結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――12

「そうですか……わたしのために……えへへ……」

「なんか嬉しそうだな、レイシー」

「ふぇっ? い、いえ、そんなことは……あ、あるんですけど!」


 俺が指摘すると、なぜかレイシーがアタフタしだした。


「わ、わたしのことはともかく、ロッドくんが優良モンスターを手に入れられてよかったです! やりましたね!」


 話題を変え、レイシーがガッツポーズをとる。


 あからさまにはぐらかされたが、別に掘り下げる話でもない。


「ああ、そうだな」と笑うと、レイシーはホッと胸を撫で下ろした。


「じゃあ、早速『従魔の印』を刻むか」


 言いながら、俺は手を伸ばし、




 ゴーストナイトの魔石をとった。




「ええええええええええええええええっ!?」


 小部屋に響く、レイシーの驚愕きょうがくの声。


 突然の大声に、俺は肩を跳ねさせる。


「ビックリさせるなよ。どうした? いきなり大声を上げて」

「ビックリしたのはわたしですよ!? どうしてゴーストナイトを選んだのですか!?」

「もともとゴーストナイトを選ぶって決めてたからだけど?」


 当たり前とばかりに答える俺の後ろで、アーマーファイターの魔石が台座のなかに消えていく。


 消えていく魔石を眺め、レイシーが、大好物をお預けされた子犬みたいな顔をした。


「どう考えてもアーマーファイターのほうが優秀なのに……」

「いやいや、ゴーストナイトを見くびっちゃいけねぇぞ?」


 肩を落とすレイシーに、俺は不敵な笑顔を見せる。


「ゴーストナイトには、ゴーストナイトにしかない『とっておき』があるんだよ」

「『とっておき』、ですか?」

「まあ、それは後々のちのちのお楽しみだ」


 コテンと首をかしげるレイシーに答え、俺は魔石に『従魔の印』を刻む。


「出てこい、ゴーストナイト」

『ムゥ!』


『従魔の印』を刻んだ魔石を放ると、俺より頭ひとつぶん背の低い、脚のないオバケが現れた。


 半透明のオバケは、かぶとよろいどう部分のみ)、ロングソード、バックラーを装備している。


 その顔付きはコミカルで、愛嬌あいきょうがあった。俺の選択に狼狽うろたえていたレイシーも、「可愛い……」とほっこり顔をしている。


「幽霊だから、お前の名前は『ユー』だ。よろしくな!」

『ムゥ!』


 喜びを表すように、ユーが両手を掲げた。


『リィ!』


 その折り、『魔法のスクロール』を読んでいたリーリーが顔を上げる。


「覚えましたか、リーリー」

『リィ!』


 尋ねるレイシーに、リーリーがニコッと笑った。


「これで条件は揃ったな。あとは練習あるのみだ」

「本当にありがとうございます、ロッドくん」


 ペコリとお辞儀じぎするレイシーに、俺はヒラヒラと手を振る。


「いいってことよ。レイシーが活躍してくれれば、俺は満足だ」

「はい、頑張ります!」


 むっふー! と鼻息を荒くするレイシーが微笑ましい。ついつい、俺の顔もゆるんでしまう。


「それで、具体的にどのようにリーリーを活かせばいいのでしょうか?」

「それはな?」


 俺がリーリーの真価と運用法を伝えると、レイシーは丸い目をさらに丸くした。

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