第4話 彼女
「あの圭悟先輩、私とお付き合いして下さい!」
「気持ちは嬉しいけど、君とは付き合えない。ごめんね」
「そうですか……分かりました」
去って行く女子生徒の姿。
偶然に目撃した私は足を止め先輩と思われる男の子と目が合う。
ドキン
胸が高鳴る私。
「あれ? 君は竜信と同じクラスの」
「あの……ごめんなさい……偶々、通りがかって……えっと……」
歩み寄る先輩。
私の顔をのぞき込むと、ポンと頭をされた。
ドキン
「気にしない、気にしない。ところで作詞は出来た?」
「えっ?」
「この間、考えていた様子だったから」
「あー……えっと……」
そこへ ―――
「あ、いたいた。圭悟君」
ズキン
女子生徒が駆け寄り、彼の名前を呼んだ。
≪美人な女の子≫
「加須美さん」
≪彼女かな?≫
どう見ても美男美女カップルと思われてもおかしくない程、お似合いだ。
「それじゃ」と、彼。
「はい……」と、私。
私達は別れた。
彼女?
女友達?
色々な事が
私の頭を駆け巡る
ある日の事、紗理菜とファーストフード店で会っている時の事。
「失恋した?」と、紗理菜。
「……うん……だって……すっごい美人な人だったし……」
「友達とか?」
「えーっ! でも、かなり親しい感じだったし……」
「じゃあ失恋だね」
グサッ
紗理菜の一言に胸が痛む。
「……紗理菜……ひどーい……」
「ごめん、ごめん。でも、華菜は昔から恋愛奥手だったよね?」
「うん……好きなんだけど想い伝えないまま……結局……その人には彼女出来ちゃって……」
「両想いになる可能性も何度か逃した。いたんだよね~……華菜に想い寄せてた子」
「うん……実は私も好きだったのに~って、そんな後悔もしばしば」
「じゃあ! 今度はゲットしよ~」
ビクッ
突然背後からの声に驚き肩が強張る。
「きゃあっ!」
「邑月、好きな人いるの?」
私の背後にはクラスメイトの芳川君の姿があった。
「い、良いでしょう?」
「誰、誰? 圭悟先輩?」
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
「違っ!」
「そう? じゃあ、念の為、良い事を教えてあげる。先輩、お前の事可愛いって言ってたけど」
ドキッ
「えっ!?」
「まあ、ともかく、そういう事。ねえ、お友達の人、この子いるんでしょう? 好きな子」
「それは……」
「本当に失恋したの? この子」
「う、うるさいなっ! 芳川君には関係ないでしょう? 出よう。紗理菜」
「う、うん」
「それじゃ、お先に」
私達は店を出た。
「ねえ、今の子は?」
「クラスメイトの芳川君」
「イケメンだね」
「えっ?」
「やっぱり華菜の学校はイケメン揃いじゃん! 彼じゃないんでしょう?」
「違う違う。もっと背が高くてカッコ良くて優しい感じの人だから彼は問題外。ちょっと名前出されたけど……」
「あー、先輩とか?」
「うん……先輩なんだ」
「でも、華菜の事を可愛いって言う位だから案外イケるかもよ。華菜、可愛いんだし十分イケるよ!」
「だと良いけど……美人な女の子が引っ掛かってるから……」
「そうか……そうだよね……」
私達は、話をしながら帰った。
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