないし」


「入口は狭いから一体ずつ相手にすれば勝てた」


 アティウラがさも普通にさらりとそう語る。


「そうなの? いや、それはそうだったかもしれないけど……い、いや違うゴブリン舐めんな!」


「そ、そうなの?」


 俺がいきなり大きな声を出してしまったので3人を驚かせてしまう。

 奴らは雑魚かもしれないが、舐めてかかると大変な事になってしまう。


「ゴブリンは確かに弱いけど、だからって馬鹿なわけじゃない。あんまり油断していると捕まって女の子は……その、お、犯されて孕まされて大変な事になるだろ」


 俺の愛して止まない有る本の一つに、ゴブリンに犯されて孕み袋されるなんて話があった。


「犯されて孕むって……それってゴブリン相手の話だよね?」


「そ、そう。それとオークなんかもよく聞く話だよね」


 3人とも心当たりがないのか。うーんと困ったような顔をし始める。


「そういう話は聞いたことないけど、本当にゴブリンやオークがそんなことするの?」


「もしかしたら他の地域ではそういうことがあるのかもしれませんが……少なくともこの地域では、その様な話は聞いたことがありません」


 デルとセレーネは顔に思い切り疑問符が出ていた。


「人間を食肉にするけど、孕ませるのは知らない」


 アティウラも知らないらしい。


 あ、あれ……?


「ゴブリンて雄だけの種族で自分達を増やすためには人間とか亜人の女の子が必要なんじゃないの?」


「普通に雌はいるよ」


「まじで?」


 討伐専門のアティウラがそう言うのであれば間違いなく雌は存在しているだろう。となると、あ、あれー?


「でも……ゴブリンがコボルドを襲っているのは見たことがある」


「それなら僕も聞いたことがある。ゴブリンって一部の強い雄だけが雌と交尾が出来る社会構造だから、あぶれた雄は自分達よりも劣る魔物の雌を襲って気を紛らわせるって」


「もしそうなら人間の女性を襲っても不思議じゃないじゃないか」


 体格的に結構な差はあるけど、使える場所は同じっぽいし。


「うーん……アンタはゴブリンの雌を襲いたいって思える?」


 デルはそう指摘する。なるほど人間でも獣姦に興味を持つのがいるのと同じ話か。一部のマニアックなゴブリンなら人間の雌を性的に襲う可能性があると。

 だとするとゴブリンからすればコボルドは、人間から見た亜人に近い感覚なのかもしれない。


「もしそんなマニアックなのが多かったら、僕たちの里はもっと多くゴブリンの被害が出てたと思うけど」


「そ、それもそうか……ごめんなんか俺が勘違いしていたみたいだ」


 この世界のゴブリンやオークにはちゃんと雌が存在していてそういうことはないらしい。そ、そうか世界によって色々と違うんだな。

 つまり、ここではそっち方面の18禁展開はないということか。


 …………。


 い、いや、全然残念とか思っていないからね? 少しも期待なんて……してたかもしれないけど、どちからというと安心している方だから!

 知り合った女の子がそんな目に遭ったらさすがに嫌だしね。


 なーんてこった……師匠、ここは貴方の世界のゴブリンとは違うらしいです。

 愛読書だったんだが、やっぱり続きが気になってしょうがない。


「私達のためなんだろうけど、もう少し信用してほしい」


「そうですね。いつもそうやって勇者様だけ無理なさるのはあまり好ましいとは思えません」


「僕もそう思う。もっと頼ってほしい」


 うっ……。


「とにかくそれ脱いじゃっ……」


 アティウラが俺の服を脱がそうと手を掛けようとしたが、思いの外汚いと分かるとその手をさっと引いた。


 だろうね……。俺だって触りたくはなかったよ。


「ではわたくしが……」


 そこまで言うが、セレーネもやはり手が止まる。


「もういいよ。自分で脱ぐから」

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