十四巡目

 二度あることは三度あるという言葉は、二度やられた側からすれば本当に嫌な言葉だと思う。


 救われないし。


 あと三度あることは四度あっても不思議じゃないよねー。


*****  *****  *****

 

 というわけで引き続きの南二局。私が後輩君のオープンリーチに二回振り込んで、三度目の対決に挑むわけだが。


「オープンリーチします!」

「オープンリーチする」


 先手は変わらず後輩君のペンチャン待ち。

 後手は変わらず私のリャンメン待ち。


 そろそろ勝てるはず!


 なんと今回は平和ピンフ断么タンヤオドラ2を抱えている。後輩君が振り込めば負け分はほぼ挽回できる。


「先輩、ロンです!」


 しかしワクワクは一巡で消えて絶望に変わる。私が一発を外した牌で後輩君はアガり。


「オープンリーチドラ1です!」


 そう、良かったね…。


 こいつのカンチャン待ちに掃除機がついているのは知っていたけど、ペンチャン待ちには磁石がついているのか。


 まだ終わったわけではない…が、親はもう

回ってこないし、逆転は難しい。


 でも、せめて一矢は報いないと気が済まない。後輩君からアガってやる!


 南三局は辛うじてテンパイだけして点棒を少し回収。そして南四局オーラスに挑む。


 三巡目である。


「オープンリーチします!」


 後輩君が宣言する。

 早い…。もう絶望すらもない。


 ここからどうやって逆襲するんだ。ペンチャンばかりで手が進む気はしない。

 一方、今回、後輩君はリャンメン待ちである。掃除機カンチャン待ちでも磁石ペンチャン待ちでもないのは、もしかしたらチャンスなのかもしれない。


 私は腹を括って、純全帯么九ジュンチャンを狙う。もちろんオープンリーチもかける。


 ペンチャン待ちでお返ししてやるというのをなかなか面白い。


 後輩君の待ち牌は見えているので安心して攻められる。彼の待ちは筒子ピンズの4、7なので、四筒スーピンを引いたらジュンチャンは断念するしかない。


 幸い、ゆっくりとだが手は進んでいく。十巡目で二向聴リャンシャンテン、十三巡目で一向聴イーシャンテン。おそらく後輩君のアタリ牌は同僚A氏とB氏が押さえている。


 そして、十五巡目。絶対に引いてはいけない四筒を引いた。


「…………」


 まだだ。頑張るんだ。

 私の手牌でまだ揃っていないのは、筒子の1と2のペンチャン(今は1、2、4になってる)と、アタマ候補の萬子マンズの1、索子ソーズの1。

 仕方なく一萬イーワンを切った。


 十六巡目。三筒サンピンを引いた。

 もう死ねって思う。

 ヤケクソ。オープンリーチを宣言して一索イーソーを切った。


 せめてアガりたいなぁ。そう思いながら十七回目のツモを引く。


 七筒チーピン


「…………」


 そういうことか。

 後輩君がツモらなかったのは、私がリーチかけるまで待っていてくれてたんだね!


 もう愛すら感じる。


 さて、この


 私は七筒を切った。


「ロンです! オープンリーチ平和断么ドラ2…裏ドラも2枚乗りましたね!」


 何という愛の大きさだ!

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