【男との会話2】
––––ユキ。僕が思い出したくなかった人。長い黒髪でサラサラとしていた。色白で切れ長のくっきりとした目に、血色の良い綺麗な唇、モデル顔負けのスタイルと身長、顔からは考えられないほどの大雑把な性格。7年前、大学生の頃僕とユキは恋仲だった。その仲の良さは『ユキたか夫婦』と揶揄されたほどだ。でも––––
ユキは大学を卒業することなく交通事故により死亡した。
「あなたは彼女が死んだ悲しみから逃げるため、思い出さないようにしていましたね。」
男の言葉に「そんなことはないです」と呟いたものの、完全には否定できなかった。目のやり場に困っていると、
「ほぉう、図星ですか。」
男はニヤニヤと笑ってから、止めていた足をまた出し僕にさらに近づいた。男の息が僕の顔に届くくらいまで近づくと、男は内緒話でもするかのように
「ユキにあわせてあげますよ」
と囁いた。
その悪魔の言葉は、僕をどこか違う世界にでも誘うかのように響いた。
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