第219話 神降臨?
「よし、そろそろ行くか」
それぞれ違う色のドラゴンを食べ比べ、満足したアルフレッドが立ち上がるとそう言った。
全身の筋肉痛は既に回復しているらしい。いつもより回復が早いのは、ドラゴン肉の効果なのかも知れなかった。
「「「「はい!」」」」
続いて立ち上がったのは『朱き光』のメンバー達だった。本来ならこのまま引き返してもらう予定だったが、境界の崩壊速度が予想以上に進んだらしく、外延部にも強大な力を持ったモンスターが現れ始めたのを感知したゾシムスの報告を受け、自力での帰還は困難だと判断したカトリが、駄目元でカズキ達への同行を願い出たのである。勿論それだけではなく、あわよくばアルフレッドの強さの秘密を暴こうと考えているのだが。流石は腹黒い事で定評があるカトリである。
「ここを真っすぐ進めばオリハルコンダンジョンです」
そう言って、アルフレッドの隣をキープしつつ道案内を買って出るカトリ。だが、数歩も歩かない内に、その歩みは止まってしまう。前方に、先程アルフレッドが蹂躙したドラゴンが子供に見えそうな大きさのドラゴンが、ぬっと姿を現したからだ。
「「「「・・・・・・」」」」
驚きと恐怖の余り、金縛りにあったように動かなくなる『朱き光』のメンバー達。彼女たちは今日、本当の絶望を知ったのである。
「おっ、ドラゴンらしいドラゴンだ」
「あら、本当ね。あれならドラゴンと呼んでも良いと思うわ」
「体長100メートルってところか? リントヴルムに喰われたっていう若いドラゴンがあんな感じだったのかもな」
一方のカズキ達は気楽なものだった。カズキとエルザは、言うまでもなく瞬殺する力を持っているからであり、アルフレッドには食材に見えているからだ。
「・・・・・・もしかして、アルフレッド殿はアレにも勝てるのですか?」
そんな3人の様子を見て、『朱き光』のメンバー達の顔に希望が浮かぶ。確かに先程の凄まじい戦いぶりを見れば、アルフレッドならば十分に戦えるのかと思われたが・・・・・・。
「いや、俺には無理だ。傷くらいなら付けられるかもしれんがな」
アルフレッドの答えは否だった。
「そんな・・・・・・」
「アルフレッド殿が駄目なら、他に誰が勝てるって言うんだ・・・・・・」
希望が絶たれた『朱き光』のメンバーの表情が、再び絶望に沈む。どうやらカズキとエルザのランクが、ハンターギルドの長い歴史の中でも前例のない『ゴッドランク』だという事は忘れているようであった。
「捕獲完了。さあ、先に進もうか。きっと、ダンジョンにはもっと色んな種類のドラゴンがいる筈だからな。今回の目標は、ドラゴンフルコンプだ!」
「「ミャー♪」」
カズキの宣言に応えるように、ナンシーとクレアが揃って鳴き声を上げる。
その内容が気になったカトリ達が空を見上げると、彼女たちを絶望させていた巨大なドラゴンは、跡形もなく消え失せていた。
「「「「・・・・・・え?」」」」
オリハルコンランクのアルフレッドですら白旗を上げたドラゴン。それが綺麗サッパリ消え失せている様子に呆けた声を上げた『朱き光』は、話の内容からそれを行ったと思われるカズキの事を信じられないと言った顔で見てから、答え合わせをするかのようにアルフレッドへと視線を向けた。
「信じられない気持ちは良くわかるが、アレをやったのは間違いなくカズキだ」
そしてアルフレッドに肯定されると、そこで漸くカズキとエルザが『ゴッドランク』だという事を思い出した。
そうなると気になるのは、例の荒唐無稽な話である。
「で、では、カズキ殿がたった半日でボーダーブレイクを収束させたというのも・・・・・・」
「事実だ」
「信じられません。私たちが最近攻略したミスリルダンジョンでも300階層、攻略するのに1年かかりました。勿論、10階層ごとにある、転移装置を使ってです。そしてオリハルコンダンジョンは最低でも500階層から。それを僅か半日でなんて、そんな事が出来るのは神様くらいなもので・・・・・・、ん?」
カトリは、そこでカズキとエルザのランクに『ゴッド』の文字が入っている意味を理解したようだ。
「ま、まさか! あの二人、いえ、あの御方たちは、この世界を救うために降臨された神!」
「違う」
訂正、間違った方に突っ走っていただけだったようだ。
「では何だと言うのですか!」
答えを見つけたと思ったら否定されて、半ばキレ気味になるカトリ。
ジョブが神聖魔法を使える、希少な
その前に色々と失礼な事を考えたり、あわよくば利用しようと考えていた事をすっかりと忘れている辺りが、カトリのカトリたる所以であろうか。
「何と言われてもなぁ。俺たちの世界で復活した邪神を倒し、異世界から侵攻してきた悪魔とその王を倒した、まあ、言ってみれば英雄というやつだ」
リントヴルムは倒さずに弄んだだけなので、そこはカウントに入れない正直者のアルフレッドであった。
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