第7話 救世主
それからというもの毎日、嫌がらせメールが届くようになり、私は頭を悩ませていた。
「朋華……大丈夫?」
と、由津羽が私の事を心配し尋ねた。
「……うん……」
「でも嫌がらせのメールってマジ、タチ悪いよね」
「携帯……変えようかな……?」
「その方が良いって! 」
「だけど、また教えるのも面倒だし……結局……同じ様な気がする」
「だけど、朋華が精神的にやられちゃうよ?」
「もう既に遅いかも……」
「………………」
その日の夜 ―――
「朋華、どうしたの? ブルーじゃね?」
悠也が私の異変に気付いた様子で尋ねた。
「……ちょっとね……」
「男にフラれた?」
「違うしっ!」
そこにメールが入ってくる。
私は予想はついていた為、見る気にもならず
「メール良いの?」
「……見たくない」
「えっ? 見たくない? どうして? 例の彼からじゃねぇの?」
「多分……違うと思うよ」
「………………」
悠也が気にしているようなので、一先ず目を通す。
「……やっぱり……」
私はテーブルの上に携帯を乱暴に置き、テーブルに顔を伏せた。
「朋華?」
「………………」
「なあ、すっげー気になんだけど……お前がその行動を取る携帯の内容には何があるんだ?」
「……見てみれば? 一層の事、適当に返して貰って良いよ。どうせ、ろくなメールじゃないから。あんたも精神的にやられるよ」
「ろくなメールじゃない? もっと気になる~」
悠也は興味津々だ。
「イタメ……じゃねぇな……嫌がらせ? 男と別れろ! お前なんか彼に似合わねぇ! 早く別れろ!」
私は顔を上げる。
「ちょっとっ!! 声出して読むの辞めてもらえるかな!? ただでさえ、ヘコんでるんだから更にヘコむんですけど!」
「おもしれーーっ!」
更にメールを読み続ける悠也。
「ちょっと!!聞いてる!?」
「うん聞いてる」
「いや、絶対聞いてないでしょう? もうっ! 読むの辞めてっ! 携帯返してっ!」
取り返そうとする私に意地悪をする悠也。
「ちょっと! 悠也っ!」
「何?」
「携帯っ!」
「はいはい。ほら、携帯。相談してくれれば良いのに」
「えっ?」
「こういうの日常茶飯事だし」
「………………」
「ファンや世間は自分が主人公だから。キスシーンとかカップル役とか……選ばれた女優さんを世間は傷付ける」
「………………」
「だからって、みんながみんなそうじゃないだろうけど。業界じゃ嫌がらせは多分女優さんに限らず俳優さんにもある事だと思うけど」
「……そうか……」
「業界の先輩後輩も厳しいし、共演者によっては業界人間同士も傷付け合ってるかもしれない。それに、世間に嫌われる事も中にはあるからな。まあ、俺の個人的な意見だけど、それを乗り越えた奴しか業界じゃやっていけないんじゃないかな?」
「………………」
「さて、本題です! 朋華ちゃんは、この子達を、どう成敗しましょうか? お前が嫌な目に遭ってんのに見て見ぬふりは、この悠也さんには出来ませんが?」
「でも……」
「このままだと一生変わらない」
「………………」
「何かあったら俺いるじゃん! 付き合ってる奴も協力してくれるだろう? だって好きな人が傷付いてんだぜ? 俺ならそうするけど?」
「……悠也……」
「お前の人生、こんな事で終わらせてどうすんの? 立ち止まったままじゃ進めないって!」
私は悠也と協力してメールを返す事にした。
悠也は手当たり次第に巧みな技で沢山の嫌がらせメールを相手に返信。
同級生とは思えない悠也は私の救世主だった。
「悠也、凄すぎ!」
「だてに芸能人してねーし。どんだけ台詞頭に叩き込んだ事か。頭ん中の脳ミソシワありすぎて細胞分けてやろうか?」
「いらないから」
「そう言わないで何処が良い?」
「いらない、いらない」
「前頭葉? 後頭葉? 右脳? 左脳?」
「だから良いって!」
「大脳? 小脳? 側頭葉?」
「口説い!」
私達は騒ぐ中、夜は更けていく。
そして、その後メールは一切送られて来なかった。
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