第4話  ルーシーの弁当

 翌朝机に突っ伏していた筈の晃は布団に寝ていた。


 イザベラがベッドで晃の頭を撫でていた。


 顔が近かった。寝ぼけているイザベラが頬ずりとかを始めていたからだ。


 咳払いをしてから引き離す。何故か寝相の悪いイザベラに女性としての魅力を感じないが、それでも起きている時は女性として意識してしまう。


 起きてからは着替え、食事をし買い物だ。布団は何とか晃の収納に入る予定だ。


 イザベラは神殿に行くと言っていた。女神達の集いに呼ばれていて、下界にいる女神達との顔合わせだという。


 晃はダンジョンに入るサポーターを探してから、ダンジョンに入る予定だ。


 朝一番で寝具店で布団を2式買い、他にカーテンを買った。前日晃が採寸していたのだ。


 次に神殿に向かう時ルーシーの働く店の前を通る。

 

 イザベラと晃が歩いていて、ルーシーの働く店の前に来るとルーシーが店の前で掃除をしていた。晃に気がついて駆け寄るかと思いきやルーシーは晃を見ると一旦店に入り、手提げ袋を持っていた。


 晃に近づき


「晃様おはようございます!今日もダンジョン頑張ってくださいね。こちらが女神様なのですね。初めまして女神イザベラ様。この店で働いているルーシーと言います。きのう晃様に危ないところを助けて頂いたんです。あの、その、私負けませんから!」


 そう言うと晃に弁当の入った手提げ袋を渡すと


「ルーシーさんありがとうございます!大事に頂きますね!」


 後ろ手にモゾモゾしていたルーシーが「よし!」と一言言うと晃の横に回り、いきなり晃の頬にキスをしようとしたが、そんなルーシーに振り向いた晃の唇とルーシーの唇が重なってしまった。


 真っ赤になる二人だが、ルーシーが


「ひぃあー、あっ、あの、私のファーストキスですからね!晃様大好きです。それと私の事はルーシーって呼んでくれなきゃ嫌です。駄目ですか?」


 晃は有頂天だった。好きになった子と意図せずにでは有るがキスをして、好きだと告白さえされたのだ。見た目も好みだが、仕草や喋り方も上品で女の子女の子している。愛らしいく健気なのだ。こんな子に好きだと言われれば誰もが落ちる。何せ店の看板娘であり、アイドルグループに入っていれば間違いなくセンターを張れる可愛らしさだ。


「うん。僕もルーシーの事は好きだよ。僕の事も晃って呼んでね」


 イザベラがぷるぷる震えているのをチラ見していたルーシーは


「はい。私そろそろ開店の準備があるので店の中に行きますね。ダンジョン頑張ってくださいね!ねえ、晃、私まだ子供だからイザベラ様には負けるかもだけど、手掛さんでもいいから、私の事もいずれ愛してくれると嬉しいの。あと、お弁当の費用を気にしてましたが、えっと、デートの時に奢ってくださいね!じゃあ」


 そう言って店に入っていった。会話の意味やルーシーの覚悟を殆ど理解できなかったが、自分に好意を持ってくれていて、今の所両思いだとだけしか分からなかった。今はそれで十分だ。また、デートという単語に顔がほっこりと崩れていた。


 良い子だ!と思い、弁当を失くさないように収納に入れた。


 イザベラが震えながら


「あ、あ、晃くん?何なのよあの女は?君は私だけじゃ満足しないの?」


「いい子でしょ!好きになっちゃったんです!てへ」


 まるで聞いていないのと、ルーシーが手掛けでも良いと覚悟を示していて、イザベラは嫉妬していたが、晃とは話が噛み合わなかった。イザベラは今は諦めた。今は何を言っても無駄だろうと。早目に既成事実を作るのが良いと思うも、実際は恥しくて実行に移せなく、色々誘導しようとするも中々理性が飛ばず、躱されてしまう。そして女神ともあろう者が嫉妬している事に気が付き、本気で晃の事を好きになってしまったと今更だが気が付いた。今までは独占したいという単なる独占欲だったが、本気で好きになっていた。人間と女神の恋、それは昔から不幸を招く事が多いという。果たして自分に晃を愛する資格があるのか苦悩するのであった。

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