文化祭って王道だと思います4

 数十分後俺たちは三人で文化祭をある程度周りきってしまった。

 特に面白かったのがお化け屋敷。

 俺はもう一度行っているからあまり怖くなかったけど二人の反応が面白かった。

 

 佐藤は入る前は「私こういうの得意なんだ〜」とか行ってたのに、いざ入ってみると急に飛びついてきたり先に走っていってしまったりと散々びびり倒した。

 そのくせ終わった後には「ま、まあ全然怖くなかったし」とか言うし。

 でもその時めちゃくちゃ震えてて可愛かった。

 

 それに対して加藤さんは入る前には「お化け屋って初めてなのよね」と言っていたのに、実際入って見ると、「これがお化け屋敷なのね」と言いながらずっと俺の腕に引っ付いて歩きながら終始落ち着いていた。

 

 俺の予想だと佐藤が怖がらないで加藤さんがずっと怖がっていると思っていた。

 だが結果は逆で佐藤に関してはめちゃくちゃ怖がってて面白かった。

 

 と、考えている今は何をしているのかというと、体育館で出し物を見ている。

 今は確か、部活ではなく自主的に練習していたらしいバンドのチームが演奏中だ。

 正直レベルは高い、すごく高い、でもジャンルが偏っている気がする。

 

 普通ならドラマの主題歌とかロックぽいやつを演奏するのかと思ったが、ほとんど俺の知っているいわゆるアニソンと呼ばれるもののカバーやゲームの挿入歌ばかり演そうしていた。

 それでも体育館にいた人は基本みんな乗っていた、まあ曲自体は知らなそうだったけど。

 どうやら佐藤は知っている曲があるらしくたまに「ねえねえこれ私知ってる!」などと話しかけてきた。

 まあ加藤さんは・・・無だ。表情は一切変えないでマジマジと演奏を見ていた。

 多分知っている曲がないのだろう。

 

 それでも聞こうとするところが加藤さんらしくていいなと思った。

 なんだかんだで数曲演奏してそのバンドグループの演奏は終わった。

 

 今の時刻は三時五十分。

 文化祭の終了は四時半、そして俺が告白されるであろう時間も多分四時半。

 俺はまだ決めれていない。

 大体言われて数週間で選べって無茶ぶりでしょ。

 だって俺彼女いない歴=年齢だよ?無理じゃん、絶対無理じゃん。

 なのにさこんなすぐに決めろっておかしいじゃん。

 

 もう逃げようかな。

 そんな考えが頭に浮かんだ。でもその考えは今までも何回も思い浮かんでることで、そして何度も否定してきた意見で、だからそんな選択肢なんかなくて。

 そんなこんなでまだ決められていないのだ。

 こういう時になってやっとわかる、「ハーレム主人公って苦労してるんだな」と。


「もう、あれしかないか」

「ん、何が?」

「ああ、ごめん何でもない」


 俺は考え、どう答えるかを決めたのだった。

 

 数分後告白の時間が刻一刻と近づいてくる。

 もう決めたはずの考えを変えてしまおうかと考えてしまう。

 そして、


『文化祭終了十分前です。ゴミはしっかりとゴミ箱に・・・』


 終わり十分前に流れる放送が始まってしまった。


「そろそろだね、じゃあ屋上いこっか」

「お、おう」


 そのまま俺たちはそのまま屋上に向かった。


 ついにこの瞬間がやってきた。

 俺は数週間前に告白すると告げられ今日までその告白にどう返すかを考えてきた。

 今日まで散々だった。教室では抱きつかれるし男子には目の敵にされるしでもう最悪と言ってもいいかもしれない。


 でも佐藤と加藤さんも今日まで色々と考えさせられたはずだ。

 告白なんてそんな簡単にできるものじゃないし簡単にしていいものじゃない。

 その事と向き合いながら今日どう告白しようとか上手くできるかとか色々考えてきたはずだ。


「改めていうわね。蓮くん私と付き合ってください」


「私も。蓮私と付き合って」


 二人とも告白はシンプルだった。

 考えた末の結果なのかまったく考えてこなかったのかはわからない。

 それでもその言葉にはしかっりと気持ちが籠っているのが感じ取れた。


 それでも俺にはこの回答しか今はない。


「ごめん」

 

 俺なんかがこんなことを言っていい相手じゃないことはわかっている


「「え?」」


「今はどっちかなんて決められない」

 

 でも俺には今すぐ決めるなんて最初から無理だったんだ。


「は?」

「へ?」


「だから、また今度でいいかな?」


 だから俺はこの手が一番最適だと思った。


「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 数秒間屋上に沈黙が訪れた。

 さっきまで告白されていた場所とは到底思えないほどに。

 そして俺は数秒後、二人の理不尽な暴力にさらされた結果保健室行きになり帰った時には七時を回っていたのだった。


「もうなんだかな〜って感じなんだよな」

 

 俺は数秒恋というものについて考えてみた。

 最初の頃は幼い頃に知り合っていたことを知らなかったものの俺は加藤さんに恋していた。

 なのに今日俺は加藤さんと言い張ることができなかった。

 これは佐藤への哀れみなのかそれとも本当は佐藤のことが好きだった事に気づき始めてるのかそれとも俺が最低ラブコメ主人公の典型的なパターンのやつなのか。


「恋ってものはそう簡単に実るものじゃないのかもな」

 

 そう呟いて俺は、寝た。

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散った恋はまた実るのだろうか? @yukutya

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