第8話 約束

「ごめん。相談してくれれば犯人突き止めたのに」



正人君が言った。



「あー良いの、良いの。悠也に……」


「悠也?」


「あっ、うん、お兄ちゃんなんだけど助けてもらったから」


「……お兄さん? お兄さんの事……名前で呼んでるんだね」

「そ、そうなんだ。物心ついた時から言ってたみたいで……」



「そうなんだ」

「うん」



≪咄嗟に出たけど大丈夫かな?≫



それから、正人君と正式に付き合う事になった。



だけど、彼は本当のモテモテだったみたいで嫌がらせメールがあったのも納得できた。




ある日の夜。



「朋華、どうしたの?元気ないけど」

「ねえ……悠也」

「何?」

「もし付き合ってる相手がモテモテだったらどう?」


「えっ?」


「ごめんやっぱり……いいや」


「お前の彼氏モテモテなの?」

「うん。最近、正式に付き合いだして話は聞いてたし、嫌がらせメール来ていたから、まさかと思ったけど改めて実感してる感じ?」



「そうか」


「私よりも可愛い子とか沢山いるはずだし……私、凄く不安……」


「何、弱気になってんの? お前はその男の彼女じゃん」


「彼女でも……違う……彼女だからこそ不安なの! 悠也といつも一緒にいる訳じゃないんだよ!」


「それが恋愛だろう?」

「えっ?」

「同じ地球にいていつも一緒にいられる訳でもないし、遠距離なんて尚更辛いだけだろう? だけど、お前は学校が違うだけで彼氏がモテモテであっても会う機会はあるはずだろうし」


「………………」


「不安だったり、ドキドキしたり、泣いたり、笑ったり……様々な気持ちあっての恋愛だろう?幸せばかりの恋愛なんて存在しねーし。毎日が幸せだったら世の中、幸せばっかじゃん!」



悠也は私の頭をポンとした。


ドキン



「不幸も幸福も人生には波があるんだしさ」

「うん……」

「何かあったら俺が傍にいてやるから」

「……悠也……うん……」




ある日の夜 ―――




「おい……お前は、お年寄りかっ! 近所迷惑だぞ! 人の出演しているドラマを大音量でマジ見すんなっ!」


「えー、良いじゃん! カッコイイよ! ゆ・う・や♪」



「おいっ!そんな事よりもメール!」

「そんなの後、後。テレビよテレビ」


「………………」



悠也は自分の部屋に移動しベッドに横になる。




しばらくして ―――



「悠也ぁーーっ、ねえねえ、あのドラマどうなっちゃうの?」



カチャ

悠也の部屋に訪れた。


ベッドに横になっている悠也。

起きてるのか分からない為、ベッドに近付く。



「悠也?」


「………………」


「なーんだ寝てるのか……」



私は部屋を出ようとベッドから離れ始めた時だった。



グイッと私の手を掴む。



ビクッ



「お、お、起きてたの?」

「起きてるに決まってんじゃん!」

「だったら返事してよ」

「演技」

「えっ? 演技?」



微かに微笑む悠也に胸の奥が小さくノックした。



「あ、あのねー」

「はいはい。分かったら出て行ってくんない? 俺は今から台本覚えなきゃならないんで」

「相手になろうか?」

「調子狂うし」

「そう」

「むしろ、一人が良いし。集中したい」



私を部屋から追い出すように悠也は出した。



「つーか……結局、聞けなかった。まあ、内容分かったら楽しみなくなるからなぁ~我慢しよう」



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