十三巡目

 緑一色リューイーソー事件から一週間が経過した。

 その場は結局、さすがにゲーム成立は難しいという判断となり(主な理由、私が狂乱したため)、収支の計算はなくなった。


 なるほど、毎回、狂乱すればいいのか。


*****  *****  *****


 卓を囲むはいつものメンバー。

 私の親で迎えた東一局は、誰もアガらずに流れた。

 珍しいのは後輩君がテンパイしていたのにリーチをかけなかったことだ。


 東二局。その謎は後輩君の質問タイムにより解き明かされる。


「先輩。テンパイしました」

「おめでとう」

「でもリーチ以外に役がありません。こういうときはどうすればいいですか?」


 前回みたいに緑一色でアガればいいんじゃないですか?

 そんなふうに皮肉の一つでも言いたくなるが、後輩君相手じゃ通じない。というか緑一色は私の自滅という説があるので、あまり責めても仕方ない。


 でも簡単に答えるのも癪なので、つーん、と黙ったまま反応しないことにする。


「あ、先輩。怒ってます…?」

「…………」

「怒ってる…怒りますよね、全部聞いてしまって。分かりました。自分で何とかします」


 おお、自分で考えるとは成長したな。

 そう思った、その3秒後くらい。


「やっぱり分かりません。教えてください」

「どちらかというと怒らせようとしてるよね?」


 我慢できずに返事してしまう。

 私の負けである。


「で? 今日は何?」

「あ、だからリーチ以外に役がないとき、点数を底上げする方法ってないですか?」

「うーん。手が変わるのを待つか。あとはオープンリーチという手もあるかな?」

「オープンリーチ…って、待ち牌を晒すやつですよね…」

「そう。オープンリーチは二飜リャンハンだからね。役なしでもオープンリーチ一発ツモとか、オープンリーチツモドラ1とか、まあまあの役になるの」

「なるほど…」


 確実に後輩君の破壊力を増加させる手を教えてしまったなぁ。


「じゃあオープンリーチします!」


 後輩君のオープンリーチを見届け、私のツモ順。ああ、よくあるパターンだ。

 私もテンパイした。後輩君は七萬チーワンのペンチャン待ち。私はリャンメン待ちだから追っかければ勝てる可能性が高い。


「じゃあ私もオープンリーチします」


 西を切って、牌を横に切る。


 だが、それから三巡してロンの宣言をしたのは後輩君だ。

 もちろん振り込んだのは私。


「オープンリーチドラ2です!」


 きっちり裏ドラも乗せてくる。

 まあまあ打撃は大きい。


 だがここで引くわけにはいかない。先輩としてたまには威厳を見せないと。


 二ラウンドが開催されたのは東四局だ。後輩君が親である。


「オープンリーチします!」

「オープンリーチするね」


 先手は後輩君のオープンリーチ。またもペンチャン待ち。

 後手は私。今回もリャンメン待ち。


 巡目がいくつか回ったところで、やはりロン宣言したのは後輩君だった。

 もっちもちのロンロンで振り込んだのは私。


「オープンリーチ断么タンヤオです!」


 ドラが乗らなかったのは不幸中の幸いか。でも後輩君ら親なのでダメージは小さくない。


 しかしまだ東場が終わっただけ。まだまだ逆転はできる。


 南場に移り、私が親の一局目はあっさり流れる。そして南二局、三度目の対決が始まる。

 






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