ダンジョンから始まる異世界物語〜異世界転移した勇者なのに誰も拾ってくれませんから、ダンジョン攻略しちゃいます〜へなちょこ勇者の成長記

鍵弓

第1章

第1話  焦り

 晃はつい数日前まで、どこにでもいる極普通の高校1年生だった。

 身長160cm痩せ型で陸上部に所属しており、短距離をしている典型的なスプリンターだ。童顔でよく中学生に間違われるが、基本的にハンサムボーイであり、弟ポジションでは有るが周りの女子からは世話を焼きたがられる等ちやほやされる。おっとりした性格で、基本的に人畜無害であり、時折頑固になる普通の高校生だ。残念ながら両親は交通事故により既に他界していた。


 晃は先日、突如異世界転移されこの世界に来てしまったのだが、よりによっていきなりダンジョン内に転移させられ、死にそうな目に遭っていた。


 幸い色々な出会いと助けがあり、辛うじて生き残る事が出来た。紆余曲折がありダンジョン探索者たる冒険者としてダンジョン攻略を目指す事になった。即ち、生活に必要な糧を得る為にダンジョンで稼ぐ事を選んでいる。現在は契約した女神と宿に泊まりながら過ごしている状態だ。今は駆け出しなのでお金もなく、家を買うお金どころか家を借りるお金すらない。その為やむなく宿屋暮らしだった。


 今の段階では自身の力や能力等は殆ど判明していない。また、当初こそ魔物を見て怖いと思ったが今はそんな事もなく、生き物を殺す事の忌避感すらなく、自分が生きる為の事を考え実行していた。異世界に飛ばされた時に得ている力で今現在分かっているのは、条件を満たすと魔石を消費しロトを引ける事位しかなかった。


 ダンジョン内の魔物を倒すと霧散し魔石を残す。それを集めて売ればお金になる。生活に必要な魔道具のエネルギー源として需要が高い。

 また、ダンジョンには女神と契約をしている者しか物理的に入る事ができなかったりする。


 晃は2度目となるダンジョン探索に挑もうとして、入り口でダンジョンを見上げていてテンションが高かった。

  

「やっぱでかいよなー。さあ女神様の為にも頑張って稼ぐぞー!」


 そんな感じのハイテンションで始めから飛ばしていた。下に向かう程魔物は強力になり、階層数に比例し、稼ぎも危険度も大きくなる。今使っている剣は前日の戦闘により刃こぼれが酷く、既にナマクラとなっており、最早鈍器と化していた。しかし、晃にとって唯一の武器であり、買い換えるお金もない為に仕方が無く無理やり魔物を殴り倒さざるを得なかった。


 そして現在は2階層に向かう階段に来ていたのだが、流石にこの武器ではこれより先はまずいなと感じ、どうするか悩んでいた。


 ふと思い出したのがレベルアップ記念ロトだ。そういえばそんなのが有ったなと思い出したのだ。


 スマホで確認すると11連ロトで、魔石がレベル✕11個必要と有った。周りに誰もいない事を確認し回すロトがレベル2の為、魔石を22個出して準備をした。


 スマホにてロトアプリを起動するとロトマシーンが出て来た。マシーンの画面を操作し、指示に従い投入口に魔石を投入し、レバーを引いた。


 物理的なルーレットが回り始め、マス目に玉が入ると


「おめでとうございます。SR確定が当たりました!」と画面に表示されていた。良いのか悪いのか分からなかったが、マシーンから当たった物が徐に排出されて来た。


 ゲットしたのは足用防具左右、戦闘用ブーツ左右、傷薬(中)、武器自動修復器(2日要する)、魔導書(白紙)、胸当て(軽金属)、魔導書(生活魔法:非戦闘用)、SRショートソード✕2

 以上だった。

 剣は鞘もついており、武器自動修復器は破損した武器を入れておけば勝手に直してくれる。新たに出た胸当て等の装備を身に着けるような余裕は今はない。その為剣のみ装備する。今までの剣は修復マシーンに突っ込んで置いた。


 盾は背中に背負えたので二本の剣での二刀流を試す。二刀流のスタイルは意外としっくり来たので素振りをして確かめていた。


 今までの剣より少し重く厚く、一回り大きいが扱いやすそうだった。今までの剣が軽過ぎたのだ。少し黒みが掛かった刀身はずっしりとしていて、頼りになりそうだった。


 2階層に降りて3階層に向かうが、新しい武器のお陰もあり魔物をサクサクと倒していた。この階層の魔物は獣型ばかりだった。サクサクと魔物を倒して行っていたが、魔石の回収中に問題が発生していた。一度ならず魔石を回収している最中に魔物に襲われたのだ。


 せめて1人でも良いから仲間がいればとひしひしと感じていた。相方が魔石を回収し、もう1人は警戒担当に別れて回収を行え、危険は減る筈なのだ。


 魔石を回収するのにもそれなりに時間が掛かる。周辺に何もいないか警戒しながら回収する必要があるからだ。


 戦っていると二刀流も中々良いなと感じつつ、下の方が稼ぎが良いと分かっているから下に下にとついつい進み、調子に乗っていたのも有り6階層にまで来てしまっていた。


 5階層で見たのと同じ種類の魔物しかいないが、数が少し多かった。今まで3匹で来ていたのが4、5匹に増えている感じだ。

 しかし、魔石の大きさは小さく価値が少ない。


「こんなんじゃ駄目だ。女神様に良い生活をして貰うには足りないな」


 と思い更に下に向う。大した強さじゃなかったな、こんなんだったらまだまだ下に行っても大丈夫だやと自分の力を過信していた。


 7階層は今までよりも少し広かった。迷わないように地形を覚えていく。スマホにあるゴーグルマップというアプリは自動でマッピングしてくれる。例え迷ったとしても、1階を目的地に設定すればルート案内をしてくれるから、最悪はスマホに頼れるからと、怪しげな所にも足を運ぶ。


 そこは袋小路になっていて、休憩するのに丁度よいとパンをかじる。


 腹ごしらえに最適だった。

 そして何か箱が落ちているのに気がついた。


「あれは何だろう?何か入っているのかな?ラッキー!」


 そんな感じで怪しげな箱をなんの疑いも持たずに開けたのだ。

 すると煙が出てもろに吸ってしまった。中には金貨2枚が入っていて


「あっ、お金だ!ラッキー!しかも金貨だ!」


 と手を入れ金貨を抜き出す。掴んだ瞬間に背中がゾワッとした。急ぎ収納に入れるが背中に矢が突き刺さる。基本的には背中に背負っている盾に刺さっていて怪我はしなかった。振り向くと弓と矢を持った犬面の奴らが30匹はいて、流石にまずいと感じた。体がだんだん重くなるが、袋小路にいるから倒さないと戻れない。


 晃はまずいまずいとつぶやきながら魔物と斬り結ぶ。矢を何本か体に貰ってしまい、痛みにあえぐ。


 ボロボロになりながらも倒しきり、フラフラだが魔石を回収し、探索を切り上げ戻る決断をする。


 矢は引き抜けなかった。手が届かないからだ。


 何度か戦いながらも生きて出口に辿り着いた。


 昨日とは違う門番がいて、晃の状態を見兼ねて矢を抜いてくれた。


 トラップに引っ掛かったと説明し、御礼を言い引き上げた。


 体に刺さった矢を抜き取ってくれたのと、回復薬を塗ったから傷は徐々にではあるが治っていく。


 フラフラと歩きながら治療をする所を教えて貰おうと先ずはギルドに寄る。


 晃はギルドに入り、入り口近くにいたターニャの顔を見て気が緩んだのか、入り口で力尽き座り込んてしまった。ターニャの顔を見て安心したのもあるが、意識が朦朧としていたのだ。


 ターニャは晃を担当する冒険者ギルドのアシスタントだ。若いエルフで人間換算で14歳位だが、20歳でやや幼さを残すがかなりの美人で、優しそうな可愛らしい美少女だ。ギルドの制服はタイトスカートにワイシャツだ。

 今の晃は弟ポジションだが、それ以上の感情を持つ乙女だったりする。ときに厳しく甘い。基本的にガードが硬く、晃に惹かれつつある。


 慌てたターニャが駆け寄り、息が荒いのと顔色から毒を貰ったと判断し、ギルドで売っている毒消しポーションを買って持ってきた。


「ちょっと、晃くん大変じゃないの!さあこれを飲んで」


 晃はぐったりしていて飲めなかった。意を決したターニャは自らの口にポーションを含め、口移しで無理やり飲ませた。しかし周りが騒然となっていた。


 そう、ターニャが口移しでポーションを飲ませていた為周りが驚いていたのだ。普通ギルドのアシスタントはそこまでしないからだ。この世界のキスは重い。今のはキスとは誰も思わないが、結婚すると決めた相手としかキスをしない者が多い世界なのだ。


 少しすると呼吸が落ち着き、何とか立てそうだったのでターニャは晃に肩を貸し、打ち合わせ席に連れて行った。晃を座らせ水を取ってきて飲ませていた。


「どうして毒を貰っちゃったの?」


「あ、ありがとうございます。毒消しを飲ませてくれたんですね。えっと、宝箱が有って開いたらトラップだったようなんです。でも中には金貨2枚が有ったんですが、毒消しを持ってなくて・・・」


 ターニャは今の晃だと5階層までしか行かないと思っていたから愕然とした。毒を貰う可能性があるのは7階層からだからだ。


「あのね、晃くん。2日目でなんで7階層になんて行ったの?まあ、止めても行くんでしょうけど、せめて回復ポーションと毒消し位は持って行ってね。それと10階層だけは私が良いって言うまで絶対に行かないって約束して!。10階からは中級層だから、今の君じゃすぐに死んでしまうのよ。私は晃くんに死なれたくないの。ねっ、約束して。あと、キスにはならないけど、君の唇が私の唇に最初に触れた人になるのよ。だからね、私を悲しませないで!」


 晃はターニャのお願いに約束をせざるをえなかったのであった。


 

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