第11話 ギルドで色々と確認される
ギルドでの喧騒を受け、健亮ことユーフェも一緒に笑っているうちに、気持ちが軽くなっていくのを感じていた。ライナルトの背後から恐る恐る出たユーフェは、自分に視線が向いている冒険者達に視線を向け、ぎこちなく頭を下げると挨拶をする。
「は、初めましてユーフェです」
本人としては自分の姿が女性なので、どう対応したらいいのか分からないため、おどおどしながらの挨拶だったが周囲の冒険者達にとっては心を撃ち抜かれる仕草であった。
一瞬の静寂の後、野太い歓声が上がりユーフェの周囲に冒険者達が群がると次々に自己紹介を始める。
「可愛い！ 俺の名前はアレクサンダーです！ いつでも助けるから何でも言ってくれよ」
「スティファンだ。やっぱりイワンは犯罪者じゃないのか？ こんな可愛い子を連れ回すなんて。もし怪しい事をされそうになったら連絡をくれよ。すぐに助けに行くからな」
「俺も犯罪だと思うよ。ちなみに俺の名前はアルバードだ。ギルドマスターにイワンが怪しいと連絡しておくから、すぐにおじさんに連絡をくれよな」
「「「賛成だ！」」」
「『賛成だ！』じゃねえよ！ 散れ散れ！ これからユーフェと話をするんだからな！」
ユーフェを取り囲むように自己紹介をしている者達をイワンが追い払っている最中に、女性の冒険者達がユーフェを取り囲みギルドの一角に連れ去っていく。
「ちょっと、この子可愛すぎるんだけど？ どう？ お姉さんと一緒にパーティーを組まない？」
「ほら！ 髪を触ってみてよ。貴族様みたいにサラサラなのよ」
「イワンやライナルトに何かされそうになったら、いえ、そうなる前にお姉さん達に言いに来なさいよ」
「本当にお人形さんみたいだねー。可愛過ぎて連れ去りたくなるわ」
「困った事があったら受付嬢に連絡してくれたら、お姉さん達がすぐにくるからね」
身体をもみくちゃにされているユーフェが硬直していると、イワン達がやってきてなんとか救出をしてくれた。女性陣からブーイングを浴びているイワン達だったが、後日に話をする場を用意するとの事で納得してくれた。
しばらくすると冒険者達はそれぞれが依頼を受け、ユーフェに手を振りながら出発していく、そしてギルドは静けさを取り戻していった。
「皆さん凄いパワフルですね……」
「まあな。あれくらいじゃないと冒険者なんて名乗れないからな」
つい先ほどまでマグナアルカナの世界に居る事に動揺が隠せなかったユーフェだったが、怒涛のイベント発生ですっかり落ち着いたようであった。
ユーフェの顔に悲壮感がなくなった事に気付いたイワン達は、安堵のため息を吐きながら会話を始める。
「よし。飲み物を頼んだからゆっくりと話をしようじゃないか」
「今後どうするつもりだい？」
イワンとライナルトから心配そうに問いかけられたユーフェだが、状況を確認するためにも1人になる時間が欲しいと思っていた。
「そうですね。しばらくは自分がなぜここに来たのか。なにをすればいいのかを考えようと思います。ギルドに登録して冒険者として、薬草集めを中心に採取でお金を稼ぎますよ」
「そうだな。俺達が面倒を見れたらいいんだろうが、そうも言ってられないからな」
「ああ。俺たちがAランクまで昇格していたならパーティーハウスが与えられるから、そこでユーフェちゃんには待っててもらえたんだけどなー」
イワンの言葉にライナルトが心底残念そうに発言していた。そこまで世話になる気のなかったユーフェだが、イワンとライナルトの気遣いに感謝の言葉を述べる。
そしてアイテムボックスに入っていた素材の一部を取り出すとイワンに手渡した。
「今日は本当にありがとうございました。これはお礼です。また困った事があったら相談に乗ってください。それも含めてのお礼ですから受け取ってくださいね」
ユーフェがアイテムボックスから素材を取り出した事に驚いていたイワン達だったが、その素材が何か分かると驚愕のあまり全員が立ち上がるのだった。
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