第24話  屋敷

 本来晃は二人の相性を気にしなければいけなかったのだが、高校1年と若い晃は全く思いつきもしなかった。幸いな事にターニャとイザベラの相性は良いらしく、和やかに話をしていたかに見えた。表面上はなのだが。そう二人は既にライバルなのだが晃は気が付かない鈍感さんだ。


 ただ、イザベラにはターニャを受け入れざるを得ない事情がある。晃にしろイザベラにしろこの街を当然ながら知らないので、地図を出されてもそこには簡単には辿り着けないのだ。なのでターニャ任せになってしまうが、晃にはターニャはウキウキしながら歩いているように感じられた。誰でも良いわけではない。イザベラは少なく共信頼に足る人物だとは認識していた。だだ、晃に好意を向けるであろうライバルになると警戒していて、ターニャも何となくそちら方面で少し棘があると警戒していた。


 ターニャから見た晃は今は弟分である。大人の、それも恋愛対象になる男としては今は見ていない。今はである。


 ギルドの制服は黒いタイトスカートにワイシャツ、そしてスカーフだ。色に意味があるのかはわからないがターニャは赤いスカーフを巻いていた。


 また、ワイシャツにはちょっとした刺繍が入っている。タイトスカートの為それなりにボディラインが出ていて、スタイルが良いのが分かる。


 そして歩く事10分、目的の 屋敷が見えてきた。


 敷地もそれなりの大きさが有り、建物も3階建で外見だけで言うと中々に立派な屋敷である。そして同じ敷地内には2階建ての小さな家があった。


 ギルドマスターが言っていた離れらしい。屋敷の方は白にグレーの模様が入ったデザインで、オーソドックスな外観の屋敷だ。途中で見かけた屋敷と大してデサインが変わらなかった。屋敷を見たターニャが驚き


「あれ?確かボロ屋敷って言っていませんでした?どう見ても立派なお屋敷だと思うのですけども」


 ついでイザベラが


「うむ確かに見た目はそれなりの屋敷で間違いなさそうだけれども、庭は荒れ放題で手入れをしてやらねばならないね」


 晃も辺りを見回し、確かに雑草が生い茂っていて、かつては立派だった筈の庭であっただろうが、今は目も当てられない状態であった。今直ぐには無理だろうが、庭師に頼んで一度ちゃんと整理してもらおうと思っている。


 そして草を掻き分けながら玄関に辿り着く。

 大きな観音扉を開けると相応なロビーが見えた。ロビーは問題なさそうではあるが一歩廊下に足を踏み入れると床がミシミシと悲鳴を上げているのが分かる。明かりが点いていないので薄暗かったが、所々壁に穴が開いているのが分かる。また血が乾いたであろう跡が見え隠れする。そして血だまりがあったところに足を乗せたところ床が割れて穴が開いてしまった。そう、床板が腐っていたのだ。階段を上り廊下から先を見るとやはり壁に穴が開いたり、何かで切りつけられたような跡がある。居室のドアも一部のドアが蹴破られたような感じになっていた。そうここは昔何かしらの理由で戦闘か一方的な襲撃があり、ここに住んでいた者と襲撃した者が戦い、住んでいた者が負けたであろう、そういう痕跡が至る所にが見え隠れするような状態であった。


 3階は割とマシであったがそれでもすぐに住めるような状態ではなかった。とりあえずため息をつきながら外に出て離れの方に向かう。


 離れの方は外も中も綺麗になっており、一部の居室はすぐにでも寝泊まりできるような状態であった。ベッドがあり座ってみるとしっかりしている。ただし布団がないので寝る為には寝具を買わなければならない。ただ埃がすごく、今は住めそうにない。


 キッチンもターニャの言うには普通の家庭の普通のキッチンが付いていると言う。冒険者の1パーティーぐらいであれば普通に暮らせる大きさの家だった。そう晃が住んでいた家よりも少し大きいのだ。

 晃的にはこの家でも十分である。イザベラも小さい方の家に満足したようで


「ありがとうアテンダントさん。今の私達にはこの家で十分ね。ここで私と晃くんの愛が育まれていくのね!ふふふ」と呟いていた。晃はそれが聞こえてしまい真っ赤になっていた。それはともかく各個人用の部屋が四つもあり十分だった。


 晃は風呂とかトイレを見てくると言って二人を置いて中の探索を始めた。というか逃げた。それを見たターニャがイサベラに一つお願いをしていた。実はターニャは現在歩いて30分ぐらいかかるところから毎日通勤している。

 イザベラにここに住まわせて欲しいとお願いをしていた。一応理由としてはここからギルドまで5分と好立地な為、今までの不安な夜道が解消されるという。本当はそういったわけではないのだが、表向きの理由はそうであるイザベラも下界に来たばかりで右も左も分からない。


 そんな中買い物をしたりするのにも一苦労なのである。そんな不安な中、常識人が一緒にいてくれるというのは大変ありがたい話ではある。なので二つ返事で許可を出していた。しかし晃がその事実を知るのは後日の事である。

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