離れていても力になれるって、案外本当。――12

「撃ってください、ティア!」

『ララー!』


 ティアの手のひらで渦巻いていた水が、砲撃の如く放たれた。ブルーストリームの発動だ。


 しかし、


「軌道がズレている!」


『目眩』の影響で、水の砲撃はスリーアイズフォックスに当たらず、タイル張りの壁を穿った。


 わたしとクレイド先輩は歯噛みする。


「ついに運にも見放されたな。このまま終わらせよう」


 ゲルド・アヴェンディがゲオルギウスを指さし、チェインライトニングの雷球が襲いかかってきた。


 ゲオルギウスは『受け流し』の体勢を取らない。流石に連続発動は期待できないようだ。


 勢いは完全に向こうにある! この流れはマズい!


かばって、ガーちゃん!」

『クワァッ!』


 アーディーくんの声が上がったのは、そのときだった。


 横合いから飛んできたガーガーが、ゲオルギウスと雷球のあいだに割り込んでくる。


『クワ……ッ!』


 雷球を食らい、ガーガーのHPが0になる。


 ガーガーが魔石に戻ってしまうが、ゲオルギウスは無事だ。


 そこでゲオルギウスのアークスラッシュが発動。大剣による二連撃がスリーアイズフォックスを刻んだ。


『キュオ……ッ!?』


 ゲルド・アヴェンディが舌打ちする。


「邪魔をしてくれる……ボルトバーサーカー!」

『WOOOOOOOOHHHH!!』


 ブラッドサッカーが発動。右腕に赤い陽炎をまとわせて、ボルトバーサーカーがティターンに突っ込んできた。


「ケロちゃん、お願い!」

『ゲロッ!』


 ジャンプしてきたのか、ケロが上空からボルトバーサーカーの進路上に割り込み、ティターンに代わってブラッドサッカーを受ける。


『ゲロ……ッ!』


 ケロのおかげでティターンは無傷。ケロのHPはボルトバーサーカーより遙かに低いので、ブラッドサッカーによるHP吸収も微々たるものに抑えられた。


「助かった、アーディーくん!」

「あたしだけじゃないですよ! 主役はレイシーです!」

「レイシーさんが、ですか?」


 わたしとクレイド先輩がポカンとしたとき、


「シャドースティッチです、クロさん!」

『ピィッ!』


 戦乙女いくさおとめのように勇壮ゆうそうな声が響く。


 同時、影の触手が走り、ボルトバーサーカーの脚に絡みついた。


『相手の直接攻撃、回避、逃走、交代を封じる』魔法スキル。クロの得意技『シャドースティッチ』だ。


 振り返ると、クロを従えたレイシーが、堂々と立っていた。


「レイシーがクロを!?」

「続いてはアブソーブウィスプです!」

『ピィ……ッ!』


 わたしが驚くなか、レイシーの指示が飛んだ。


 クロが体をたわめて力を溜める。HP吸収スキル『アブソーブウィスプ』の準備。


所詮しょせん猿まねに過ぎん。スリーアイズフォックス、やれ」

『キュオ!』


 スリーアイズフォックスの周囲でうねっていた大気が解放され、竜巻と化した。


 発動したゲイルボルテックスが、わたしたちの髪と衣服をはためかせ、わたしたちの従魔に襲いかかる。


 魔眼の首輪により、ゲイルボルテックスには『目眩』の追加効果が付与されている! これを食らえば、またゲルド・アヴェンディに流れを持っていかれてしまう!

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