第7話 -死神の剣、異国の強さに震える-
いつの間にか周りには、多くの人がいた。
何人か獣のような耳を生やした者や小柄というには極端に小柄な者、ひときわ目立つ大男。
異国というのは不思議な人々がこんなにもいるのだな。
「冬真さん、お疲れ様です!!」
万遍の笑みを浮かべながらレイラが空中に浮かび上がる青い何かを見ながらこちらへとくる。
「今の戦闘データを魔法演算で出力していますので、結果はしばらくお待ちくださいね。久しぶりの15人越え……それにダミー40人斬りなんて初めて見ましたよ! これは高ランク間違いなしですね」
「野盗と戦ってたところを見た時は、ただの旅人じゃないと思ってましたけど、あなた本当に何者ですか?!」
思いの他、高評価をもらうがいまいち実感のわかない侍。
「何やら良い結果であったように見えるが、40人斬りというのはそんなにすごいことなのかでござるか?」
「すごいってレベルじゃないですよ! 500年ほど昔の話になります。大昔に滅びたとされる伝説の魔人の片割れがよみがえり魔物と悪魔、魔族を従える大きな戦争があったのです。事態を重く見た各国は、以前の大戦のように力を合わせて凄腕の人たちを9人集めました。そのうちの一人が、傭兵で初めて能力検査を受けた時の記録が残っているのですが、38人のダミーで止まっています! その時のダミーの力は、大戦時ということもあり、なかなかの強さだったと思います。冬真さんは伝説を超えちゃったので今回の結果はかなり期待できますね……」
とりあえず、ダミー40人斬りというのは、とても誉れ高き事で何かしらの快挙を成し遂げたというのはよくわかった。
だが……
「魔人、魔物……?」
「よくわからぬが西洋の妖の類か?」
もしや、大きな板に貼られた紙に書いてあった落書きと何かしらの関係があるのだろうか。
「へ……?」
気が抜けたような顔をするレイラ。
察したようにとフィリアが前へ出てくる。
「何となくわかりました。やっぱり冬真さんって魔物も見たことない感じですか?」
「すまぬ、ここでは常識なのか?」
「えええ!! 本当にどうやってここまでこれたのですか?!」
「いや、先ほど申した通り目が覚めたら森の中でそれ以前の記憶がおぼろげなのだ」
「おぼろ……? ああ、そうでした。すみません、少し取り乱しました」
ピコン!っとレイラの前で青白く光るものが点滅した。
「よし!! 解析完了したみたいです!!」
「いや、ちょっと気になります!!」
「私にも見せてください」
っと、内容が気になるらしくレイラと同様の格好をした杖を持った娘と大きな本を抱える娘もレイラの周りに集まりフィリアや周りで観戦していた一部の人たちまで集まってきた。
そして、鳴り響く驚きの声。
快挙と言っていたから、相当良い結果だったのだろう。
異国の地にてどういった旅になるかと危惧していたが、うまくいった時というのはよくわからないことでも気持ちが良いものだ。
「なんで?! どうして?!」
驚きの声をあげるレイラ。だが、その驚き方は信じられないものを見るような落胆したものであった。
「冬真さんのランク……」
周りにいた人たちも驚きの声を上げる。
「いやいや、解析はしっかりと……故障? いや、これ術式構築は前と同様、歴戦の戦士を文字式として編み込んだ普通の水魔法のダミーで観測は、空間魔法を使用した一般的な……」
「レイラさん落ち着いて! いったんステータス見ましょう」
「そうですね、評価術式の源で何かが……」
指をひょいっと横へ向けると青白く浮かび上がる文字はスライドし新たな物が映し出される。
────釼崎 冬真────
・種族:アドラス
・性別:男
・年齢:28
・ランクE
・体力-
・力-
・知力5
・魔力0
・魔力量-
──────────────
「う~ん? - って計測されなかったってこと? ランクが最低なのってこの魔力0が原因かしら?」
「魔力と知力だけは、私が勝ってる! そもそも魔力の数値が0なんて初めてみた……」
「そんなところで優劣つけても、それ以外が何もないよ」
「まって、28歳って結構年上なのびっくりなんだけど?!」
「もっと若いと思ってた」
いろんな声が飛び交う中、冬真は一つの疑問をレイラへと投げかけた。
「して、そのらんくいー? という位はすごいのか?」
「ええっと……」
ばつが悪そうにもごもごするレイラだったがしばらく目を逸らしてから意を決して話し出す。
「傭兵になり立てのひよこちゃんから……そろそろ二本足で立てるようになった感じの位です」
歩けるようになったひよこ程度の実力だと?!
自慢したくはない……そんな不名誉な通り名だが、『釼崎の刃を見たら構わず逃げろ。決して戦おうとするな。戦おうものなら命がないものと思え』とまで京の都で言われ死神の剣とまで言われた某が……ひよこちゃん。
随分とかわいくなったな。
どうやら、異国は拙者以上の猛者が往来を闊歩するとんでもない地のようだ。
そんな連中が日本に……
黒船の来航というのは、それほどに恐ろしいものだったのだな。
幕府の対応も多少はうなずけるというものか……
「落胆しているところ申し訳ないのですが……いや、私は結構動揺したのですが」
「ん?」
「あ、いえ失礼しました! 後ほど傭兵証とドッグタグをお造り渡しますのでロビーでお食事でもしながら待っていてください。まだ、夕飯は食べてないですよね?」
「ああ、食べてはいないが────」
「それでしたら、うちのギルド食堂の料理は絶品ですので是非に!」
一騒動あったが能力検査は、一件落着しレイラ殿は、納得のいかない顔であったが、書類を持って広間へと行った。
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