第1話 勘違いなんかじゃない。


 自転車のペダルを踏んでいて、わたしはあることに気付いた。


 私の後ろをぴったりくっついて走るノロノロ運転の自動車が、いる。


 ……変なの。なんか、私にペースに合わせてる?


 気にしすぎだよね。

 気になるのはさっき見た看板のせいかな?

 でもそんなものは毎日見てるし。


 色々考えていると私はちょっとだけ、なんだか気持ち悪くなった。

 ぞわり、としたのは寒くなった晩秋ばんしゅうの空気のせい。

 だと思いたい。


 私は、自転車のスピードを上げた。





 すると、さっきの自動車が、ゆっくりと加速した。

 さっきまでの私との距離感を維持するようなペースで、追いかけてきたのだ。


 ……えっ?


 勘違い。

 じゃない。

 自意識過剰、でもない。

 気のせいなんかじゃ、ない。



 ――この車、私に付いて来てる!?

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