結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――11

 それからひたすらアクセルとシャドーヴェールを使い、リーリーが無傷なまま、俺たちはメタルゴーレムを倒した。


 ロードモンスターから得られる経験値は多く、リーリーは10レベルに、クロは経験値10倍の効果もあいまって、29レベルになった。


「レイシーの指示、よかったぞ」

「本当ですか!?」

「ああ。判断が的確で迅速じんそくだった。見ていて危なげなかったよ」

「えへへへへ……嬉しいです。ロッドくんにそう言っていただけると、自信が湧きます」


 レイシーが、むん! と力こぶを作る真似をする。


 可愛らしい仕草にホッコリしつつ、俺は大部屋の奥にある扉を指差した。


「あそこが目的地だ。行こうぜ」

「はい!」


 うなずくレイシーをともない、俺は扉まで歩いていく。


 ゴゴゴゴゴ……と自動的に開いた扉の先には、小部屋があった。


 小部屋の中央には宝箱があり、その向こうには台座が見える。


 俺とレイシーは小部屋に入り、宝箱を開けた。


 俺は宝箱に収められていたアイテムを手にとり、掲げる。


「これが、リーリーの真価を発揮するための必須アイテムだ」

「『魔法のスクロール』ですか!」


『魔法のスクロール』とは、特定のモンスターにスキルを修得させるアイテムだ。


 修得させられるスキルはスクロールごとに異なり、使用可能なモンスターも変わる。


「さ、リーリーに読ませてやれ」


 俺が『魔法のスクロール』を手渡そうとすると、レイシーは躊躇ためらいを見せた。


「けど、『魔法のスクロール』は、一度いちど使用すると効力を失うんですよ? わたしが使ってもいいのですか?」

「そうじゃないと、ここまで来た意味がないだろ?」


 肩をすくめ、「それに」と、俺は台座を示す。


「俺にも目的があったからな」


 台座の上には、ふたつの魔石が置かれていた。


「もしかして、エイシス遺跡を攻略すると、従魔を手に入れることができるのですか?」

「どちらかひとつだけなんだがな」


 俺は人差し指を立て、提案する。


「ふたりで攻略したから、報酬は山分け。レイシーは『魔法のスクロール』で、俺は従魔――それでどうだ?」


 レイシーがコクリと首肯しゅこうした。


「わかりました。そういうことなら、受けとらせていただきます」


 レイシーが晴れやかな顔で、魔法のスクロールを受けとる。


「リーリー、読めますか?」

『リィ』


 レイシーが『魔法のスクロール』をリーリーに読ませるなか、俺は台座に歩みよる。


 すると、魔石の上に文字が浮かんだ。




 アーマーファイター:20レベル


 ゴーストナイト:20レベル




「わあ! アーマーファイターですか!」


 浮かんだ文字を目にして、レイシーが感嘆かんたんする。


 鋼属性のモンスター『アーマーファイター』。


 STRとVITに優れ、MND、AGI、DEXも合格点。


 物理攻撃スキルを中心に、自己強化スキル、『麻痺』発生スキル、相手の弱体化デバフスキルを用いる物理アタッカー。


 ステータスのバランスがよく、修得するスキルの種類も豊富な、優良モンスターだ。


 もう片方の『ゴーストナイト』は、闇と鋼、ふたつの属性を持っている。


 STRとDEXは秀逸しゅういつだが、VIT、INT、MNDが低め。


 一応、物理アタッカーとして通用するステータスだが、修得するスキルとの、かみ合いが悪い。


 ゴーストナイトが修得する物理攻撃スキルは、クセが強く、扱いにくいんだ。


 魔法攻撃スキルは優秀なものを覚えるが、ステータスが物理アタッカー向きなので、本末転倒ほんまつてんとうとしか言えない。


「ロッドくんがエイシス遺跡攻略こうりゃくを目指したのも納得です! こんな優良モンスターが手に入るんですから!」

「オマケみたいなもんだよ。今回の目的は、あくまでもリーリーの真価を発揮する条件を満たすことだからな。レイシーに頼まれなかったら、エイシス遺跡を攻略するのはもっとあとになっていた」

「え、えと……それって、わたしのために攻略を前倒ししてくれた……ということでしょうか?」

「そうだけど?」


 頭の老化を防止するトレーニングみたいに、両手の指先をモジモジさせながら、レイシーが尋ねてくる。


 その様子を不思議に思いながら答えると、レイシーの頬に赤みが差した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る