第118話 合流

 ほどなくして晃は皆の元に辿り着いた。


 皆にもみくちゃにされながら感謝されまくってしまった。生き返った6名は皆の中にいて本当にもみくちゃにされていた。晃ちの方はと言うと特にエニーから体をベタベタ触られながら怪我はないか?痛い所はないか?と半ば泣きながら心配してくれていた。大げさだなと思う反面狼狽えている様子のエニーの事が可愛いなとついつい思ってしまった。かなり毒舌を吐くタイプなのだが、見た目はだけはものすごく好みなのだ。とても可愛らしく綺麗でもある。


 エニーは晃を攻める方向性を間違っていたのである。毒舌を吐いて迫っていくのではなく、女らしく、しおらしくしていればおのずと晃の方からの近付いてきて口説かれる筈であるが、その性格に晃が一歩踏み込めないような状態を作ってしまったのである。今のように甲斐甲斐しく顔を拭いてくれたり、食べ物を持ってきてくれたりとしてくれているそんな様はアキラの心を捉えるのに十分であった。あまりに甲斐甲斐しく世話をしてくるのでついつい抱きしめてしまって


「心配かけてごめんなさい。この通り僕は無事だから。ありがとね!」


 とにっこりとスマイルスマイルで頬にキスをしていた。エニーがくねくねしながらキュンとなってしまったのである。自分のものにしたいという欲が本気で惚れてしまったのだ。


 それはともかく皆は出発する直前であったが、出発がしばらく先延ばしになりそうであった。とは言ってもせいぜい1時間ぐらいである。この6名を少し休ませてやりたいと晃は思っていたからだ。


 そしてエニーは晃が自分に見せてくれた反応から、ようやく晃の本質がわかってきた。彼はグイグイ押されるのに弱い。その弱いというのは一歩引いてしまうという意味でだ。ただ、甲斐甲斐いしく世話をし、女らしくしていれば彼の方から寄ってくるという事が分かってきたのだ。そう向こうから抱きしめてくれる事など無かった。今まで エニーの方から抱きつき迫っていたのだが、ことごとく躱されていた。今のように向こうから抱きしめてくれるなどという事はなかったのである。


 それはともかく1時間ほど小休憩をし出発である。出発時間が遅くなった事もあり、今日は20階層を目指すことになった。20階層より上はあっという間に着くのだ。半日ぐらいあれば20階層からは地上に出てられるのだ。


 例えば20階層から21階層の階段は、階層が円形状にあるとすれば、反対側に階段がある。それに対して20階層から19階階層の階段は円の中心部から外周部に各々の階段があるようなイメージである。またその広さも極端に小さくなってくるので20階層まではどうということがないのだ。


 20階層より下の階層は上級者層と呼ばれているのはひとえにフロアごとの移動の困難さと、魔物のレベルが一気に上がってくるからでもある。なので20階層までの移動時間がそれなりにかかるため無理をせずに、今日1日で20階層に着くことを目指すことにしたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る