第5話 絶望なんかしてやらない。

 近づく交差点。

 目の前の信号は青。

 私は全力で立ち漕ぎ!


 全部出せ! もうちょっと!!


 部活の時でもこんなマジになったことない。

 それくらい全力だった。



 信号。

 黄色。

 点滅。


 今、私が交差点に飛び込んで渡ってしまえば、自動車むこうはブレーキを踏むしかなくなる。


 そうすれば振り切れる。

 だったらそうするしかない。



 息を大きく吸い込む。

 肺に酸素を取り込む。

 息を止める。

 無呼吸運動。



 加速する!!!



 心臓が、

 爆発しそう。

 でも、まだ!

 まだ、いける!

 交差点は目の前!

 これで振り切れる!


 よし!



 私が胸の中でガッツポーズをする寸前――








 ――追いかけてきていた自動車が急加速した。

 交差点へ突っ込んでいくのが、見えた。



「こっの……!」



 どこまでしつこいの!?

 その瞬間の私の心中は、恐怖よりも怒りが勝っていた、と思う。絶望とか、そんなものは知らない。してやらない。

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