シャイニングバスター高校を舞台に繰り広げられる、キス魔の少女とその標的となった少女の、とある放課後のひと騒動の物語。
百合コメディ、それも嵐のようなテンションで一気に持っていくお話です。というか、テンションです。テンションそのもの。いやタイトルと紹介文(あらすじ)の時点でうっすら予感はしていたのですけれど、想像以上の暴風雨が目の前を突き抜けていきました。おおおおなんですのこのとてつもない勢いは……。
いや本当にただ「楽しかった」とか「笑いながら読みました」とか、そういう主観的な感想でしか言い表せません。というのもこの作品、たぶん相当に説明が難しいタイプのお話で、きっと何を言っても野暮になってしまうところがある。基本的にコメディ作品って、真面目に説明しようとすればするほど、いわゆる「ボケ殺し」か「ハードル上げ」になってしまう面があるので……。
というわけで、ここから先はあくまで軽い気持ちで読み流して欲しいのですけれど、とにかくすごい熱量でした。いわゆる不条理コメディ、あるいはスラップスティックと呼ばれる種類のお話。一見、とにかくはちゃめちゃなお話のように見えるのですけれど、実はその荒唐無稽さはほとんど設定面に起因していて、お話の筋それ自体はそこまでめちゃくちゃでもない……とは言い切れないのですけれど(結局設定の面が強すぎて行動に波及してくる)、でも軸そのものはきっちり百合してるんです。
主人公を追いかけ回すキス魔の少女、フニャニャペさん。文化や習慣の違い、ある種のディスコミューケーションが産んだ悲しきモンスター。ハリケーン級の大災害として描かれる彼女は、でも実際にはなんの変哲もないひとりの純粋な恋する少女でしかないと、そう言い切ってしまうにはやっぱり被害が大きすぎるのですが、でも感動しました。
終盤のクライマックス、謎の感動と言ったら失礼なんですけど(謎ではないので)、でもあまりにも素直で真っ直ぐな愛の告白! そしてその後の展開も含めて、結構しっかり恋の物語している。それも見事なハッピーエンドで、全体的に明るく前向きな作品だということもあって、読後はもう大変な爽快感がありました。
と、ここまで書いてきてやっぱり「余計なこと言わなきゃよかった」と思うのは、こう書いてしまうとどうしても違うんです。そこを期待して読んで欲しいわけじゃない。ただ流れに身を任せるように読んで、ただ結果として残るのはとても前向きなものなはずですよと、そのくらいに受け取って欲しい感じ。この作品の主軸はやっぱりコメディで、勢いと不条理感、弾けるような強さが魅力の作品です。とても楽しい物語でした。最後の二行が大好きです。そんな終わりかたって!