第二章 妻はヤル気のようですが、何か?
第13話 暗躍してる輩が居るようですが、何か?
~side???~
わたくし達、黒薔薇の会の活動は、主にリコネル王妃の書物及び、リコネル王妃の庇護の元で執筆している小説家、童話作家、そして、それらを助ける絵師たちに及ぶ。
政治の開拓者。
女性社会の改革。
その他にも沢山の功績を遺すリコネル王妃には、それはそれは、憧れているわ。
憧れている。
でも、それは時として妬みにもなるの。
当時、私とリコネル王妃は同じ学院で勉学を励んだ同士。
彼女の周りは常に輝いていた……。けれど、わたくしの周りはとても暗く、薄汚れていた。
男爵家に生まれ、日陰の存在。
そんな中にあっても、リコネルの輝かしい姿は今でも脳裏に焼き付いている。
常に自信に溢れ、常に自分を律し、常に前を向いていた彼女。
だからこそ、チャーリー元王太子との婚約破棄及び、学園追放には歓喜した。
憧れていた。
目障りだった。
今もそう、国母になって本当に目障り。
消えて欲しい。
自信にあふれる彼女を潰したい。
その為には何が効率的かを考えた時、彼女が大事にしている者を壊していく事が、何にも勝る彼女へのプレゼントに感じた。
なんの対策もしていなかった最初の頃、数名の作家の筆を折ることに成功した。
あの時の高揚感は今も忘れられない……あぁ、リコネル。貴女の大事にしていたものをこうやって壊していく事はわたくしの生き甲斐よ。
それなのに、数々の対策を施し、作家を、絵師を守ろうとする姿は滑稽で可笑しくって。
――あぁ、わたくしを恐れてくれているのね。
――もっと、もっと恐れて欲しいの。
その為なら、貴女の息がかかっている作家のヴィヴィアンを仲間に引き入れる事だって同左もなかったわ。
彼女は良い捨て駒。
使い勝手が悪くなれば、彼女を捨てることは痛みを伴わないの。
寧ろ、貴女が大事にしていた作家が、貴女を裏切ると言う悲劇的な光景には、何物にも代えがたい程の高揚感を感じていたわ。
それなのに――。
「他の作家も筆を置くと言うのは……わたくしも?」
不安を表に出した声に、わたくしは眉をしかめた。
あぁ……もう少し使おうと思っていたのに、そろそろ潮時かしら?
「そうですわ、ヴィヴィアン様こそ相応しいかもしれませんわ」
「何がですの?」
「決まってますわ! リコネル王妃の書く小説を大々的に、ミラノ・フェルンの時のように集団を引き連れて叫ぶのです。 害ある小説を、この国の王妃が書いていると」
その言葉に、わたくしを見つめ、目を見開くヴィヴィアン氏を冷たく見つめた。
「そ……それは出来ませんわ。不敬罪で捕まってしまいますもの!!」
「国民が望んでいることを叫んで何が悪いんですの?」
「わたくしには出来ませんわ! そもそも、リコネル王妃の経営しているアトリエで執筆しているんですもの。色々問題になってしまいますわ!」
「ん――。正直、そこまで小説書くことが大事かしら?」
小説を書く事ってそんなに大事?
そもそも、貴女の小説だってたいしたものではなくってよ?
リコネルの小説の足元にも及ばないの。
読む価値が無いから皆さんの言葉に合わせているけれど、貴女の小説は全然リアリティが足りないわ。
「わたくし思うの。貴女も女盛りを無駄な小説で過ごすより……没落しそうな家の為に、結婚を考えては如何かしら?」
「それ……は」
「何も小説をやめろとは言ってませんわ」
「でも……」
「一度、考えてみて欲しいですわ。 害ある小説なんて、この世に無くて良いでしょう?」
けれど、そろそろ花盛りを終わりそうな貴女を妻に娶ってくれる男性っているかしら?
もし居るとしたら、余程の物好きか、貴女のお父様のように変態ね。
そんな事を思うとクスクスと笑いが出てしまい、彼女は震えながら走り去ってしまった。
「まぁ、なんて礼儀知らずな方ですの!」
「アリィミア様の黒薔薇の会を無断で出ていくなんて!!」
「躾がなっていないのですわ!」
「でも、礼儀なんてあの方に出来た物かしら? だってあの家ですもの」
「そうでしたわね」
クスクス。
クスクス。
嘲笑う歌声はサロンに響いてわたくしも思わずクスクスと笑ってしまったわ。
さぁ、そろそろ終わりの時間。
夢から覚めて、現実を見て、今までリコネル王妃の傍らで守ってもらっていたくせに、裏切ったと言う事実に向き合うの。
素晴らしい歌劇だわ。
あぁ……これをエルシャール・フェンシャー様が曲を作り、アズラン・ペシャール様が作詞し、それをかの有名なイリーシア・ファレルノ様が歌ってくださったら、どれ程興奮するかしら……。
*
黒薔薇の会が終わり、わたくしは夫と一緒にオペラ会場へと向かう。
先ほどの御三家が手掛けるオペラは、まさに芸術だわ……。
あぁ、あの裏切りも幸福も、全てを詰め込んだ感情を、音楽と素晴らしい歌詞に歌を付ければ―――。
そうね、タイトルは「王妃の失墜」なんてどうかしら。
今かで輝かしかったんですもの。
一度はわたくしのように地に堕ちてしまえばいいんだわ。
「素晴らしい歌だね、アリィ」
「ええ、本当に素晴らしいわ」
男爵家の娘が玉の輿になったのは有名な話。
日陰から日向へ。
わたくしも輝かしい人生を歩んでいる。
だからこそ、リコネル王妃が妬ましい……。
「でも、物足りないわ」
「そうかい?」
「ええ、もっとわたくしは――涙溢れる歌が聞きたいですわ」
もっと――悲劇が聞きたいんですもの。
その本音は胸にしまい、老いた夫に寄り添えばいいだけの、都合のいい女。
それがわたくし……アリィミア・ダライアスよ。
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二章に入りました(/・ω・)/
アンチのボスの登場ですね!
今後彼女がどうなっていくのかは、お楽しみに!
月曜までは一応1話ずつの更新予定ですが
場合によっては増えるかもしれません。
★や♡等有難うございます!
執筆頑張ります(`・ω・´)ゞ
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