あれとの再度遭遇<Ⅳ>
「低位のアンデッドはそういうものだが、中位以上のアンデッドはまた定義が変わる」
「え、どんなものなんだ?」
「さすがにそこは教えられない」
「なんだよ、散々ネタバレしたんだから少しくらいいいだろ」
「だめだ、これ以上お前にだけ教えるわけにはいかない」
「ちぇ、しょうがないか」
「じゃあそろそろ戻れ、新たな魔王が生まれたからお前も忙しくなるだろう」
「は? なんで俺が魔王を倒さな……」
話の途中で地球人は消えていった。
もっとも、本体は星にあって映像が消えたに過ぎない。
「ま、まずい……まさか生きていたとは、ど、どうする? どうすればいい? 非常にまずい……な、何か手を打たないと……」
「システムが復旧する前に手を打たないと女神に気付かれてしまうし……」
「だが直接干渉すれば、今度は他の連中に気付かれてしまう」
「ど、どうすれば……、しかたがない。彼奴らを使おう……」
「……様」
「勇者様?」
「え!? あれ、セレーネ」
気がつくと教会に戻っていた。
いや肉体は動いていない。意識だけが向こうに行っていただけか。
目覚めると、目の前に心配そうなセレーネがいた。
「大丈夫ですか?」
「ごめんごめん、ちょっと……向こうに行ってた」
「向こう? 向こうというのは、もしかして女神様のところですか」
「ま、まあ似たようなものだよ。女神様には直接会っていないけど、その上……いや部下にアンデッドのことを聞いていたんだ」
さすがに女神を管理している存在とか、彼女に言うわけにいかないので部下にしてしまった。
「部下とは天使のことでしょうか」
「ごめん、ちょっとよく分かっていないんだ」
「そうなんですか?」
「ま、まあ、声がするだけで姿は見えないし。自分達に名前はないって言っているし」
「でも、神様の近くにいけるなんて凄いですね」
「セレーネも神聖魔法が使えるくらいだから、神様に会えたりはしないの?」
「一度だけ特別な“声”を聞いたことはありますけど」
「そういうものなのか」
「それだけ“勇者”というのは特別な存在なのです」
「自分達の代わりに“魔王”を倒して欲しいって言われているしね。とは言っても戦う力が全くない俺に一体何が出来るかな」
「出来ていますよ。今だってこの村を救っています」
「まだ救っているとは言い難い。根本をなんとかしないと」
「そんなことはありません。勇者様は敵となるアンデッドだって救っているではありませんか」
「あれは救っていると言えるのかな……、あのゾンビの意識は作られたものかもしれないんだ」
宇宙人のおっさんが言っていた通りなら、彼らに意識はない。
意識を模したただのプログラムでしかない。
「もし作られたものだとしても彼らの声は本物だと思います。だって彼らに託された持ち物も言葉も偽物ではなかったではありませんか」
「確かに遺族や知人はその言葉を聞いて意味を理解していたみたいだしな」
どこぞのテレビ番組みたいに霊能者が抽象的なことを言っているのではなく具体的な話ばかりだしな。
「そうかもしれない」
記憶や意識はコピーされたものだとしても、それは偽物だが嘘ではない……そうだな。確かに彼らの本当の気持ちの残滓であることに違いはないか。
そうかもしれない。
「よし、今夜もやってやろう」
「はい。お供します!」
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