第三話・喫茶 AOYAMAへ


まりあ「こーへーくーーーーんッ!!」


まりあ「お待たせ、こーへーくんッ! ……えへへー、待った?」

香平 「いいや、時間ぴったり。僕も今さっき着いたとこだよ」


まりあ「でひひー、良いですなあこのやり取り! 一度やってみたかったんだよね~~♪」

香平 「ご期待に添えたなら何よりですよ。それじゃ、行こうか。聖川さん」


まりあ「ああっと惜しいっ! そこはこう、『じゃ、行こうぜ、まりあ(きらーん)』って感じでキメ顔で言ってくれないと」

香平 「……キミは僕に何を求めてるんだ……。だいいちこんな人込みの中で、そんなの出来っこないよ」

まりあ「ん……おやおやぁ……? するってぇとそれは、二人っきりになれば、ってことですかい? 詰まる所そういうコトですかなあ……?」


香平 「今日はまた随分とご機嫌だね。絶好調じゃないか」

まりあ「あたしはいつだって、全力全開絶好調だよッ! さあさ、コーヒーが冷めてしまう前に参りましょう、参りましょう!」


香平 「いやちょっと背中押さないでってば。今から淹れるんだから冷めたりしないし、それに僕の家知らないのに、聖川さんが押してどうするのさ」

まりあ「おっと。それはそうでした。しからば。…………んっ」


香平 「えー……その手は何かな、聖川さん?」

まりあ「エスコートは、オトコノコの役目でしょ?」


香平 :……はあ。絶対やると思った……だけど


香平 「――――――僕だって。いつまでもやられっぱなしは癪なんだよね」

まりあ「…………へ?」

香平 「はぐれないように、手、離さないでね」


まりあ「えっ、ちょっ、こんなのあたし聞いてないっ! ちょっと! みんな見てるってば! 恥ずかしいってば!! ちょっとこーへーくーーーーーーんッ!!!!」


…………


香平 「ここが僕の家。さてと、そろそろ良いかな?」


まりあ「こーへーくん……おヌシ……ジッサイ大胆なとこあるじゃねーの……」

香平 「僕だって恥ずかしかったんだからね。これに懲りたら、調子に乗り過ぎないように」


まりあ「くっ……善処します」

香平 「それ、いつもの僕の台詞」

まりあ「ぐぬぬ」


…………


香平 「さて、落ち着いたところでこの趣味の塊の感想はどうかな?」

まりあ「既に入口から本格的だよね……。ホントにここただの民家? あれ、開けたらカランカランってなる奴だよね。オープンとクローズの板もかかってるし……」


香平 「事実上お店やってるようなものだからね……さすがにお金は取らないけど、知る人ぞ知るご近所のたまり場っていうか」

まりあ「普通に喫茶店と間違えて入っちゃう人とか居そうだよね……」


香平 「引っ越してきたばかりの人とかたまーにね。でもそうやって、『ご近所さん』が増えていくって寸法さ。

    まあ、家の前で話し込むのもなんだし、そろそろ入って落ち着こうか。……えーーー、こほん」


香平 :重い木版のドアを開きつつ、咳払い。ちょっと恥ずかしいんだけど、これウチのルールだからなあ……。



香平 「ようこそ、"喫茶 AOYAMA"へ」 


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