月下美人
結城恵
月下美人
■
彼女に死が宣告されてから、一体どれほどの時が流れただろう。
余命幾許も無い、なんて。御伽噺の世界だった。現実になんて起こるわけが。ましてや自分の周りなんかで、なんてあるはずも無い。
――――そう、思うことだけは、許されたはずだ。
■
コトコトと、林檎を切っていく。酸化するのが早くなるから、かつら剥きはしない。まず半分に。さらに半分に。半分にを繰り返して、適当な大きさになってから皮と芯を取り除く。
さらにより分けて、キョウコに渡す。俺は手づかみで食べるから、爪楊枝は一本だけ刺さっている。
『いただきます』
二人してそういうと、切った林檎を各々の口に運ぶ。
「やっぱり冬は林檎がおいしいね、ユウイチくん」
「ああ、キョウコのおばさんに感謝しないとな」
この林檎は、キョウコの母が「あまってるから」といって病室に持ってきたものだった。
林檎は、キョウコの好物でもある。きっと「あまってる」なんて口実なんだろう。
「……うん」
キョウコは浮かない顔でうなずいた。キョウコの母は、林檎や蜜柑などの果物を持ってくるときでさえ、手紙はおろか、顔すら病室に見せない。受付の看護士に見舞いの品を渡して去っていくだけという。
俺にはキョウコのおばさんの気持ちはわかる。
客観的に見ればそれは冷たい行動に見えることだろう。病魔に冒された娘を励ますことも助けることもせずにただ品物だけを置いて立ち去っていくのだから。
でも俺はこうも考えられると思う。
たった一人の自分の娘だ。その娘が「もう治る見込みは無い」と言われて、はたしてその娘と平静に、元気よく、励ましながら助けながら生きていくことができるだろうか。それは考えれば考えるほどに、無理な話だった。娘の見舞いをすること以上に、回避し得ない娘の死、という現実に耐えることが出来ないのだろう。だからこその逃避。そしてせめてもの贖い。
「……気にするな。おばさんも辛いんだよ」
「分かってるよ。そもそも、私が言い出したことだもんね」
いつかキョウコは、自分の母に向かって「もうこないで」といった。叫ぶように、ではなく、囁くように。このままではお互いを潰しあってしまうだけだ、と言葉に出さずとも二人は分かっていたのだろう。確かにこの現状は、辛いだろうが、潰れない。
「ユウイチくん」
見えているのか見えていないのかわからない、ぼう、とした目で俺を見上げてくる。
「お散歩、連れてって」
■
チキチキと音を立てながら車椅子はいつものコースをゆっくり進む。座席に座ったキョウコは、空を見上げながら色々なことを話しかけてくる。
「空がおっきいね」
最近キョウコは口癖のようにそう言う。冬の空は高い、とはよく聞くが、それと同じような意味なのだろうか。
「だってユウイチくん、見てよ」
と言うと、キョウコは通りを歩く人々を指差してみせた。
「あそこまで、一体何メートル離れてる?」
聞かれたので思案してみる。一息で走れるような距離ではなさそうだ。百メートルはゆうに越えていそうだ。
「……ええと、二百メートルくらいかな?」
そう答えると、今度は上を指差して「あの鳥まではどのくらい?」と聞かれた。同じような距離にあるように思う。次はさらに向こう側の飛行機を指差して、キョウコはこう言った。
「あの飛行機の中に、何人の人が入ってると思う?」
……キョウコの言いたいことは良く分からない。むずむずしたこの感覚を取り去るべく、俺は素直にキョウコに聞く。
「結局何が言いたいんだよ」
「おっきな空から見たらね、人間は米粒みたいだ、ってよく言うけど、そうじゃないんだな。もう見えなくなっちゃうんだな、って言うことなんだけど……」
「詩的すぎて俺にはさっぱりだよ」
「要するにね、人間なんてちょっと離れたらもう見えなくなっちゃうんだ、って思って。だって見えなくなるには、たった数百メートル離れるだけでいいんだもん。車だったらたった5分もかからない距離なのに、もう米粒どころか、見えなくなっちゃう」
「なるほどな。そう考えると、人間って俺たちが思ってる以上に小さい存在なんだな」
本当に、キョウコの言ったように考えると、人間がいかに小さく、宇宙とは膨大かが分かる。きっとかぐや姫は月になんて帰らなくても、たった少し籠に乗っておじいさんとおばあさんの元から離れるだけで、離れ離れになれたんじゃないかと思う。友情や恋愛に距離は関係ない、というのは嘘でも、別れに距離は関係ない、ということならば信憑性がある。
「……キョウコは、いつもそんなことばっかり考えてるのか?」
気になって聞いてみた。それじゃああんまりに――――――切なすぎる。
「流石に今はそんなことないよ。前はちょっと、やっぱり色々考えちゃったけどね」
そういう彼女の目は沈んでいた。それは死に対する悲しみや憤りや諦観ではなく、まわりに色々と迷惑をかけた、と悟りきっている目だった。
―――――-やめてくれ。
「……突然そんなこと思いつくんなら、きっと小説や詩を書いたら売れるんじゃないか? もし本が出たら、俺なら絶対買うね」
我ながら安っぽい賛辞だ。嘘ではないが、本心でもない。スカスカの言葉。
こんなものを貰った方は、余計に苦しくなるだけだというのに…………。俺はまだわかっていないのか。
「あはは。ありがとう。でも私、飽きっぽいからきっと続かないよ」
「そうか。それは残念だな」
実際残念だとは感じた。たぶん『続かない』の意味を深く読みすぎてしまったからだと思う。
「でもその代わりに、ユウイチくんがまた散歩に連れて行ってくれたら、そのときにお話してあげる。それじゃあ駄目?」
「それは名案だな。また散歩に行く楽しみが増えた」
そういえばまだ、本来の散歩の目的を達成していない。目的地まではあと少し。
チキチキと音を立てながら、車椅子は進む。何かあっても病院にすぐ戻れるほどの散歩。その終着点は、忘れ去られた工事現場だった。
ひょうひょうと、冬の冷たい風が吹く。けれどそれは、つまり空に近いということ。自然の空気に一番で触れられるということだ。暖かい格好はしているものの、やはり寒いのが難点だが。
ここはまるで、時間が止まっているような世界だった。
キョウコはその不思議な空間が好きで、寒さを押して足しげくここに通っている。
この工事現場が何の目的で作られ、そして忘れ去られたのかは定かではない。しかし、何か目的があったはずのここには、もう忘れ去られた工具が積まれているだけで、回収すら忘れられてしまっている。その『確かにあったはずのものが無くなった』という感覚は、人の死に通じるものがあると思う。きっとキョウコも。
「……やっぱり寒いね」
「ああ、寒いな」
「けど暖かいよ」
「…………そうだな」
感覚を共有する温度。人と人の繋がりなんていう目に見えないものだけど、サーモグラフィーには映らなくともそこには確かに温度がある――――とキョウコの世話をするようになって思うようになった。
「『Freude……(歓喜よ……)』」
ここに来ると、キョウコはいつもこの歌を歌う。鎮魂歌に『歓喜の歌』は無いだろう、と思っていたが、曰く「忘れ去られたこの場所を、少しでも明るくにぎやかに出来ればいいな」と思っているのだとか。たまにキョウコの思考回路は意味が分からない。
「『Freude, schöner Götterfunken,Tochter aus Elysium,
(歓喜よ、美しき神々の煌めきよ、楽園から来た娘よ、)
Wir betreten feuertrunken, Himmlische, dein Heiligtum!
(我等は炎のような情熱に酔って、天空の彼方、貴方の聖地に踏み入る!)
Deine Zauber binden wieder, was die Mode streng geteilt;
(貴方の御力により、時の流れで容赦なく分け隔たれたものは、再び一つとなる。)
alle Menshen werden Brüder, wo dein sanfter Flügel weilt.
(全ての人々は貴方の柔らかな翼のもとで兄弟になる。)』」
キョウコはサビしか知らないので、ここで止まった。俺は静かに拍手を贈る。
「えへへ。ありがとう。私この歌、ここしか知らないけど大好きなんだ」
「そうか。明るい曲が好きだもんな」
「うん。前に受けた音楽の授業の時に、ここだけ歌詞を習ったから覚えたの。この詩も、希望に溢れていて好き」
希望を好むという、彼女の顔は、ちゃんとした笑顔だった。
俺はちゃんと笑えてるだろうか。彼女を心配させてはいないだろうか。
でも。神の元へ、違うところへ行ってしまう自分の女を、笑って見送れる男なんているわけが無いんだ。
■
ベートーヴェン以外にも、最近の流行曲やウインターソングを二人でひとしきり歌った後、再び病室に戻った。
「あ、花が……」
窓辺に置かれた月下美人の花が、今にも咲きそうなくらいにつぼみが開きかけていた。
たった一輪、何かを育てたいというキョウコの願いに、俺はとびきり珍しいこの花を持ってきた。最近ではそう珍しいものではなくなっていると聞いたが、それでも目新しいものには違いないだろう。一年に二度しか咲かないという美しき花。それが今にも咲こうとしていた。
「病院の中でも育つもんだな。キョウコが頑張ってお世話したおかげかな」
「…………うん」
言って振り返ると、口元を押さえてぼろぼろとキョウコが泣いていた。自分の頑張りが報われたことがよっぽど嬉しかったのだろう。俺から見てもよく頑張ったと思う。繊細なこの花を咲かすためには、技術はいらないが根気が必要だ。「自分が頼んだものだから」と頑として俺に世話を譲らなかっただけはある、と思う。あまりに健気で、ついキョウコの頭を撫でていた。
そのまま静かに時が流れていく。こうしていると、時の流れる音、なんてものが聞こえてきそうだ。ほら、向こうの方からカツカツと…………。
ガラリ、とドアが開く。
「あら、お邪魔だったかしら?」
妙に明るく、女看護士が言う。若くも無く、さりとて老けてもいない。こういうのを妙齢というのだろうか。麗人かどうかはさておき。
「ミズキさん、空気読んでよー」
「ごめんごめん」と、キョウコの担当看護士であるミズキさんは軽く舌をだして謝る。彼女のように、人が死に掛かっているというのに軽薄な態度を示す人は、大抵の場合において嫌がられ、罵られるが、俺たちの場合は違う。むしろ死を受け入れて、それでも毎日楽しく過ごして生きたい、キョウコはそう思っているからだ。
「あら、すごい。咲きかけてるじゃない」
ミズキさんは、窓辺の月下美人を見て言う。花に詳しく、キョウコは彼女から月下美人の世話の仕方を教わっていた。
「キョウコちゃんよく頑張ったわね。えらいえらい」
ぽむぽむ、とキョウコの頭を軽く叩く。そこで突然「はっ」と声をあげた。
「なるほど、さっきのはこういうことだったのね」
自分も同じことをして気づいたようだ。俺と一緒の行動を取ったミズキさんを見ると、なんだかついおかしくて笑ってしまった。
「ふ……ふふ、ははは、あははは…………」
「え、ちょっとユウイチくん、何がおかしいのよ」
「ふふ……。だってミズキさん、俺と同じようなことしてんだもん……ふふふ」
「あ、本当、さっきのユウイチくんと一緒だ。あはは……ミズキさん、可笑しい……あはは」
気づいてつられて、キョウコも一緒に笑い出す。
「ちょっと、キョウコちゃんまでそんなこと言うの? お姉さん傷ついちゃうなあ」
「って、傷つくってどういうことですか、なんだか俺が駄目人間みたじゃないですか、それじゃあ」
「あはは、ごめんごめん。別にそういう意味で言ったつもりは無いんだけど。いや、正直立派だと思うよ、君は」
そう言われると俺も救われる。学校を辞めた甲斐があったというものだ。
「始めは私も反対したんですよ、勿論」
「キョウコちゃん、もう何度もその話は聞いたわよ」
なんだか自分の話を他人にされるというのは、酷く居心地が悪い。ただ、この感覚は――――嫌いじゃない。
「この年で『キョウコ以外何もいらない!』なんていえるのは、お姉さんは凄いと思うわよ」
凄く熱のこもった演技でそう言われた。別にそんなに熱くなって言った覚えはないが、どうやら分からないのは本人だけ、ということらしい。
「そんな風に言ってませんよ。ただ、俺は残されたキョウコの時間を沢山共有したいってだけで」
「あー、いいのよいいのよ。若い子はやりたいことをやって。ユウイチくんはきちんとバイトもして働いてるから誰にも迷惑かけてないしね」
「始めは凄く迷惑かけてると思ってたんです。だけど、ユウイチくんが色々してくれるうちに、それが凄く嬉しくて。ああ、素直に喜んでいいんだ、って思って。それからはずっと甘えっぱなしなんですけどね。えへへ」
「……キョウコちゃんは、ユウイチくんのことが本当に好きなのね。なんだか私までドキドキしてきたわ」
――――聞いてる方の身にもなってくれ、とはいえなかった。何回目だろう、こんな話をされるのは。自分のことを良いように話されているから、勿論悪い気はしないが、居心地の悪さはどうにもしがたい。
「……でね、…………で、……だったんだよ」
「うわあ……そうね…………ええ? …………そうなの」
二人が話している間、俺はずっと外を見ていた。別に仲間はずれになって寂しいとか、そんな子供じみた感傷ではなく、単にこの病室から見える景色を記憶していたいと思ったからだ。
窓辺に置かれた月下美人。
夕暮れに染まるつぼみ。
窓の向こうには無限に広がる空。キョウコ曰く、「おっきい空」。
病院周辺は静かな木々に囲まれ、落ち着いた雰囲気がする。
その向こうには、まるで別世界のように繁華街が広がっている。なるほど、キョウコの言うとおりだ。遠すぎてここからじゃあ一人の姿も見えない。
たったそれだけ。言葉に表してしまえばなんて短い。そんな世界で俺たちは生きて――――――死んでいくのだろう。
未だ二人の話は尽きない。俺の思考はさらにその深みを増し、自己と世界の境目に埋没していく。
世界の大きさは等しくない。キョウコに空の大きさを説かれてからそう考える。
地球から見れば人間は塵みたいな存在で、宇宙から見たら地球だって塵みたいな存在で。
でも人間から見れば反対に地球は大きくて、宇宙なんか果てしないほどに大きい。
世界なんてのは、自己が認識しうる範囲を差すんじゃないんだろうか、と思う。
海外旅行にしょっちゅう行く人は、北海道から沖縄に移動したって遠いと感じることは少ないんじゃないだろうか。
反対にずっと家に引きこもってた人は、たった二駅三駅離れるだけで新鮮な気持ちになれる。
同じように考えて、人間関係もそうなんじゃないだろうか。
たとえどんなにちっぽけで、同じような人間だとしても、それを大切に思う側からは、それは唯一の存在で。
どれほど個性的で素晴らしい人間だって、万人に好かれるわけでもない。個人の趣味、というより自分が置かれている位置が原因だと思う。
世界は椅子取りゲームなんだ。
はみ出した奴は、死ぬ。
今まさに、彼女の『椅子』が奪われようとしている。
誰も気づかない。それはそうだ。なんてったって世界には六十数億の椅子があって、はみ出す奴なんかそのたった数パーセントなんだから。
でも俺は気づいた。気づいてしまった。キョウコが座れるはずだった『椅子』は、もう無くなった。
あとは音楽が止まるのを、待つだけ。
俺はそれまでに考えなければいけない。
――――――一つの席に、二人で座る方法を。
■
二人の話が終わった頃には、もう外は暗くなっていた。
「そろそろご飯運んでくるわね。あ、その前に採血しなきゃ」
ミズキさんはそう言うと、カツカツとかかとを鳴らして帰っていった。
「……ごめんね、置いてけぼりにしちゃって」
キョウコが言ってきた。今更気にすることなんて無いだろうに、いつまでも変わらないこの律儀さは「個性」と言うのだろうか。
「いいや、色々考えてたからな。お互いに楽しかったから問題ないよ。気にするな」
「考えるのが楽しかったの?」
「おかしいかな。頭をめぐらせるのって、俺は嫌いじゃないんだが」
「ふうん」とキョウコは言う。実際思考するのは嫌いではない。落ち込んだり、気分の悪い時でさえ、自己の中に埋没することで、その気持ちに整理を付けられるからだ。所在が明らかでなかったり、頭の中が混乱していることこそが落ち着かない。
再びカツカツと音を鳴らして、ミズキさんがやってくる。そういえば採血だとか言っていたか。
「はいお待たせ。大好きなお注射の時間よ」
「私は注射嫌い」
そう言いつつも、慣れた仕草で腕を巻くって、ミズキさんのほうに差し出す。ミズキさんの方も、プロらしい手際のよい手つきで止血・消毒・注射を行う。嫌がっていたキョウコも、そのくせ顔色一つ変えてない。それがなぜか、とても悲しかった。
「ハイおしまい。いい子だったわね」
消毒液を拭い、止血用の絆創膏を貼り付けると、ミズキさんはそう言って部屋を出て行った。
手に持っていたキョウコの血は、自分の記憶にある自分の血の色よりはるかに薄い色をしていた。
あんなものを見れば誰でも気づいてしまう。
キョウコはもう、長くない。
今夜中に俺の思考に決着をつけなければならない。時は一刻を争う。こうしている間にも、音楽は終焉に向けて流れ続けている。
「……くん? ……ユウイチくん?」
「え、あ、ごめん。ぼうっとしてた」
「働きすぎじゃないの。たまには休んでいいんだから」
そんなことは無いはずだ。きちんと食事は取っているし、労働時間は確かに長いけど、適度に休みは入れている。現に、今日明日とまるまる休みを取っていることだし。
「あ、今日のご飯は?」
と、急に話題を変えられた。そういえばもう夕食の時間を少し過ぎている。おしゃべりが過ぎたのか。ミズキさんの給料が減らなければ良いが。
コンコン、と丁度部屋をノックする音が聞こえた。各部屋を回って食事を運んでくる人がやってきたようだ。
「あ、ユウイチくん、お願い」
「任せろ」
部屋のドアを開け、食事係の人からコンテナの中のトレイを受け取る。病院食のわりには、やけにおいしそうだ。
「お待たせいたしました、姫」
「わぁ、野菜炒めだね。おいしそう」
それじゃあと、俺も自分で買ってきた弁当のふたを開ける。まだわずかに暖かいが、やはり冷めてしまっているようだ。
「……何度病室にレンジがあれば良いと思ったか」
電磁調理器だから、様々な医療器具に影響を与える恐れがあるため、置かれることはありえないと分かってはいるのだが、ないよりあるほうが良いと思えるのは、持ち得る者の特権だろう。
「いつもどおり、私のご飯をちょっと交換、だね」
「なぜかここの病院食はうまいからな」
温かいご飯と、冷めたご飯を半分ずつ交換する。あとは俺の鶏肉と、野菜を少し。キョウコの病気は食事制限の必要はなかったらしい。
『いただきます』
一通り分けきったところで、二人で手を合わせて『いただきます』をした。一人で食べるならともかく、誰かと一緒に食べるんなら、一緒に食べてる、というのを手軽に実感できる方法だ。『いただきます』を考えた故人は偉大だと思う。
もぐもぐと、咀嚼する音すら聞こえないほど、静かな食事が続く。
この病室は一人部屋だ。テレビも点けてないし、会話も無いから、自然と静かなままだ。
けれど突然キョウコが口を開き、その静寂は破られた。
「ユウイチくん」
箸を置き、うつむいて表情は分からない。けれどきっと、神妙な顔をしてるんだろうと、声の質から分かった。
俺は黙って続きを促す。
「………………今日は、部屋に泊まっていってよ」
俺は特段驚かなかった。ただ、悲しさだけが胸に残った。
俺がキョウコに近づく死を感じ取った以上に、キョウコは自分の死を自覚しているのだろう。でなければ突然、こんな提案をするわけが無い。
ああ、時間が無いのはキョウコも一緒だ――――――。
「ばれないのか」
心中を悟らせないように、出来るだけ装飾の無い言葉で肯定する。今は少しでも、キョウコのそばに居たい。だから、申し出を断る理由なんて何も無い。
「……安心、してよ。…………私はこれでも、この病院に詳しいんだから」
ようやく顔を上げて、笑顔を見せてくれた。
よかった。その笑顔は、きっと本物だから。
■
食事を終えて、食器を片付ける。ふと窓の方に目を向けると、小さくつぼみの開いた月下美人が見えた。まるで窓の向こうの満月の力を受けたかのように、それは突然の出来事だった。
「花、咲いたな」
「うん……」
その旨を簡潔にキョウコに伝えた。返事も簡潔だったが、その後に広がる沈黙は俺にとって暖かいものだった。
ぱちり、と照明が落ちる。消灯時間にはまだ早いはずだが。
ああ、満月に照らされて、月下美人は美しく咲こうとしている。
不意に後ろから抱きすくめられた。ベッドに座った体勢から、キョウコが俺に抱きついていた。
二人の間に言葉は無い。沈黙すらも存在しない。完璧な無音。
無音を切り裂く吐息。俺は体勢を入れ替えて、キョウコの方を向く。唇が触れた。
最初は触れるだけ。もっと深く。決して乱暴にはせず、ゆっくり圧迫する。
口を開く。舌を絡める。
――――――あれ、キスって、こんなに乾いてたっけ。
唇は辛うじて柔らかいが、水分は感じない。口の中でさえ乾いていて、舌先だけが湿っている。妙な感覚。
声は出ない。出さないのではなく、出ない。
吐息が煩いほどに聞こえていた。きっとお互い。
キョウコの体は冷たい。指先も、頬も、唇も。だから暖かくしてやろうと、抱き返した。頬を包んで、唇を深く沈め、舌を伸ばした。
水の音がする。少しずつお互いの口内が潤ってくる。けれど、どうしても暖かくならない。
不意に、キョウコは唇を離した。
「……えへへ、キスなんて、久しぶりだね」
照れて笑うその顔も、白い。血液が薄いせいか、体が冷たいせいかは分からない。けれど、暗闇ですらなお、白く、つつましく輝いてさえいることだけは分かった。
俺は何も答えずに、ベッドへ上がる。そのまま横になって、またキョウコを抱きしめる。体中で。包むように。
「……ユウイチくん、知ってる?」
うめくように、キョウコが喋る。
「月下美人って、食べられるんだよ」
そう言って、今度はキョウコから、唇を重ねてきた。遠慮がちに、一生懸命に。
再び離すと、また話を続ける。
「私は、それが羨ましくて、月下美人を育てることにしたの」
抱きしめているから、キョウコはどんな顔で、どこを見ているかは分からない。
「年に咲いても二度しか咲かない、けれど、咲かせた花は、しぼんでさえ食べられる」
「…………」
「何も無駄にならない。美しく、美味で、そして何より、儚くとも――――力強い」
無い力を込めて、俺を抱く腕を締め付けてくる。儚くとも力強い、とはこういうことか。圧迫なんて感じないけれど、それが逆に、心を締め付ける。
「だからね――――私を『食べて』欲しいな」
心臓の音が聞こえるようだった。服と皮膚と脂肪と筋肉に阻まれているはずのその場所からは、けれど確かに、熱い鼓動を感じた。
「…………念のため言うけど、そのままの意味じゃないよ」
俺はキョウコの上に覆いかぶさるように、体勢を変えた。横顔に月明かりが差して、その顔はまるで月下美人のように白く、美しかった。
「馬鹿。雰囲気ぶち壊しだ」
唇を重ねる直前に見た顔は、泣き顔のような笑顔だった。
俺たちは病室で体を重ねた。
卑猥に彩られた偽者ではなく、きっと本物の行為。
声をあげる必要も無い。吐息の温度だけで、お互いの全てが伝わった。
実際、体を抱く心地よさは無い。どこまでも冷たく、やせっぽちなキョウコの体は、女性的な柔らかさや暖かさを失っていた。
それでも俺は満たされた。壊さないように大事に、崩れないように慎重に、彼女の体を『食した』。
綺麗だったと思う。自分はどうだかしらないが、月明かりに照らされた彼女の裸身は、女神を思わせるほどに神秘的で、性欲を忘れるほどに神々しかった。
最後にお互いを強く抱きしめて、行為は終わりを告げた。
お互いに体を清め、二人でベッドに横たわる。
再び窓に目を向けると、完全に花が咲いていた。
「わあ…………綺麗。月と一緒に月下美人の花が見られるなんて」
「……いや、よく見てみろ。月だけじゃない」
さらさらと、雪が降っていた。この地方では珍しく、積もりそうなほどに。
「雪月花、だね」
「ああ。文字通りな。贅沢にも程がある」
俺たちはしばらくじっとして、雪と月と花の織り成す幻想に浸っていた。不意に、けれど空気に染み渡るようにゆっくりと、キョウコが口を開く。
「最後のお願い、言ってもいい?」
■
チキチキチキチキ。
まるで体が抉られたかのような痛みを感じた。『最後』なんて、まさか聞くことになるとは思わなかった。
チキチキチキチキ。
俺たちは今、病院の外にいる。時刻は深夜。当然見つかったら怒られるで済むはずもない時間。
チキチキチキチキ。
それは、いつもの散歩コース。誰もいない、空に近い工事現場跡に向かうまでの、慣れた道のり。
ざぁざぁと、木々がざわめく。チキチキという車椅子の音を掻き消すかのように。
チキチキチキチキ。
丘も谷もあるわけではないが、それなりに高低のある坂を上り下りして、目的の場所に着いた。当然だが、誰もいない。
「見て見て。ほら、月があんなに近くに見えるよ」
空を指差して、キョウコが言う。勿論月が近くなったわけでもないが、他に遮蔽物の無いここから見れば、なるほど相対的に大きく見えるから、近くなったと言えよう。
「ああ。金色に光ってる。まるで夜空の王様だ」
夜空の王様から降り注ぐ光は、雪に反射してキラキラと輝いていた。まるでここだけ現実から隔離されたような、窓辺から見ていたのよりもさらに度を増した、幻想。
月はある、雪もある。月下美人の代わりの花は、車椅子の上に咲いている。
「ユウイチくん、ほら、降ろして」
車椅子に咲いた花は、その専用席から降ろしてとせがんで来た。ここまできたら何をするのも一緒だ。何でも聞いてやろう。
キョウコの軽いけれど重いからだを引っ張りあげて、地面に寝かせる。一人で地面に転がすのが忍びなかったので、俺も一緒になって地面に寝転がった。
「ああ。私、幸せ」
声が震えていたから、泣いているのかと思ったら、そんなことは無かった。満面の笑みで、垂直に月を見上げていた。
「世界にある綺麗なものを、こんなに近くで見ながら、死ねるなんて」
―――――-絶望しかないその言葉に、俺はどうやったって希望なんて見出せない。
「今の私にはね、目を閉じたって世界が見えるよ。ほら、上には月、雪が降って、隣には……ユウイチくん」
目をつぶったまま、ゆっくりと、眠そうな声で語り続けるキョウコ。その行為の意味は、想像したくない。
「本当に幸せ。命の形を知ることで、世界の美しさがこんなにも簡単に分かるようになったのだから」
月は黄金色に輝き続ける、雪は真っ白に降り続く。そこに赤くあってしかるべき白い花は、ゆっくりとこう告げた。
「大好きだよ。ユウイチくん」
世界が静止した。
このとき俺には、地球が自転しているだとか、宇宙が膨張しているだとか、時間の流れが一切感じられなかった。降り続く雪さえ止まっているとように感じた。
呆気ない。なんて呆気ない。
人の死なんて、もっと壮絶に、もっと凄絶に来るものだと思ってた。だが、実際は全然違う。
命の形を知り、世界を美しいといった彼女は、その最後を俺に見取られながら、愛を告げて逝った。
輝く月、揺らめく雪、横たわる、白い花。
――――――ああ、狂おしいほどに美しい。
月の光に狂わされたかのように、俺の頭は冷めていた。最愛の人に逝かれたわりには、涙の一つも出なかった。
ただただ、この『絵』を美しいと感じていた。心が震えていた。
けれど、一粒の雪が、彼女の頬に落ちた。
雪より暖かい彼女の体は、雪を水に換え、水は頬を滑り落ちた。
むき出しの地面に落ちた水は、土と混じって汚らわしい泥に成り果てた。
気がついた。狂ったままに気がついた。
…………時間は、確かに流れている。
混乱した。驚愕した。この美しい世界のまま止まると思っていたのに。
明日になれば病院とキョウコの家族中で大騒ぎが起きて、葬式の準備とかがあって、キョウコの死体は焼かれて、骨は砕かれて、葬式は終わって。
明日どころの話じゃあない。もっともっと後になれば、俺は何事も無かったかのように友達と話し、生活し、キョウコのいない世界で暮らし続けて死んでいく。
「…………おええっ! げぇ! げぇぇ! げっほ、ごっほ!」
寝転がっていた体を瞬時に起こし、キョウコの側にかからないよう体をひねって吐いた。びたびたと、汚い嘔吐物が泥にまみれてさらにその汚さを増す。
ああ、世界が穢れていく。
急がなければ。ああ逝ってしまう。月に帰るかぐや姫のように、この美しき世界は消失してしまう。
遅かった。分からなかった。一人分の席に二人で座れるだけで良いと思っていた俺は甘かった。
一人分の席に、一つの世界を乗せれるほどの秘儀を探さなければならなかったのに。
神の元へ連れ去られてしまう。この世界は、キョウコは神のものになってしまう。
あああ止めろ! ふざけるな! 誰がお前なんかにキョウコを渡すもんか!!
音楽は終焉を告げる。椅子取りゲームの世界に鳴り響く『歓喜の歌』は、俺をあざ笑うかのように最高潮に盛り上がる。
『Freude, schöner Götterfunken,Tochter aus Elysium,
(歓喜よ、美しき神々の煌めきよ、楽園から来た娘よ、)』
やめろ! 止めるな! 歌うな! 楽園なんて無くていい! 問題なのは距離なんだ! 離れていく!
『Wir betreten feuertrunken, Himmlische, dein Heiligtum!
(我等は炎のような情熱に酔って、天空の彼方、貴方の聖地に踏み入る!)』
俺は狂ったように、ああ、もし辺りに人がいたなら、間違いなく狂人と断定しただろうさ。
足取りもおぼつかず、音なんてしていないのに必死に耳を抑えて音を遮断しようとしていたんだから。
ああ無意味。なんて無意味なんだろう。
工事現場の片隅に置かれた、工具入れへと近づいていく。
『Deine Zauber binden wieder, was die Mode streng geteilt;
(貴方の御力により、時の流れで容赦なく分け隔たれたものは、再び一つとなる。)』
気がついた。二回目。
世界全てを俺の席に乗せることなんて出来ない。だったら、
その世界から一部を切り取ってしまえばいい。
その世界で一番大切な要素はなんだ。
――――キョウコだ。
それはもういない。あるのは抜け殻だけ。
――――形見は。
形なんていらない。キョウコが欲しい。
――――キョウコってなんだったんだ。
あの肉塊に宿った魂。
――――じゃあ『アレ』は意味を成さない。
いいや、重要な、もっとも重要な要素を『アレ』は含んでいる
――――それは。
頭。
『alle Menshen werden Brüder, wo dein sanfter Flügel weilt.
(全ての人々は貴方の柔らかな翼のもとで兄弟になる。)』」
世界から歌が止まった。俺は工具入れからあるものを取り出して、美しい世界へと駆け寄る。世界の輪からはみ出してしまった『世界』の一部を、切り取るために。
簡単な話だ。一部なら、それを持って自分の椅子に座ればいい。
だから俺は、キョウコの××××××××××××××××××××。
■
翌朝、雪が積もった。
真っ白な雪は、冷たく、見た目とは裏腹に、重く、硬い。
そんな雪に溶けるかのように、キョウコの死体は発見された。
首が無かった。
俺は病室で寝ていた。気がついたらキョウコの姿は無く、探しに行った看護士が発見したそうだ。そういうことになっている。
探しに行った人がミズキさんでなくて良かった。極力、仲の良くなった人間のあんな姿は見ない方がいい。
首は無かったが、遺体の側にあった車椅子、遺体の服装、体型、そして薄い血の色からも、素人が見ても素性が分かるほどだったという。
警察は、死の淵にあるがゆえに自由や開放を求め、外に行ったところ、何らかの事件に巻き込まれたのでは、と調査を進めている。ちなみに、凶器に使用されたノコギリは、不特定多数の指紋がついていたため、凶器からの特定は無理だ、という話をしていたのを盗み聞きした。
それからというもの、時間の流れは慌しく、気がつけばもう、葬儀が行われていた。
警察の調査も虚しく、キョウコの首は見つかることは無かった。当日雪が降っていたせいで、犯人の足取りや、犯行時刻さえあいまいになったためだという。
首が無いから、キョウコの棺には顔を覗く穴がつけられていなかった。代わりに、笑顔で取られた写真には、山のような献花がされた。
そうそう、花といえば、あの病室にあった月下美人。キョウコが食用にも出来るといっていたので、ものはためしと食べてみた。調べてみると、炒めて食べると美味しいらしいとあったので、豚と一緒に炒めて食べた。なかなかに美味だった。
そんなことを考えていると、あっさりと葬儀は終わった。同級生だった女子がぼろぼろ泣いていたが、誰の顔も病院で見たことが無かった。
狂ったように泣いているかと思った両親は、表情というにはあまりにも感情が無さ過ぎる顔で呆然と立ち尽くして、機械の様に葬儀を執り行っていた。一度拒絶された世界に、未だに未練があるらしい。当然といえば当然だが、なぜか釈然としなかった。
当たり前の話だが、そんな感情を表に出しているはずも無く、俺も悲しい表情を作って、時折辛そうにしながら、彼女の両親や元同級生にそれらしいことをぺらぺらと喋っておいた。涙が出ない理由は、もう泣きつくしたからだとか、本当に悲しいと涙も出ないだとか適当な理由をでっち上げておいた。
キョウコの両親に、今までお世話になりましたといって、別れを告げ、俺は自宅に戻った。
「ただいま、キョウコ」
バイト生活でも、何とか一人暮らしで食いつなげるらしい。俺はアパートを借り、そこで一人暮らしを始めていた。
幸い、生活に必要なものはほとんど病室に持っていっていたので、引越し自体は楽だった。
ただ、一番大変だったのはキョウコの保存だった。
ネットや文献を読み漁って、どうにか腐らず、劣化せず保管する方法を導き出した。そのための装置もローンで購入した。
銀色のケースに入れられたキョウコは、あの時のまま目をつぶって微笑んでいた。
こんなものを堂々と飾ってあったら、捜査になんて入られたら一巻の終わりだ、と思うけど。その時はその時だ。もし見つかりそうになったら、俺の胃袋に叩き込んで証拠を隠滅するまで。
ただ俺は、この幸せな生活を続けて生きたいだけなのだから。
ああ、やっと落ち着いた。
「ただいま、キョウコ」
■
「この手紙は見つかりましたか? いや、手紙とさえ思えないでしょうか。だって日記帳の切れ端ですものね。
いえ、別に何が書きたいと、そういうわけではないのです。これはただの惚気話に過ぎません。
私はユウイチくんという彼と付き合ってました、ですが、突発性の病気に私がかかってしまい、治療法も無いまま命が削られていきました。
それでもなお、ユウイチくんは私に付き合ってくれました。文句一つ言わず、学校さえ辞めて、私に尽くしてくれました。
私はそれが嬉しかったのです。彼の独占的なまでの愛が心地よかったのです。
さて、最近彼は窓の外を見ながら色々と考え込んでいるようです。長く深く付き合ってきた私には分かりますが、彼の精神は病んでいます。本人に自覚は無いようですが、時折見える、ほんの少しの違和感から、程度こそどれほどか分かりませんが、少なからず病んでいることは確かです。
私が死ねば、彼は奇行に走るでしょう。奇行ゆえに、警察の目にはつきにくく逃れることもできなくはないと思います。
私が言いたいのは、彼の動機です。
彼は恐らく、私を独占したかったのでしょう。世界という名の鎖から解き放たれてしまった私を、どうにか自分の鎖で繋ぎ止めたかったのでしょう。
その気持ちは非常に心地よいのです。私はそこまで愛されているのだと、たとえそれが狂気だとしても、それさえ私は嬉しかったのです。
ですがたった一つ、もしこの手紙が見つかるとすればユウイチくん以外にでしょう。彼にはどうやったって見つけられないところに隠してあります。コレを見つけたあなたは幸運ですね。
話がそれましたね。たった一つ彼が犯した失敗があるのです。
それは、実は縛られているのは自分だということに気がついていない、ということです。
ここまで私は彼の行動を予測できました。独占したいという願望は、言葉の端々からうかがえました。ですから、それを逆手に取ったのです。
私にも友達がいましたが、全て絶交しました。いえ、そんな殺伐としたものではなく、単に連絡を取り合わなくなったくらいなのですが。親とも別れました。これで、彼は私を独占したように感じるでしょう。
けれど、実際に彼を独占したのは私なのです。彼はきっと最後までそのことに気がつかないでしょう。
色々と意味の判然としない文章を書き連ねてきましたが、末尾くらいはちゃんとした結論を書いておこうと思います。この手紙を見つけた誰かが、ユウイチくんに知らせてくれたら、きっと彼は驚いてくれるでしょう。彼の驚く顔が見れないのが残念です。
あなたを独占できて、キョウコは幸せでした。
さようなら」
――『見つからなかった手紙』――
[了]
月下美人 結城恵 @yuki_megumi
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