第120話  風呂

 晃は風呂に入っていた。今日は珍しく本館の方の大浴場を一人で入っていた。ローランとダグラスと一緒に入っていたが彼らは先に出て行った為今は一人だ。


 ダグラスはちょっと野暮用がな!と嬉しそうに入念に体を洗っていた。晃は一人になっていたが体を洗っていると誰かがタオルを取り、背中を洗い出した。気持ちいいやありがとうと言っていると、どういたしましてと、どう考えてても女性の声がする。晃はあれと思うが、声からルーシーのようだった。つい振り向くと曇っているので顔はよくわからないが、恥ずかしいとは思いつつも晃は背中を洗ってもらっていた。

 前もというのでそこは丁重にお断りしたが、じゃあ私も洗って欲しいなと迫る積極的なルーシーである。晃が照れながらもはいと上擦った声で返事をし、タオルを受け取りその華奢な背中を洗っていく。すると急にルーシィが振り向き前も洗ってくださいなと言われ、その可憐な胸を露わにしていた。晃がえええ?となっていた所にターニャ、エニー、ソレイユ、レヴィといった晃の周りの女性陣が入ってきてルーシーだけずるい!私も晃を洗うんだと言い始めた。そうして皆が一斉に晃を洗い出した。晃はだめ!そこはだめなの!と情けない声を上げるが女性達に蹂躙されていった。そしてもうお婿さんに行けないなどとぼやいていた。皆が晃様かわいいなどといって晃がもじもじしていたが、ふと目覚めた。晃は湯船の中でうつらうつらとしていた。そう皆に洗らわれていたのは夢だったのである。



 晃は夢か!と残念半分安心半分であった。そして少しのぼせたかなあと思いつつも風呂場を出ようと、脱衣場への扉を開けた。その瞬間タオル一枚を抱えたルーシーが、本者がそこにいた。ルーシはキャーと可愛い叫びをあげてその場に蹲り晃は目を手で隠し、ごめんなさいと言うがルーシーに見事に大事な所を見られてしまっていた。ルーシィはしゃがみつつちらちらとやはり見てしまっていて、立派だと呟いていた。晃が慌てて風呂場を出て脱衣場に行くが、慌てていたので濡れた体の為に滑ってこけて、更に頭を打ち付けて気絶したりする。



 そして次に目覚めた時は自室のベッドで寝ていたのである

 。


 頭打ったせいか記憶の混濁があり、確か風呂に入っていたなぁぐらいにしか覚えていなかった。ただ誰かが手を握っているようで柔らかい感触が心地良かった。ふと見るとルーシィがそこにいた。


 なぜルーシーがここにいるんだろうと思わなくはないが、ルーシィが手を握ってくれていて頭に手ぬぐいが載っており時折泥酔で冷やして入れ替えてくれていたようである。


「あっ、晃様気がつかれましたか!」



 よくわからなかったので



「ルーシー、僕はいったいなんでここで寝ているんだろうか?確かお風呂に入っていて湯船に浸かっていたような気がするんだけども、一体どうしたんだろう」


 そういうのでルーシーは安心してほっと一息ついていた。


 晃はかわいいなぁと思いつつ不思議そうに見ていた。ルーシィが念の為に確認した。


「あの、晃様?お風呂を出る時のことを覚えてはいらっしゃらないのですか?」


 と聞かれるが晃は


「うん、ごめんね。湯船に浸かっていたところまでしか覚えていないんだ。ひょっとしてお風呂でこけて頭でも打ったんだろうか?」


「は、はい晃様は脱衣場でこけて頭を打ったようですよ。まったくもうおっちょこちょいさんですね。ふふふ」


 と言われ晃は恐る恐る確認する


「あ、あの僕を誰がここに連れてきてくれたのかな?」


「はい、私とイザベラ様でお連れしました」


「脱衣場で倒れた僕って裸だったのかな?誰が服を着せてくれたんだろうか?」


「はい、私が寝巻きを着させていただきました」


 と言うので晃のは真っ赤である。そう大事な所を見られているのだ。晃が恥ずかしそうにしているのでルーシィも恥ずかしくなってくねくねしていたのであった。

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