第7話 自分の想い

「はあぁぁ~……気が付いたら先輩の事……」



私は一人ファーストフード店に椅子に腰かけ大きい溜め息を吐き、ぼんやりとしていた。


「はあぁぁ~」


再び溜め息を吐く。


「大きい溜め息だねー」



ビクッ

突然、声をかけられ驚く私。



「恋でもしてるの?」



ドキッ

顔をあげる視線の先には私の前の椅子に腰をおろしている先輩の姿に胸が大きく跳ねた。



「け、圭悟先輩っ!! あれ? どうして?」

「店内に入って行く所を偶然見掛けたから。誰かと待ち合わせしているなら席外すけど? 彼氏とか?」


「いいえ。大丈夫です。彼氏いないので」

「クリスマス間近なのに彼氏いないの?」

「はい。いないですよ。先輩、立候補しますか?」

「……考えて見ようかな?」



ドキッ

まさかの先輩の言葉に胸が大きく跳ねた。



「えっ!?」

「なーんて」

「えっ? 先輩っ!からかわないで下さい!」

「だって華菜ちゃんがからかうから、そのお返し」


「……先輩……何か……キャラが……そういうイメージないですよ」

「じゃあ、どんな感じのキャラ? 俺、案外、意地悪するよ」

「えっ? そうなんですか?」

「うん。まあ男の子はイタズラ好きだから幾つになっても子供なんだけどね」


「先輩……大人のイメージあるんですけど……」

「大人のイメージ……それはまた違う所で見れるかも?」

「……えっ? ち、違う所? 」

「クスクス……決める時は決めるから俺も」

「バンドでステージに立っている時?」

「それはそれであるけど……」




「超羨ましい……」

「超カッコ良くない? ヤバイよね?」



そういう会話が聞こえてきた。



≪カップルに見えるのかな?≫

≪……まさかね……≫

≪だけど……こうして一緒にいると……カップルみたい……≫

≪きっと私だけなんだろうなぁ~≫



心に秘める中、私は普通に会話を続ける。

自分でも、話せているのが不思議な位だった。



「先輩、今度、いつライブするんですか?」

「そうだね。作詞が出来次第だから」

「そうなんですね」

「うん」


「デビューしてないですけど……何か凄いですよね」

「俺達以外にも沢山ライブはしてるから。高校生でバンド組んでる人達は山程いるからね」


「そうですよね……そう言えば、この間ライブに連れて行ってくれた友達が私に言ってたんですけど」


「うん。何?」

「作詞、歌って欲しいと思わないの?って……でも、私、ただの趣味で書いてるだけだからって話してて」


「うん」

「友達に勿体ないって言われちゃいました」

「そうなんだ。だけど、本当勿体ないかもねー」

「えっ?」

「結構良い詞書けてたし。披露したら?」


「……えっ!? いやいや、そんな私なんかが、駄目ですよ! 無理です! それに、もし披露したくても、バンド組んでる訳でもないので披露所かメンバー探しからしないといけないんですよ? 」


「だったら、俺達に託してみない?」

「えっ!?」



先輩の口から意外な言葉を言われ驚くのと耳を疑った。



「今、作詞ある?」

「えっ? あ、はい」



私は自作品の全ての作詞を初めて異性に、バンドを組んでいる相手に見せた。


先輩は、いつになく真剣な表情で私の作詞を目に通す。



「華菜ちゃん」

「はい」

「もし君に披露する気があるなら俺達、協力するよ」


「えっ!?」


「華菜ちゃんの事はライブを観に来た日に竜信の楽器入れに偶々挟まっていた詞によって知られてるから」


「えっ? ……でも……」

「良かったら全部預けてみない?」


「………………」


「どう? 結果はどうなるか分からないけど預けてみる価値はあると思うよ? 無理は言わないけど……ただこれだけの作詞があるんだから、1つ位は音楽になると思うけど」


「………………」


「俺達メンバーが選んだ作詞が楽曲になる! というよりさせてみせるよ。それ位の価値はあるんじゃないかな?」


私は迷う中、先輩に全て作詞を預ける事にした。






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