【ユキ1】
「––––か!たか!」
懐かしい声に目を覚ますと、まるで長い眠りについていたかのような感覚に見舞われた。目を開ける。「––––ユキ。」僕はそう呟いた。なぜか僕は見慣れたベッド––––大学生の頃に住んでいたところと似ている––––に寝かされていた。ユキは心配そうに僕を覗き込んでいる。
「熱、あるんだって?大丈夫?」
そう言ってユキはおでこで熱を測ろうと近づく。顔が近くて少し照れくさくなった。と、その時だった。フラッシュのようなものを感じた。この光景、見たことある。
––––そうだ。あの日、ユキが交通事故で死んだ日の記憶だ。確か、熱を出した僕を看病しにきた帰り道、一人で歩いていた時に死んだのだ。
僕は飛び起きた。
「ど、どうしたの?」
ユキは不思議そうにのぞき込む。
「今、何時?」
ユキは僕の言葉に時計を見る。
「4:30だよ。もうこんな時間か。そうだ、さっきね部屋から外見たらね、めっちゃ夕陽綺麗だったの!今もきれいかな––––」
4:30。ユキが事故に遭ったのは、おそらく––––5:00
「––––もうちょっとしたら帰ろうと思うんだけど。」
ユキはそう言って立ち上がった。僕は思わず彼女の服を掴み
「ちょっと待って!まだ帰らないで––––送るから。」
と口走った。ユキは『本当?』と嬉しそうに笑ったが、「もう、熱あるから看病しにきてるんでしょ。私もう帰るから、寝ときなよ。」と呆れて言った。このままだとまた同じことが繰り返される。僕は
「もう楽になったから。」
と言って立ち上がる。その瞬間に立ちくらみがしたが、気づかなかったことにする。台所に行き、ペットボトルに水を汲む。コポコポという音がだんだん高くなり、水が溢れた。水を止め蓋を閉める。が、喉が渇いていることに気づき蓋を開けてゴクゴクゴクと勢いよく飲んだ。冷たい水が喉を潤す。寝巻きから適当な服に着替えて携帯と鍵を持った。
「いこっか。」
僕はそう言って振り返った。ユキは「うん。」と頷きカバンを持った。時計は4:58:00を指していた。ドクドクと脈打つ心臓を感じながら
「この身に変えてでも守ってやる。」
僕はそう呟いた。
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