弱小モンスターが大器晩成型なのは、育成ゲームではよくある話。――4

 セントリア従魔士学校の授業内容は、午前と午後で異なる。


 午前は、モンスターやスキルの知識、スキル構成などを学ぶ座学ざがく

 午後は、生徒同士が従魔を戦わせて技術を磨く、模擬戦が中心だ。


 入学直後ということで、本日の授業は午前で終了。


 授業の内容は、基礎以前の初歩的なものだったので、ファイモンをやり込んでいた俺は、退屈で仕方がなかった。


 そのため、授業は片手間かたてまで済ませ、ブラックスライムのクロ(名前)の、育成方針を組み立てていた。


 そして訪れた放課後。


「よし、クロ! 経験値稼ぎに行くぞ!」

『ピィッ!』


 廊下を歩く俺に、ピョンコピョンコとついてくるクロが、元気よく返事する。


 ブラックスライムは超強力なモンスターだが、そこに至るには充分な育成が不可欠だ。


 いま必要なのは、なによりもレベルアップ。


 長い道のりになるだろうが、まあ、気楽に行こう。


 取りあえず、戦闘に用いるスキルを選択して――


「へ、へっくし!!」


 メニュー画面を開いたところで、風で舞いあがったホコリに鼻を刺激され、俺はくしゃみをしてしまった。


「イカンイカン……って、ん?」


 鼻をこすっていた俺は眉を寄せる。


 目の前に、見たことのない画面が表示されていたからだ。




 マスタートレーナー:育成を極めた者の称号

  育成の達人

  特訓




「これ、マスタートレーナーの説明か?」


 どうやら、くしゃみで手元が狂って、『従魔』の隣にある『マスタートレーナー』の項目をタップしてしまったらしい。


「どうしてタップできるようになったんだ? 従魔クロを手に入れたからか?」


 振りかえって視線を向けると、『ピィ?』とクロが体をかたむけた。


 説明に『育成を極めた者』って書いてあるから、その可能性は高いだろう。


 改めて、マスタートレーナーの画面に向きなおる。


「『育成の達人』と『特訓』って項目はなんだ? 選択可能なのか?」


 好奇心に駆られ、俺は『育成の達人』をタップしてみた。


 お、開いた開い――




 育成の達人:従魔が得る経験値が10倍になる(常時有効)




「って、なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」


 表示されたとんでもない情報に、俺は絶叫してしまった。


 廊下にいた生徒たちが、何事かとこちらを見ている。


 しかし、俺には生徒たちの視線を気にする余裕なんてなかった。育成の達人の効果が、あまりにも並外なみはずれたものだったからだ。


 経験値10倍!? 常時有効!? つまり、俺の従魔は10倍の速度で成長できるってことか!?


 うわあ、成長チートだよ! 転生といえばチート能力だけど、マジでこんなこと起きるんだな!

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