第15話 彼の詩「ニュース」

スイッチをつけると そこには


医者が患者を見殺しにした

少年少女は薬漬け

犬が主人を救った美談があって

就職希望者が多い状態を氷河期と呼んだ

色んな理由で人が死んで 

事故が起きたり

賄賂が渡されたり

あとは 天気予報で曇り 晴れ


ニュースは同じようなことを 毎日繰り返す

けれども誰も 不思議に思わない

みんな同じ毎日だから

繰り返されても構わない


画面からは情報 流れ

時間ばかりが浪費され

心がどんどん死んでいく


さぁ、今日はどこで誰が何をした?


ちょっとや そっとじゃ驚かない

だって 心は死んでいるもの


だって僕は死んでいるもの



◯月◯日の午後5:00頃

××町の田島さん宅で

長男の賢一君が遺体で発見されました

警察の調べでは

賢一君は自宅にあった刃物で

自殺したとみられており


警察は今後

両親に事情を聞くと共に———



これはニュース


たぶん

ヘリのプロペラの乾いた音が

団地の上に

響いたりしてるんだろうな

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