第31話  奴隷2日目

 大輔は瀕死だった。傷が多く血を流し過ぎたからだ。


 剣闘士の一座は数多くあり、大輔を拾った一座もそんな中の一つだった。

 

 闘技場の闘技の主催者は敗者には厳しいが勝者には報いる。敗者の手当ては所属している座の主の裁量で治療のレベルが決まる。または、当人の財力。勝者には興行主が治療の手配をする。大輔は興行主の手配の治療師に治療された。しかし血を流し過ぎて死線を彷徨っていた。


 既に傷はない。全て治療魔法で治療されたのだ。しかし失われた血を再生する術がない。文明レベルが中世のそれなのだ。その為輸血の器具も知識もないので本人の造血に期待するしかない。


 幸い大輔は目覚めた。個室の病室だ。ただ、大輔同様に首輪を嵌められた顔に火傷のある少女が裸で抱きついていた。歳は10から12歳の子供だ。


「あの、状況が分からないのだけど」


「ああ、良かった。気がつかれたのですね。」


 大輔は訳がわからずキョトンとしていた。


 彼女は起き上がると水差しを口に入れて飲ませてくれた。


 裸なのであちこちが見えたが、体は傷だらけで、胸は膨らみかけのぺったんこだ。女の子がこの傷とは酷いと大輔は彼女をかわいそうと強く思う。


 丸一日寝ていたようで、今は夕方になる所だ。水を飲みながら


「ありがとう。済まないけど君はどなたで今の状況を説明してくれないかな?」


「はい。私はダイス様のお世話と夜伽の相手をするように命ぜられた奴隷のケイトです。このような身なりですがよしなに。」


 顔は左半分に大きな火傷がある。右半分は綺麗だ。顔は本来かなりの美人になる感じだが、火傷が酷い。それと夜伽と言うがあまりにも幼い見た目だ。恐らく10歳〜12歳位と思われる。


「わかった。宜しくな。何で俺の世話とか、夜伽をしろと言われているんだ?それと何で裸?」


「はい。座長様が闘技で勝利をなさったダイス様への約束の女として私を奴隷商で買われました。裸なのはダイス様の体温がかなり低く、人肌で暖めるように言われたからです。私はダイス様が亡くなられたら娼館に売られてしまいます。どうか生きてください。複数の男にまわされるのと一人の男に犯されるのでしたら後者の方がまだましです。ただ、経験が有りませんので、できましたら優しくして頂けると幸いです。一般奴隷が闘技奴隷に我儘を申し上げまして申し訳ありません」


 大輔は泣きながらケイトを抱き締めた。するとダイスが落ち、50を指す。ラッキー度数は中らしい。

 大輔もだんだん分かってきた。ダイスを振ると出た目によりラッキーイベントかアンラッキーな事が起きる。ただし、アンラッキーは一分逃げれば回避できる。

 

「ありがとう。どうやらケイトのお陰で俺は助かったらしい。大丈夫だよ。俺は自分の意思では決して君に酷い事をしないよ。ただ、首輪には逆らえないから命令されたその時は俺も死にたくないからごめんな。そうじゃなければ、君みたいな小さな子に手を上げたりしないし。俺はロリコンじゃないから夜伽なんてさせられないよ。添い寝以上の事はしなくて良いから」


 ケイトはふと床に落ちているダイスを拾い驚き


「まっまさかそんな。どうしてダイス様が、これをお持ちなのですか?」


「これを入手したら何故かこの世界に来てしまい、気がついたらこの様さ。信じないかもだけど、どうやら別の世界から俺は来てしまったんだ。そして戦う力等がまるでないのに、戦わさせられて今に至るんだ。理由は知らないんだよ。知ってたら教えて欲しい位なんだ」


 そう言い大輔はケイトに服を渡す。ケイトの体の状態を確認し終わったからだ。ケイトは子供だ。風呂に娘を入れる位の目でしか見ていない。直視に耐えられない傷が多かったので、まずは服を着て貰う事にした。服と言っても貫頭衣だ。裸よりまし程度な代物だだ。ふと布が落ちていたので、下腹部に下着代わりになるように結んでふんどしを作る。これで少しはましだろうと。


「あの、これは古い伝説にあるミラクルダイスではありませんか?伝記には勇者様はこれを持っていて、世界の危機に際して異世界より現れるそうです。手放しても危機が去るまでは何度でも手元に戻るそうです」


「確かに離しても離しても不思議とまた手元に戻り、また握っているんだんよな。ただ、俺はきっと勇者ではないよ。弱いし、闘技場では恐怖で漏らした位情けないんだよ」


 ケイトはただただ大輔を値踏みしていた。


 大輔も服を着る。腹が減っているのと、起きたら座長の所に行かねばならないととケイトは言い付けられていて、大輔にそれを伝た。座長の所に向かう為、身支度をして病室?を出るのであった。

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