結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――13

 俺たちがエイシス遺跡を攻略した10日後。


「2体目の従魔を手に入れた者もいることだ。今日の模擬戦は2対2で行おう」


 レイシーの努力の成果と、リーリーの真価をお披露目ひろめする機会が訪れた。


「従魔を2体使役している者は挙手を」


 リサ先生の言葉に、演習場にいる、30名の生徒のうち、10名が手を挙げた。もちろんそのなかには、俺とレイシーも含まれている。


「残りのみんなは模擬戦の様子をよく見て、自分ならどう戦うか考えてくれ」


 では、


「まずはシルヴァンくんとアーディーくん」

「はいっ」

「はーい!」


 リサ先生に呼ばれ、レイシーが緊張をにじませながら、赤茶色ツインテールの女の子は潑剌はつらつと返事する。


 赤茶色ツインテールの女の子は、『贈魔の儀』でスカイホークを授かった、ケイト・アーディーだ。


 ふたりはステージに上がり、それぞれの従魔を呼び出した。


「おいで、リーリー、ピート!」

「行くよ、ガーちゃん、ケロちゃん!」


 レイシーは当然ながら、リーリーとピート。


 ケイトは、藍色の猛禽もうきん、スカイホークと、半透明のカエルモンスターだった。




 スカイホーク:10レベル


 ジェルフロッグ:8レベル




 スカイホークの大きさはわしと同程度、ジェルフロッグは中型犬ほどだ。


 俺は、ケイトのもう一体の相棒であるジェルフロッグを見て、顔をしかめた。


 水属性のモンスターか……火属性のピートと相性が悪いな。


 レベルはピートと互角。ステータスの平均も、そう変わらないだろう。


 だが、火属性は水属性に弱いため、レイシーの不利はいなめない。水属性モンスターに対し、火属性スキルのダメージは半減するが、その逆は倍加するのだから。


 おまけに、ジェルフロッグの固有アビリティ『ウォーターボディ』は、『火属性の被ダメージ量を10%軽減し、雷属性の被ダメージ量は10%増加する』という効果だ。


 スカイホークのほうもなかなかに育てられているし、鍵となるのは、レイシーの判断力と、リーリーの活躍だな。


「フェアリーアーチンなんかを授かったのに、シルヴァンのやつ、結構レベル上げてるぞ?」

「意外だよな。それに、2体目の従魔を使役しているし」


 俺が分析している横で、クラスメイトが感想を交わす。レイシーの頑張りに驚いているようだ。


「けど、アーディーには敵わないだろうな」

「違いない。実質2対1なんだから」


 しかし、模擬戦の結果に関しては、ケイトの勝利を疑っていないらしい。ほかの生徒も同様だ。


 そんななか、レイシーがチラリと俺に視線を向けた。若干じゃっかんの迷いがうかがえる目だ。


 勝てるかどうか、不安なのか、レイシー? そりゃあ、必ず勝てるなんて保証はないけどな? 俺だけは信じてるぜ? レイシーが勝つってな。


 俺はニヤッと口端くちはしをつり上げる。


 ――目にもの見せてやれ、レイシー!


 俺のメッセージが伝わったかはわからないが、レイシーの目から迷いが消えた。


 力強い眼差しで、コクリとうなずく。


「ふたりとも準備はいいかい?」

「はい!」

「あたしもオッケーです!」


 ふたりの返事を受けて、リサ先生が右手を挙げた。


「――はじめ!」

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