第14話 色々と話しこむ

「そんな貴重な情報を俺達に伝えて良かったのかい?」


 ライナルトがユーフェを見ながら確認をしてくる。マグナアルカナでは初心者が最初にする小遣い稼ぎの方法であり、ユーフェからすると貴重情報などではなく、当たり前の知識であり伝えても特に問題はなかった。


「ええ。別に構いませんよ。誰でも知っている小ネタですから」


「いやいやいや! 誰でも知ってないから! この情報だけでギルドから補償金が出るレベルだから!」


 軽く笑いながら問題ないと言い放ったユーフェに、ライナルトが速攻でツッコミを入れる。それほどユーフェの情報には価値があった。今までは偶然の産物として魔石が入手できていたが、それが確実に手に入るかもしれない情報なのである。


「え……。そんな情報だとは思っていなくて……ごめんなさい。じゃあライナルトさん達だけに教えるって事にしましょうか。それがいいですよ。ねっ!」


「!?」


 小さく舌を出しながら謝罪したユーフェが、いい事を思い付いたとライナルト見上げるようにして微笑みながら耳打ちする。突然、近付き耳元で囁くよう伝えてきたユーフェにライナルトは頬を染めてそっぽを向くとブツブツと呟いた。


「ずるいだろ。そんな事をされたら何も言えなくなるじゃないか」


 それまで主となって話していたライナルトが赤い顔で撃沈したのを見たイワンが、軽くため息を吐きながら交代するように会話を始める。


「魔石の入手方法は俺達からギルドに報告でいいか? もちろんユーフェの名前は伏せるし、報奨金は全てユーフェに渡すから」


「いいですよ。それと報奨金なんて要らないですよ。それよりもスライムの魔石なら買い取ってもらえそうですか?」


 ユーフェの問いかけにイワンが小さく頷くと、スライムの魔石なら銀貨1枚になると伝えた。その金額がどれくらいか分からないユーフェだが、宿屋なら食事付きで10日は泊まれるとの事であった。


「えっと。つまり宿屋に泊まろうと思うと2食付き銅貨10枚って事ですかね?」


「ああ。そうなるな。もっと安い所も高い所もあるけどね。俺達が定宿にしている所なら銅貨3枚だが、ユーフェのような可愛らしい女の子が泊まるなら、鍵付きの宿にした方がいいだろう。さらわれたら大変だからな十分に注意した方がいい」


 イワンの説明にユーフェは苦笑しながらも頷く。自分の容姿をまだ見ていないのもあるが、イワンは自分を子供だと思っているからの発言だと感じていたからである。


「分かりました。じゃあ当面の生活をスライムの魔石を換金してもらっていいですか? 10個換金してもらったら、しばらくは生活に困りませんね」


 そう言いながらアイテムボックスからスライムの魔石を取り出してイワンに手渡す。受け取ったイワンが何か言いたげな顔をしているが、何も言わずに手を差し出したままなのでユーフェはイワンと握手をする。


「違う違う! シルバーウルフファングの毛皮もよかったら換金してこようか?」


 小さい手で握手をされたイワンだったが、ライナルト達から白い目を向けられ赤い顔をすると慌てて手を振って素材が欲しいと伝える。


「なんだ。そうだったんですね。ちょっと待ってくださいね。1枚でよかったですか?」


「ああ。1枚で頼む。それ以上はギルドに混乱が起こるからな」


 依頼の通りシルバーウルフファングの毛皮を取り出して手渡す。


「ちょっと待っててくれ。ギルマスと話をしてくる」


 毛皮と魔石を持ったイワンが部屋から出ていく。しばらくは戻ってこないとの事で一同はお茶を飲みながら世間話をしていた。


「へー。そうなんですね。依頼を受けるとランクが上がると、そんなメリットが」


「そうなんだよ。早くユーフェちゃんもランクを上げて一緒に冒険をしようよ」


「ははは。また考えておきますねー」


「その言い方はくんでくれないじゃーん!」


 ユーフェが笑いながら答えるとライナルトが嘆き悲しむ顔をする。それを呆れた表情でロアとマーティスがお茶を飲みながら眺めていた。


「何やってんだよ」


 ライナルトの格好を見て換金が終わって戻ってきたイワンが不思議そうな顔をする。そんなイワンの態度を気にする事なくユーフェが声をかけた。


「どうでした? 高く売れましたか?」


「ああ、安心してくれ。使いやすいよう銀貨と銅貨にしてもらったぞ」


 そう言いながらイワンは貨幣が入っている革袋をユーフェに手渡すのだった。

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