第5話 真実、天使のような君に

ある日、一人で屋上にいる時の事だった。



「へぇー」



ビクッ

背後から声がし振り返る視線の先には



「け、圭悟先輩っ!」

「あっ! 名前覚えてくれてたんだぁー。光栄だなぁー」



笑顔で言う先輩の姿に


相変わらず


私の胸の高鳴りは


なりやまない


でも


その向けられる笑顔が


特別なら良いのに ――




「えっ? あっ、いいえ……光栄だなんて……」


「ちなみに君は何ちゃん?」

「えっ? あっ私は……華菜……邑月 華菜って言います」

「邑月 華菜ちゃんだね。俺は、粃 圭悟(しいな けいご)宜しくね!」


「は、はい……あの先輩は何年生なんですか?」


「華菜ちゃんの1コ上だよ」

「2年生なんですね」

「うん」

「……あの……以前の人……彼女なんですよね? 私なんかと一緒にいても大丈夫ですか?」


「えっ? 彼女? 俺いないよ」

「えっ!?」

「もうずいぶんといないから、そろそろ欲しいかもなんて……で? 誰が俺の彼女? 華菜ちゃん立候補する?」



ドキッ

突然の言葉に胸が大きく跳ねた。



「い、いいえ……そんな私は、不つりあいですし、先輩にはもっとこう美人な人……この前の人みたいな女の子の方が良いと思いますよ」


「この前?」


「はい……えっと……告白された後に私と、お話をしている時に女子生徒が先輩を呼びに来て……お互い名前呼び合っていたので……」


「あー、もしかして竜信のお姉さんの事かな?」


「えっ?」


「彼女、加須美さん。芳川 竜信ってクラスメイトにいるでしょう?」

「芳川君? はい、います」

「そのお姉さん」

「お姉さん……」



≪彼女じゃない感じなんだ≫




次の瞬間 ――



ガチャ

屋上の出入り口のドアが開く。



「そんでさー」



屋上に誰かが来たようだ



グイッ ドキッ

私の手を掴み移動する先輩。



ドキン……



ドキン……



私の胸が加速していく。



「せんぱ……」

「しっ!」



人差し指で静かにするようにの仕草をした。



「女って、やっぱ色気ねーとHする気ねーよなー」


「そうそう。出るとこ出てねーとさー」


「だよなー。だからって、お色気ありすぎるのもどうかと思わね?」

「そうそう。やる気満々もどうかと思うけど」



「あの人達、最近ここに来るんだよねー」

「えっ?」

「彼等は不良だから気を付けた方が良いよ。特に華菜ちゃんみたいな可愛い子はね」



ドキン

突然の言葉に胸が大きく跳ねた。





それが特別な想いなら


どんなに良いだろう?



「い、いいえ……私は可愛いくないですよ」


「そう? さてと、そろそろ始業ベル鳴っちゃうねー。彼等は更けるつもりだろうし……ドア迄遠いけど、彼等に見付かったらアウトだよ」


「先輩は?」

「えっ?」

「先輩は、どうするんですか?」

「俺? 気紛れだから。サボっちゃおかなー?」


「えっ!? まさかいつもサボってるとか?」


「一日中じゃないけど」

「えー、駄目ですよ! 全部授業は受けないと単位取れなくなって留年とかして大変ですよ」


「留年したら、華菜ちゃんと同級生だね」


「先輩、そういう問題じゃないですよ」

「じゃあ、どういう問題?」



甘えたように言う先輩が可愛く見えた。



キーンコーンカーンコーン……


始業ベルが鳴り響く。



「始業ベルなっちゃったよー。華菜ちゃんどうするの?」

「どうするの? って……友達心配するかな?」


「連絡したら?」

「まだ連絡先、交換してなくて」

「そうなんだ。じゃあ、竜信に俺から連絡しておく」

「えっ?」



そして、私は初めて授業をサボった。





隣には好きな人がいて


嬉しい半面


何処か切なさが募る


恋人同士でもない私達だけど


この時間はすごく幸せだった


ねえ先輩


私はあなたの恋人に


立候補出来ますか?


私はあなたが


好きです…………





「華菜ちゃん」

「はい」

「肩借りるね」

「えっ?」



すると私の肩に先輩の頭が凭れかかる




ドキン



風になびく先輩の髪が私の頬をくすぐる



「………………」




スーと寝息が聞こえてきた。





ズルいよ……


先輩……


こんな事されたら……





そして ―――



「華菜ちゃん」

「ん……」



名前を呼ばれる。


私の肩に凭れ掛かった状態で、先輩が私の顔を下からのぞき込むようにしている。



ドキッ

至近距離にある先輩の顔に胸が大きく跳ねた



「………………」




≪私……いつの間にか眠ってたんだ……≫

≪……恥ずかしい……≫



グイッ

優しく私の頭を引き寄せる。



≪えっ?≫



ドキン

私の唇に先輩の唇が重なった。



≪……嘘……キスされた……≫



「まるで天使のような君の寝顔に……キスしたくなった……」



「えっ?」



「恋の魔法がかかりそうだね。もしかすると、もうかかってるかも?」

「先……輩……」

「またね。邑月 華菜ちゃん。次の授業始まる前に戻るんだよ」



笑顔でそう言うと先輩は私に言う。



「はい」



返事する私に先輩は先に戻って行く。


そして私も教室に戻る事にした。



























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