第2話 昼食とルーシー

 魔石の換金を行ったが、先の使った分と渡された毒消しの費用を引いた残りが金貨1枚と銀貨数枚だった。ギルドを引き上げかけたが、ターニャの最後の言葉の意味がよく分かっていなかったが、周りから


「ポーションを口移しで飲ませてもらうなんて羨ましいな!よっ、色男」


 と言われてターニャが何をしてくれたのかが理解できたのだが、ターニャは魔石を持って中に行ってしまい、既にいなかった。


 カウンターに一礼をしギルドを後にしていった。


 晃は頭がぐるぐる回っていた。厳密にはキスじゃないがキスされたからだ。初めて女性の唇が触れたのだが、意識が無い時だ。残念無念だが、ターニャさんはめっさ美人で、年上だが、好みだった。仕草や表情のすべてが理想に近い。感触の残っていない唇が恨めしい。あの女性と!と浮かれていて、途中躓いて転けそうになったりしていた。


 次に屋敷へ様子を見に行くとイザベラはいなかった。昼飯時間が終わる頃で、どこかに食べに行っていると判断し、近くの食堂に食だべに行こうかとしていた。


 屋敷は女神が、ギルドから与えられるのだが、荒れ果てていて、庭は荒れ地に。使用人用?の離れは掃除すれば生活できそうなので、目下住めるように手入れと掃除中だ。


 晃はぶらぶらと食堂が見えて、今日はそこにしようかなと思い店に向かい出した。


 袋を抱えた人が歩きにくそうに歩いていた。


 突然街の入り口の方から沢山の人が叫びながら逃げるように必死に走って来た。


 すると袋を抱えた人が走ってきた人にぶつかられ、更に別の者に押され転倒した。袋の中の野菜が路上に転がる。


 晃は慌てて駆けつけた。群衆から体を張ってその人の身を守ってあげていた。

 その人は小柄な少女でメイド服のような服を着ていた。


「大丈夫ですか?」


「は、はいすいません。助かりました」


 晃は二人で落ちた野菜を拾う。


「怪我はない?何だったんだろうね?」


「ええ。お陰様でお野菜も大丈夫そうです。ありがとうございます。そこのお店に届けないとならなかったんです」


「じゃあ僕が持ってあげるよ。ちょうどその店でお昼を食べようと思っていたから。君はお昼は食べたの?」


「いえ、私も食材を届けたらお昼を食べようと思ってるのですが、一緒にどうですか?」


「うん。一人より二人の方が美味しいよね。じゃあ宜しくね」


「はい。私はそこの食材店兼仕出し屋に勤めているルーシーです。あの?冒険者様ですよね?」


「うん。冒険者の晃です。って店に入って食べませんか?お腹空いちゃって」


「そうですよね。育ち盛りですもんね。うふふ」


 歳は同じような感じで獣耳だ。可愛らしく癒やし系な感じだ。髪は少し赤みがかった銀髪だ。背丈は晃より僅かに低いだけだ。細身のおっとりした少女だ。


 食材を届けてそのままテーブルに座り何を食べるかになり、ルーシーに食べ物を選んで貰っていた。文字の読み書きができないと話すと驚いていた。


 普段のお昼はどうしているのかとなり、適当に買った物を持っていっていると。今日は偶々早くダンジョンを引き上げたのと、まだ二日目と話すと良かったら弁当を作りましょうかとなった。じゃあお金をと話すと要らないと。


 晃は流石にただではまずいと思い妥協点を探して、食材のお金だけは受け取ってと話すも、さっき命を張って助けてくれた恩人にせめてもの恩返ししたいという。


 じゃあ有り難く頂きますとなり、せめて普段の食材は買いに行きたいと話をしていた。有り難いけど、当たり前の事をしただけなのにそこまでしてもらう訳にいけないとしか考えられず、目の前の少女が自分の行動に感謝し、更に惚れての行動だとは微塵も気が付かない朴念仁だったりする。


 晃は一目惚れしてしまった。

 歳も近いし可愛いし、何より猫耳だ。触りたくてうずうずしていた。ターニャは姉ポジション、女神イザベラは人外の崇める対象だ。このルーシーと言う癒やし系の少女に何となく淡い思いを抱いた。やはり尻尾が気になって仕方がない。触ったら気持ち良いんだろうな!でもいきなり尻尾を触らせてと言ったら失礼なんだろうか?と女性の事ばかり考えてしまうのは思春期の男の子の性だろうか。


 最近この街に来て女神と契約したと話すと


「あっ!もしかして最近顕現された女神様の契約者って晃様ですか?若い方だって噂があるんですよ」


「あっそうなんですね。確かに女神イザベラ様の契約者は僕ですよ。っていっても契約者はまだ僕だけの弱小ファミリーなんですけどね。クランっていうのかな。」


「えっ?じゃあーダンチョーさんなんだ!凄いです!私と対して変わらない歳なのにクランマスターだなんて。でもそれじゃあお嫁さん候補には成れないのかな?」


「ごめんなさい。最後の方が聞き取れなくて」


「ううん。気にしないで。独り言だから」


 晃はちやほやされて有頂天だった。晃は元々ではないのだが、妙に惚れっぽくなっていて、周りが危なっかしく思い放って置けない弟分のオーラが出まくっていた。


 昼食を食べ終わり、ルーシーの働くお店に寄ってから屋敷に向かうのであった。

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