第5話 告白
「悠也ぁぁっ!」
私は悠也の部屋のドアを思いきり開ける。
「うわあっ! ビックリした! 何だよ!」
「ゆ、ゆ、悠也ってファーストキスってやっぱり女優さん!?」
「えっ? いきなり何を言い出すかと思ったら……」
「い、い、今、あんたのドラマ観てたら、キ、キ、キスしてたしっ!」
「あー、キスシーンね。つーか、まず落ち着け朋華。深呼吸しろ」
「あ、う、うん」
私は深呼吸をする。
「じゃあ本題な」
私は頷く。
「俺の初キッスは初恋の人で相思相愛の子とチューした。まだ子役としても、そこまで名は知られていなかったから放課後のバレンタインの日に告白されて、ホワイトデーの変わりに一足早く小学校ん時にしたかな?」
「………………」
「気が済んだ?」
「……マセた子供(ガキ)……」
「なっ!」
「じゃああれは……女優さんと……生チューしたって事?」
「まあ、そうなるな。朋華も俺のスゥイートな唇でチューする?」
ドキッ
イタズラっぽく笑う悠也。
「バ、バ、馬鹿っ! しませんっ!」
私は足早に部屋を出て行き始める。
「おっもっしろーい! 朋華、お顔真っ赤っかーーっ!」
「う、うるさいなっ!」
次の日、ドラマの影響で悠也は質問攻めにあっていた。
ある日の放課後 ――――
「あの! キスしてくださいっ!」
「えっ!?」
放課後の教室で男女の会話と思われる。
「だって女優さんとキスしてるんでしょう?」
≪女優……さん? まさか……悠也?≫
「いや、それとこれとは違うから申し訳ないけど……君には応えられないかな? あれは仕事だし。君はプライベートでしょう? ましてや恋人でも何でもない……」
「………………」
彼女は、満足気に教室を出て行く。
ガンっ!
机か椅子を蹴ったと思われる音が響き渡る。
ビクッ
私は驚いた。
「ふざけんなよっ!」
無理もない
相手の勝手な想いで
許可なくされたのだから…………
「……悠……也……」
振り向く悠也。
「……朋……華……」
「……ごめん……あの……」
「………………」
私は、それ以上何も言えなかった。
「……悪いけど一人にしてくんね? 今、すっげー機嫌悪いし」
「………………」
「……うん……バック持ったら帰るから……」
私は教室に入り足早に教室を出た。
別れ際 ―――
「……悠也……たまにはブチギレるのも大切だよ……それじゃ……」
「………………」
その日、悠也は帰って来なかった。
「気にしてんのかな? それとも仕事?」
私は、リビングでテーブルに顔を伏せ、いつの間にか眠っていた。
次の日の朝方 ―――
カチャ……
パタン……
玄関先のドアが開閉する音が響き渡る中、私は気付きもしない。
「……朋華……? まさか……コイツ……ずっと……?」
「………………」
私を優しく見つめ私の髪を撫でる。
「……悪い事したな……」
「………………」
「おいっ! 朋華っ! 起きろっ!」
「……ん……」
私はゆっくりと目を開ける。
「あっ…… 悠也……おかえり……」
「……ああ……ただいま……」
私は背伸びをすると悠也に尋ねる。
「もしかして仕事だった?」
「……いや……」
「そっか。じゃあ取り合えず朝ご飯の準備でもしようかな?」
私は席を立ちキッチンに向かう。
グイッと背後から抱きしめられた。
ドキーッ
突然の悠也の行動に驚き胸が大きく跳ねた。
「……悠……也……?」
「……ごめん……」
ドキン
何故か謝る悠也に胸が小さく跳ねた。
「……えっ? どうして謝るの?」
「ここで待ってて……気付いたら眠ってた……違うか? 」
「それは……でも、私が部屋に行けば良かったわけだし、悠也は何も悪くないよ」
「いや……電話一本入れるかメールすれば良かったんだ。本当、悪い……」
「良いよ。気にしないで良いから。ほら、朝ご飯の準備出来ないから」
「何で何も言わねーの?」
「えっ? 何でって……」
抱きしめた体を離し向き合う私達。
「同居してんのに……連絡一本寄越せって言えよ!」
「悠也のあんな姿見てたから、何も言う理由も聞く理由もないよ。無事なら良いから」
「……朋華……」
「ねっ!ほら、退いて」
私は押し退けキッチンに向かった。
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