見ている分には羨ましいだろうけど、ハーレムって結構大変。――6

「あ、ロッド、こっちこっち――っ!!」


 東の競技場に移動すると、俺を見つけたケイトが、ブンブンと手を振った。


 エッジとの試合後も、俺は勝利を積み重ね、難なく予選を突破した。


 最終試合のあとに時間が余ったため、エリーゼ先輩が戦っている東の競技場を訪れたわけだ。


「呆気なく勝ち抜いちゃったね、ロッド。ぶっちゃけ、憎たらしいくらいだよ」

「なんといってもロッドくんですからね!」


 ケイトが冗談めかして嫌味を口にし、レイシーが我がことのように、エッヘン! と胸を張る。


「観戦していたひとたちも、みんなポカンとしていたよ」

「そうそう! あたし、おかしくて笑っちゃった!」


 アクトの言うとおり、俺が勝利するたび、観客たちは言葉を失っていた。


 選抜された学生たちを、不遇モンスターを用いる俺が、赤子の手をひねるように下し続けたからだろう。


不遇モンスタークロとユーの活躍が、よっぽど信じられなかったんだろうな」

「だろうね。転校して間もないから、僕もいまだにビックリするよ」

「相手が油断するからやりやすいけど、いまいち物足りないんだよなあ」

「『戦闘狂』って言葉はロッドのためにあるんだろうね」


 ぼやく俺に、アクトが苦笑する。


「レイシーの旦那さまはスゴいよねー」

「ケケケケイトさんっ!?」


 俺とアクトのかたわらで、ケイトがニヤニヤ笑いを浮かべ、レイシーが真っ赤になっていた。ケイトが小声でなにか言っていたようだが、なんの話だろうか?


「そそそそれより! エリーゼ先輩のほうも最終試合ですよ!」


 話題を逸らすように、レイシーが、アタフタしながらステージを指差した。


 見ると、エリーゼ先輩が、対戦相手の女子生徒と対峙している。


「やっぱり勝ち上がっていたか。流石はエリーゼ先輩だな」


 凜々りりしい眼差しで、エリーゼ先輩は相手を見据えていた。


 先輩が勝ち抜けば、俺と戦う機会も訪れるだろう。そのときが待ち遠しい。


 エリーゼ先輩との試合を想像してワクワクしていると、レイシーとケイトが、スゥ、と息を吸い込んだ。


「「エリーゼ先輩、頑張ってぇ――――っ!!」」


 ふたりの声援に、エリーゼ先輩が微笑みを浮かべ、片手を挙げて応える。


 なぜかわからないが、俺たちの周りにいる女性客が、「きゃあ――――っ!!」と黄色い声を上げた。


「どっちが勝つと思う?」

「十中八九、エリーゼ先輩」


 アクトの問いかけに、俺は迷いなく答える。


随分ずいぶんエリーゼ先輩を信用しているんだね」

「信用云々うんぬんじゃない、客観的な判断だ」


 クスクスと笑み漏らすアクトに、俺は冷静に返した。


「相手が余程よほどの実力者じゃない限り、エリーゼ先輩には敵わないからな」

「たしかに、四天王クラスじゃなければ無理だろうね」

「いや、いまのエリーゼ先輩は、四天王でも止められねぇよ」


 なにしろ、


「エリーゼ先輩には、『あいつ』がいるからな」

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