第4話 どれだけキツくても止まれない。


 呼吸が、荒くなる。


 こんなに自転車を全力で漕いだのはいつぶりだろう。思い出せないくらい。


 今時、小学生でもこんなにペダルを回さないんじゃないだろうか。自転車競技部だけだよ、こんなに回すのは!



 けれど――、全然引き離せない。



 なんなら向こうはゆっくり走ってるくらい。自転車と自動車なんだから当たり前。それはそう。


 

 どうしよう。



 なんとか。

 なんとかしないと――



 遮二無二しゃにむに自転車を漕ぐ。

 けれど、悲しいかなママチャリはロードバイクのようには進まない。



 すぐに息が上がってしまう。

 ママチャリだし。

 部活後だし。

 仕方ない。



 きっつい。

 体力的にも。

 それ以上に精神的に。



 膝が震える。

 それでも止まれない。

 止まるわけには、いかない。



 重いペダルを踏み続ける私に対して、――車はズルい。ちょっとアクセル踏むだけですぐに追いついてくるんだから。



 ああもう!



 私が胸の中でわめいた時だった。

 川沿いの道を抜けて、交差点に差し掛かる少し手前。信号が目に入った。


 その瞬間――



 ――私の脳裏に閃いたものがあった。

 ここしかない!

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