十五巡目
後輩君にオープンリーチを教えたら…。
強くなると思ってましたよ?
それでも教えちゃったわけですが。
どうやって封印するかな…。
***** ***** *****
「後輩君さあ、もう少し高度なテクニックを教えてあげよっか?」
いつもの雀荘のいつものメンバーによるいつもの席順での麻雀。
私は上家に座る後輩君にアドバイスしてあげることにした。
「え! 教えてもらっちゃっていいんですか? ありがとうございます!」
よし、罠にかかった。
私は予定通りに話を進める。
「ヤミテン、またはダマテンって言うんだけど、聞いたことある?」
「たぶん…分かります。天ぷらですよね?」
「ここで私が天ぷらの何を教えるというの? 油の温度はいくつが良いとか、衣の付け方はこうすると良いとか教えるの?」
「教えるんですか?」
「いや、天ぷらの話じゃないってことを皮肉を込めて聞いているだけだけど…ああ、もう、説明させないで! 麻雀の話に決まってるでしょ!」
それから私はヤミテンについて教えた。テンパイしてもリーチはかけない、リーチをかけないから周りに警戒されずにアガれる、裏ドラが乗らない等のデメリットもある、などなど。
「なるほど…やってみます」
これでリーチそのものをかけなくなる。引きの強い彼にしたらマイナスにしかならないはずだ。
そう思ったのだけど。
「オープンリーチです!」
リーチかけてんじゃねえ!
「あれ? 後輩君。ヤミテンやってみないの?」
「あ、そうでした! 忘れてました」
「まあいいけど」
この局は安全に行こう。追っかけリーチなんてかけようものなら一発で振り込む。
私のツモ順、後輩君の待ち牌を見ながら慎重に牌を切る。
「ロン」
宣言したのは同僚A氏だった。
ダマでテンパイしていたらしい。
「後輩君…。これがヤミテンね。私はリーチをかけた後輩君にしか意識が向かなくなるから、他の人に対する警戒が緩くなるの」
「なるほど!」
とりあえず事故と割り切って点棒を支払う。
次の局。今度こそ後輩君がリーチをかけないことを信じて手を進める。
「オープンリーチです!」
でも裏切られる。
「後輩君?」
「あ、違うんです。テンパイしたけど役がなくて…」
「後輩君。その考えは違うよ。最初からリーチや裏ドラに頼らないでアガれるように考えて手を作らないと」
「あ、そっか。そうですね。最初から考えて…手を作る…」
フィーリングだけで打ってる彼にしたら難しい問題なのかもしれない。
私はこの局も安全に乗り切るため、無難に牌を切る。
「ロン」
宣言したのは同僚B氏だ。
なんと彼もダマでテンパイしていたらしい。
私は後輩君にリーチをやめて欲しいだけなので、それ以外の方にはちゃんとリーチ宣言して欲しいんだけど。
そして次の局。
後輩君がリーチせず、私は落ち着いて手牌を整えることができた。
こっそりテンパイ。ダマだけどロンアガリで満貫は確定!
余裕綽々で牌を切る。
「ロンです!」
「……」
宣言したのは後輩君だ。
やればできるじゃないか。お姉さん嬉しいぞ?
でもどうせ
「中ドラ3です!」
なるほど。ドラの中が場に出てなくて誰が抱えてやがるんだと思ったらお前か。
お姉さん嬉しくないぞ?
その日、もう誰もリーチをかけることなく黙々と進行した。ヤミテンバトル。
振り込むのは何故か私ばかりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます