ラウンド3、ファイッ!!
スラマッパギ! わたし
ハァ……ハァ……よし、気付かれてない。
祐之介のやつは電車に乗るため駅のホームに立ってるわ。できれば自分の手を汚すことは避けたかったんだけど、しかたないわよね!? こいつのスルー力が高すぎるのが悪いんだもの!! わたしは悪くないわ!!
異世界転生には通り魔に殺されて転生ってパターンも多いのよ! 転〇ラとかそうだったでしょ!?
くっ、しかし、なんかこう、落ち着かないっ!! 普段は人間に見られる心配が無いからこの露出過剰なコスチュームにも耐えられてるけど、あいつを突き落とすには実体化してないと駄目だし、そうなると、みんなにこの恥ずかしい恰好を見られちゃうし!
ああっ、周囲の視線がガチで痛い! 違いますから! わたし痴女じゃなくて、これからちょっと人を突き飛ばして異世界転生させるだけですから! あんまり注目しないで! こらそこ撮影すんな! SNSにあげてんの見つけたら絶対天罰下すからね!?
あ、電車来た! タイミングを計って……今!
「む? 女性専用車両か」
あれ? なんで移動し、て──ぎにゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?
「痴女が線路に飛び込んだ!」
「痴女の自殺だ!」
「いや待て、なんかおかしいぞ!?」
死んでない! 死んでたまるか!! 神様なめんなああああああああああああああああああああああああああああっ!!
この日、わたしはテ〇ーマンになった。
って、わたしを侮るなよ田中 祐之介! 犯行に失敗して電車と力比べした挙句その様子を鉄オタに取られて痴女テリー〇ンとかいう嫌なアダ名を付けられSNSでバズッたとしても、それで心が折れるようなヤワな女神じゃないのよ! 今日はまだ何も異世界に送ってないからまだチャンスはあるわ!
というわけで、そのチャンスを窺うべく学校でのあいつを観察しているわけだけれど……意外と真面目に授業を聞いてるのね。こいつのことだから、てっきり右から左に聞き流してスルーしているのかと……。
「……Zzz」
あっ、違うわ! こいつ目を開けたまま寝てる! そんな漫画の主人公みたいな特技、実際に使えるやつ初めて見た! 撮っとこ。
てか、そんなんだから昨日の飛び出し君十三号さんの時みたいな咄嗟の機転は利くのに、成績の方は平均値なんでしょあんた!? ちゃんと先生の話を聞きなさいよ!
よく見ると、他にも不真面目な学生がいっぱいいるわね。あそこの子なんかスマホでゲームしてるじゃない。見つかったら没収され……ゲーム? そうよ、これだわ!
思いついたら即実行がわたしの信条! 早速家電量販店にゴー!!
夕方近くになって祐之介が帰宅した。えらいえらい、寄り道しなかったのね。しかも早速二階の自室に戻ってくれたじゃない。さあ、刮目してご覧なさい! その机の上にある「携帯ゲーム機」を!!
そう! 転生・転移と言えばゲームからってのもお約束よね! 生憎この世界の技術レベルじゃまだVRMMOは実現してなかったけど、それ以外にも今や定番になったジャンルがあるわ。乙女ゲーよ!!
本当ならある程度そのゲームをやり込んだ人間に使う手なんだけど、あんたの場合は別! 起動してタイトル画面を見たその瞬間に転移させてやるわ! さあ、明らかに自分のものじゃないゲーム機が机の上に置いてあるのよ! 気になるでしょ!? なんか薄々この後の展開がわかってきたけど、手に取ってみて!! お願いっ!!
「Zzz……」
ま・た・シ・エ・ス・タ・か・よっ!!
なんでそこで寝るのよ!? というかもうすぐ晩ご飯でしょ!? お母さんご飯作ってたじゃない!! カレーの良い香りが漂ってるのに、どうしてこの状況で睡眠を選ぶのよあんたは!? あたしのお小遣いで買ったゲーム機とゲームソフト返せ!!
……あ、持って帰ればいいのか。どうせこいつ全く興味示さないんだろうし……。
はぁ、今日も失敗しちゃったなあ。いったいどうやったらこのスルーモンスターを異世界送りにできるんだろ?
って!? 今、寝てる!!
そうよ! 寝てるなら初日に考えたことを実行したらいいじゃない!? というわけで早速夢にダーイブ!!
──ようこそ、田中 祐之介さん。あなたは異世界を救う勇者として選ばれました。
よしっ、上手く夢に潜り込めた。ここなら流石にわたしを無視できないでしょ。さあ注目しなさい。ア〇アがモデルだけあって美少女でしょ? 見惚れて、そして頷くのよ! 世界を救う契約にサインしますと言いなさい! わたしと契約して異世界で勇者になってよ!!
「……Zzz」
寝るなあっ!!
あ、あ、あんた、こんな可愛い子を前にして躊躇なく睡眠を優先したわね!? ちょっとプライド傷付いたわ! ていうか夢の中でまで寝ようとするんじゃないわよ! どんだけ寝ることに貪欲なの!? 競技者なの!?
『娘よ……イセカよ……』
はっ!? 久々の
『このままだと話が進まんので、今から強制的にお前達を異世界に転移させる……』
なにそれ!? そんなことができるんなら最初から自分でやってよ!!
あれ? わたしの気のせいかしら? パパ、今「お前達」とかぬかさなかった? え? 嘘でしょ? ボケよね? そうよね!?
『夕飯までには帰って来なさい。今夜はハンバーグだ』
そんな短時間で何をしろってのよ!? あ、転移先とこっちで時間の流れが違う系? 帰って来たら一瞬しか経過してなかったパターンなの今回?
それ、向こうでは年単位の冒険にならない!?
『グッドラック』
待って、待ってパパ!! どうしてわたしもなの!? まさかこの〇ば!? このす〇みたいな展開にしたいだけ!?
『いや、その子ってアニメもゲームも漫画もラノベも興味無いみたいでファンタジー世界の知識なんて皆無だろうから、助けてあげてほしいなーって(建前)』
最後になんか余計なものがついてるうううううううううううううううううううううううううううううううううううっ!!
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