第189話 第0コロニー
「「「「申し訳ありませんでしたっ!!!!」」」」
カズキ達を襲ったハンターたちの声が、ハンターギルドに響き渡る。ついでにゴツン! と鈍い音がしたのは、彼らが土下座した勢いで頭を床に打ち付けたせいだった。
何故こんな事になっているのかと言えば、元々はここのギルドマスターが出した依頼が原因である。
その依頼は当初、『カズキ達を見かけたら、最寄りの探索者ギルドに案内するように』というソフトな内容だったのだが、一人のギルドマスターが欲を出した事から、事態は混沌とし始めた。
この世界のハンターギルドには、一般のハンターには知られていない、ある役割がある。それは、凡そ1000年前に突如現れ、ハイエルフ、ハイドワーフという二つの種族がその存在を掛けて封印した邪悪なモンスターを、再封印、若しくは倒す事が出来る人間を探す事。
その人間がひと月前、第7コロニーの付近に現れるという神託があり、実際にその通り現れたのだが、ここで予想外な事が起こる。
その人間は異世界出身で、二つの世界を自由に行き来できる能力を持っており、第7コロニーに姿を現した後、この世界の害虫だった勇者『シノミヤ』をあっさりと消滅させ、そのまま自分の世界に戻ってしまったのだ。
幸いだったのは、『また来る』という言葉を残していた事。それを信じた第7コロニーのギルドマスターは、次、この世界に
その依頼に手を加えたのが、第1コロニーのギルドマスターだった。
形式を手配書に変更した上で報酬の額を二桁増やし、救世主を確実に第1コロニーへ連れて来させ、首尾よく世界が救われたなら、その功績はバックアップした自分の物になると考えたのだ。
万一ハンターがやりすぎても、でかでかと書かれた報酬額の下に、『危害を加えず、友好的に案内する事』と記し、自分は悪くないと言い張れるよう、小細工を施すという念の入れようである。
大半のハンターが討伐、又は捕縛対象と報酬しか見ないという現実を熟知した、極めて悪質な犯行と言えよう。
「何処の世界にもいるのね。人の脚を引っ張るしか能のない奴は」
邪神が復活し、世界が危機に陥っているのにも関わらず、自分達のを足を引っ張った勇者とその取り巻き達の事を思い出したのか、今回の騒動の原因を、手配書を見た時に概ね気付いていたソフィアが溜息を吐く。
「もうそれ位でいいんじゃない? それよりも今は、もっと他にする事があるでしょ?」
「それもそうね」
エルザの言葉にそもそもの目的を思い出したソフィアが頷き、その場を立ち去ると、残されたハンターたちは立ち上がり、荒々しい音を立ててハンターギルドから出ていった。
数日後、第1コロニーのギルドマスターが、所属するハンターたちに暴行されるという事件が起こったが、何故かハンターたちには一切のお咎めもなかったという。
第7コロニーのギルドマスターの執務室へと場所を移したカズキ達は、今回の騒動をギルドマスターのルノセルから謝罪される。
彼の依頼が今回の発端とはいえ、ルノセルに悪気がなかった事は、第1コロニー以外に出回っていた依頼書を見れば明白。なので、実害もなかったカズキ達は謝罪を受け入れた。
今は、カズキ達が空中都市にある『門』の奥、そこで発見したレリーフについて、ジュリアンが心当たりがないか尋ねたところである。
「なんと! 既に第0コロニーを見つけておられたとは・・・・・・」
「「「「第0コロニー?」」」」
カズキ達の疑問に気付いたのか、ルノセルはハンターギルドがカズキの捜索依頼を出した理由を語り始めた。
「ふむ。1000年前に
「そうだな」
ジュリアンの言葉に、カズキが同意する。『
「そうなると、あのレリーフの先に行く方法を考えないといけないわね。それについて、何か心当たりは?」
「『
ソフィアの問いかけに対し、ルノセルはカズキを見ながら答える。
その一方で、カズキ達は困惑したように顔を見合わせていた。余りにも出来すぎだと思ったからだ。
「女神が予測していた世界の危機は、悪魔だけではなかったのだな・・・・・・」
この日、『邪神』、『悪魔の王』に続く、第三の脅威である『リントヴルム』。その全てに対抗できる存在であるカズキを見出した女神レミアに畏敬の念を覚えたジュリアンは、女神への感謝の為、エルザ主導の新しい神殿の建設を加速させることを決めた。
カズキが古代魔法の才能を持っていたのはただの偶然で、悪魔や『リントヴルム』の存在がイレギュラーなのだが、神らぬ身のジュリアには想像も出来なかったのである。
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