第9話 訪問者
「ただいまー」
「おかえりなさい」
女の人の声で迎えられた。
「えっ!? あれ? えっと……」
≪誰? つーか……何処かで……≫
「初めまして。私、石岾 維都弥(いしやま いづみ)あなたが同居人の方?」
「はい……」
「ごめんなさい。今、台本の打ち合わせでお邪魔させて貰ってます」
「あー、そうなんですね」
そこへ ―――
「あっ! おかえり。悪い、台本の打ち合わせで」
「あ、うん。今、聞いた。内容が分かると嫌だし、お仕事の邪魔になるから外出しておくね」
「いや、別に良いけど? 」
「そうですよ。いて貰っても構わないですよ」
「いいえ」
私は必要なものだけを持って外出した。
「誰かいるかな?」
彼氏に連絡したものの断られた。
私は一人、街をブラついてると
「あれ? 真谷じゃん! 何してんの?」
「あっ! グッドタイミング! 天藤君、暇?」
「暇」
「ねえねえ、付き合って!」
「えっ? アイツと喧嘩でもしたの?」
「それはない! 何か台本の打ち合わせとかで業界の女の人が来てたから」
「業界の人?」
「うん。石岾 維都弥さんって言ってたけど……」
「……つったら、芸能人の IZUMI じゃん!」
「あー、そうだ! どうりで何処かで見た事あると思った!」
「ていうか、お前と一緒にいるのは良いけど、お前、彼氏いるんじゃなかったっけ?」
「うん、いるよ。彼に連絡したら用事あるって断られた。まあ、突然だったから無理もないだろうけど」
「で? 大丈夫なの?」
「うん、一先ず今から連絡入れる」
「そうしてくれ」
私は、天藤君と遊んでいた。
ある日の事。
「朋華」
「あっ! 正人」
「ごめん、遅くなって」
「ううん、大丈夫」
今日はデートの日。
「朋華、来て早々に申し訳ないんだけど……朋華って、お兄さんいるの?」
「えっ?」
「いや……間違ってたら悪いけど、お兄さんはいないって話で、同じ位の男の子と同居してるとか? しかも相手は芸能人だって」
「えっ?」
「本当の事、話してくれないかな?」
「……それは……」
「本当の事知りたいだけだから教えて欲しい」
「ごめん……騙すつもりはなかったけど、知ってる人は、ごく一部で……相手に迷惑掛けれなくて本当の事を話せなくて……お兄ちゃんは……いない……芸能人と同居してる」
「そうだったんだね」
「本当、ごめんなさい」
「いや良いよ。本当の事を話してくれてありがとう。さあ、行こうか」
「うん……」
≪でも……誰からの情報?≫
≪私は誰にも話してないし≫
≪せっかくのデートなのに……これじゃ……≫
「朋華?」
「えっ? あ、ごめん……」
「気にしてるの?」
「えっ?」
「同居してた人の事」
「……ごめんなさい……せっかくのデートなのに……」
「朋華、気にしなくても良いんだから。俺は別に怒ってる訳でもないし、同居人と何かあるとか一切、思ってない。言えない事とか言いにくい事はあるから。偶々、ちょっと耳にしただけだから」
「……正人……凄く気になってる事、聞いて良い?」
「何?」
「その情報、何処から? 誰から聞いたの? 私……そっちが気になってるんだけど……」
「えっ?」
「どうして正人が知ってるの?」
「友達から聞いて」
「友達?」
「ああ」
「そうか……」
≪これ以上、広まらなければ良いけど≫
≪そうなったら悠也は……≫
「……正人……ごめん……せっかくのデートなんだけど……今日は……」
「そっか……何となくそんな気はしてたけど……」
私達はデートをするのを辞めた。
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